題17話 レオナルドの授業 その2


「すみません…………

 ちょっと解らんことがあったけん、桜さんに聞いてました」


 パミュがやっとの事でレオナルドに言い返した。


「そうね、じゃあ、先に進むよ」


「お願いしまーす」


「この胸から下にあるダーツは、胸のポイントから三百六十度、どこにも移動できるけんね。

 肩に持ってきてもいいし、腕の方に逃がしてもいいし、脇下に持ってきてもいいよ。

 わかった?」


 一つひとつのダーツ処理の仕方を実践しながら、生徒にわかりやすく説明する。


 ダーツ処理とはバストの乳房を頂点にしてダーツを胸の周りに動かしていくことだ。


 パミュがレオナルドに手を上げた。


「質問があります」


「なんね、西田?」


「ダーツ処理の方向はわかったとですが、女性、みんなバストの大きさが違うじゃないですか。

 例えば、琴音のように、蚊に刺されたような、ちっちゃーいのもあれば」


 クラスのみんなは笑う。


「あんたね、私のバストのこと、ほっといて!」


 琴音はパミュに言った後で手を上げた。


「先生、パミュのように、スイカのようなデカパイだったらどうなるんですか?」


 大きな声で叫んだ。


 クラスのみんながまた笑う。


「バストの大きさには、ダーツ処理の場所は関係ないけん。

 小さかろうが、大きかろうが同じやけん。

 違いは、ダーツの深さが違ってくるとよ。

 桜のような小さなバストはダーツが浅くて、西田のようなボリュームがあるバストは、ダーツの量が多くなるんよ。

 わかった?」


「わかりました!」


 クラスのみんなは返事を返した。


「あんたね、蚊に刺されたは言い過ぎやろ!」


 琴音はパミュに詰め寄る。


「あんたもあんたよ、スイカのごたる大きなオッパイやったら窒息するやん。

 うちのはメロンぐらいやろ」


 二人のやり取りを見ていた、隣に座っているめいが止めに入った。


「やめなよ。どっちもどっちじゃない」


「ふたりともキャラが強いから楽しいよね。クラスのみんなを楽しませるのうまいもん」


「みんなを笑わせようと思って、やってんやないよ。これ、私らの自やから」


 琴音は返した。


「だから、最高じゃん。笑わせようとしてる奴は、何かすぐわかるよね。

 ふたりは自然だから、みんな笑うんだよ」


「それ、褒められとるのか、けなされとるのか解らんけど、あんたの言うのは、解らんでもなかよ」


 パミュが答えた。


「あんた、何て言うの?」


「わたし? わたし、めい」


「そうか、うち、琴音。よろしく」


「わたし、パミュ」


「あー、腹減ってきた」


 琴音が呟く。


「そろそろ授業終わるやろ」


 パミュが返す。


「もう直ぐ昼休みやから、一緒にランチ食べん?」


 琴音がめいに聞く。


「いいの?」


 めいが驚いて聞き直す。


「いつもずっと二人やから、もう一人加わってくれた方が、新鮮に感じるし……」


 琴音が答える。


「じゃあ、一緒にランチお願いするね」


 これで琴音にとって二人目の友達が出来た。





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