題15話 カールの祖父 フロイト
授業の後の昼休みは、近くのスタバに行く。
ランチの時は、パミュは真剣に何回噛んだかを数えているので、全然話が出来ない。
パミュはバニラクリーム・フラペチーノを、琴音は抹茶クリーム・フラペチーノをオーダーした。
二人はフラペチーノを飲みながら、カールの話題に戻った。
「でもサラダ食べた後で、フラペチーノ飲んどったら、全然ダイエットになっとらんよね」
パミュが笑いながら話しかける。
「そうやね、でもこれは止められん」
「さっきのカールのおじいさん、なんか聞いたことある名前やなかった?」
「フロイト?」
「教科書のどっかで、習ったような気がせん?」
「確か、ジクムンド・フロイトやなかった?」
「ちょっとウィキペディアで調べてみるけん、ジクムント?」
パミュが戸惑いながら、携帯のキーボードに書き始める。
「あっ、ジークムント・フロイト。精神分析の創始者って書いてあるばい」
「そうそう、なんか難しそうな人やった」
「ずいぶん昔の人。千八百五十六年にオーストリア帝国で生まれたげなよ」
「なんで鹿児島のカールのおじいちゃんが、オーストリアで生まれるんね。これ、ありえんね!」
「なんか、どんどん話がこんがらがってくるばってん」
「何ち書いとう?」
「フロイトは、ヒステリーの原因は、幼少期に受けた性的虐待の結果である、という精神病理を発表した」
「うちのかあちゃん凄いヒステリー起こすよ。いつも父ちゃん、怒鳴っとうもんね」
「ここには『性的虐待の所為』って、書いてあるばってん?」
「『かあちゃん、小さいころ、性的虐待受けたん?』とか直接、聞けんもんね?」
「でも女性のほとんどがヒステリー起こさん?」
「確かに多かよね」
「日本女性のほとんどが小さい時に、性的虐待を受けたことになるけど?」
「それっちありえる?」
「この人の結論、極端過ぎるんかも」
「そうかもね」
「他になんか、心当たりのありそうなこと書いてない?」
「この人、凄い沢山本書いとらす。でもなんか変なタイトルばっかりやねー」
「なんが?」
「あのね、『性理論に関する三つのエッセイ』、『快楽原則の彼岸』、『女性の性愛について』」
「なんか性のことばっかり書いとらすね」
「おおっ、来た来た!『マゾヒズムの経済論的問題』、『フェテシズム』」
「なんでマゾと経済論が、一緒になるんかわからんけど」
「そこが天才と凡人の差やない?」
「そやろうね。でもこれエロ本の題名に近くない?」
「おっ、これ凄ッ!」
「なんね、なんね?」
「『リビドー理論』、『リビドー的類型について』」
「リビドーってなんね?」
「なんか卑猥な時に使うけど、正確な意味はわからん。ちょっと待っとって」と
パミュは携帯を片手にサイトで検索する。
「おっ」
「私にも教えて、パミュ」
「リビドーは、『押さえきれない性的欲求』
『特に男性の荒々しい露骨な性的欲求』」
「もう読んどるだけで、欲求不満になりそう」
「この人、異常やね。もう性に執着しすぎ!」
「おおっ、ちょっとこれは口に出せんから、琴音、自分で読んでみて」
「『幼児の性器体制』
ひえ〜、『性格と肛門愛』
これエグッ、『肛門愛の欲動転換について』」
「でもパミュ、『肛門愛』ってなん?」
「肛門から出る愛やか?」
「ゲー、そんな愛ある?」
「おなら?」
「それともウンコ?」
「きちゃなーい!」
「要するに、フロイトって、ただの変態やん!」
「そげんやったら、変態のおじいさんを持つカールも、『変態の孫』やね」
「それ、言えるかも」
二人の浅はかな判断は、「精神分析の父」と言われる前世紀の天才、ジークムント・フロイトは、ただの変態だという結論に達した。
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