第9話 消えた幻の中年おっさん
次の日、琴音は
日が経つに連れて、一分でも長く寝たい為に、起きるのが六時七分から八分に、八分が九分と遅くなる。その間、眠い頭の中では、普通ではまかり通らない計算が成り立つのだった。
今日も眠たい目を
その風景に慣れてしまったのか、他の乗客は全然反応を示さない。
回りのほとんどの人は目を
いつものように
そろそろメッセージをチェックしようと思って、携帯をオンにすると、パミュからのメッセージが入ってきた。
「琴音、イラストの宿題やった?」
「もちろん」
「いま、ギャーン急いで描いとるところ」
「あと何枚描かんといけんの?」
「あと五枚」
「それ、不可能やろ?」
「やるしかないやん。カールの朝礼、うちの分、カバーしとって」
「わかった。頑張れ!」
「マカロン」
パミュとたわしはどちらかが遅刻すると、先生から名前を呼ばれた時に、代わりに返事をして助け合う。
先生たちも朝礼は毎日のことなので、いちいちと一人ひとりの顔を見ながらチェックはしない。
声の質と聞こえた場所で判断しているようだ。幸運にも二人は隣同士の席だった。
思ったよりもパミュはよく遅刻する。
わたしのように遠くから通っていれば理解も出来るが、学校の裏にある学生寮に住んでいた。
たとえ
ここでカールという人物が登場してくるが、説明するのが
もう一つは、「マカロン」はパミュがよく使う言葉だ。
色々な場面で使われるが、特に「わからん」という時と、「かわいい」、又は「じゃあね」という時に使う。
わたしはその時の状況によって、意味を判断している。
マカロンという名詞を使う理由は、今でも定かでない。
これも一般的なことだが、ロリータはマカロンが大好きなのは確かだ。多分、フランスのデザートなのと、丸くて色が綺麗なのが一番の理由のようだ。
最後のメッセージを送った時、
「じわっ」とお尻を触られる感覚を感じとった。
「来た来た、ヤバッ!」と思いながら、急いで携帯でパミュに連絡する。
「また、来た!」
「なんが来た?」
「痴漢、今、『じわっ』と触られたみたい」
「『みたい』ってどげんか意味ね?」
「多分」
「もうちょっと、ガバッて
「そんな〜?」
「そげんせんと
「ガバッと
「わかった」
「マカロン」
パミュに言われたように待ってみる。
わたしは全神経をお尻に集中させる。
再び一分ほどして、じわじわと手が尻に
実を言えば、
リアクションを起こさず
しばらくしてわたしのお尻も手の感触に慣れてしまい、本当に触られているのかわからなくなった。
わたしの
「こいつは痴漢だ」
自分の判断に自信を持ち始める。
もう一度、尻を
わたしの決断を知っているのか?
それともお尻の
列車が博多駅に近づいて来た時に、おっさんの手は動いた。
待ってましたと言わんばかりにスケッチブックを
わたしは
「えっ、ちょっと思った場面とは違うけど」と思いながら、あの
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