題16話 レオナルドの授業

 パミュと琴音の授業の中で、一番楽しいクラスはパターンメーキングだ。


 パターンメーキングとは、服を作るのに必要な型紙を製作するプロセスを意味するが、各々の工程を少し説明しておく。


 先ずは、どのような服を作りたいかを表現する、デザイン画が必要だ。


 そのデザイン画を元に、白い布でマネキンにドレープしながら形にしていく作業を、ドレーピングという。


 ほとんどの場合、粗野な木綿のオフホワイトの生地が使われるが、木綿の布をトワルと言う。、トワルとはフランス語で布という意味だ。


 例えば、シャツであれば前身頃、後ろ身頃、スリーブ、カフス、襟と一つひとつをドレープして、ピンで留めていく作業をし、デザイン画に沿った立体の服の原型が出来上がると、各部分を紙に写し取る。


 写し取った紙をペーパーパターンと言う。

 

 ペーパーパターンを生地の上に乗せて、ピンで留める。


 各々のパターンをハサミで切った後、全部をミシンで一度縫い合わせる。


 一度モデルに着せて、各々の形や長さを調整する工程を、何度か繰り返すと完成度の高い服が出来る。


 これらの過程全てを、パターンメーキングと言う。


 パミュと琴音は、その初歩段階の授業を大畑先生から受けていた。


「みんな、今日はダーツ展開を勉強するけん、ちゃんと聞いときよ。

 先ずは、ダーツ展開がなんか知っとー人、手を上げて?」


 大畑先生が生徒たちに声をかけた。


「大畑先生、地元の言葉で喋らすけん、馴染みやすかよね」


 パミュは琴音に呟いた。


「ほんとやね」


「カールとはだいぶ違うかよね」


「二年の先輩たち、大畑先生のこと、レオナルドって呼んどったよ」


「レオナルド?」


「そう」


「ダヴィンチか? 

 この学校、カールがおって、レオナルドまでおったら、

 次のデザインの先生はミケランジェロかも?」


 パミュは呆れた顔をした。


「私も、そう思って聞いてみたけど、違うち。

 なんか元は、『レオナルド藤田』から来てるらしいよ」


「それ、誰? 聞いたこつのなかね」


「私もあまり知らんけど、千九百二十年代に、パリで活躍した日本人画家ち!」


「そげんか人、おらしたと? 知らんかった」


「レオナルド藤田と、どげんか関係があると? 

 もしかして、カールみたいに、大畑先生はその人の孫?」


「そうじゃなくて、レオナルド藤田に顔が瓜二つち」


「ほーっ」


「真っ直ぐに切った丼カットと、まん丸なメガネに、ちょび髭がそっくりち」


「確かにあの丼カット、ガキがやっとってもゲッてくるばってん、あの歳でされると迫力あるよね」


「でもプリーツプリーズの、だぶだぶのパンツとシャツは毎日着てない?」


「よっぽどイッセイが好きなんやね」


 レオナルドは二人の名前を呼んだ。


 「桜、西田、ふたりともちゃんと聞いとるんね? 喋りごとしとったらいけんよ!」


 琴音とパミュは咄嗟にどう答えようかと焦る……





「面白かった」「続きが読みたい」


と思ったら、


☆☆☆を押してください。


「レビュー」も頂ければ最高です。


何卒よろしくお願いします。

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