第8話 痴漢とピザ
今日も昼休みはパミュと一緒にランチを食べる。
わたしはいつものように、母親から作ってもらった手持ち弁当を広げる。
パミュは学食で、いつものピザを買って来た。
「わたし、ショック」
わたしが話し始める。
「どげんしたと、
パミュはさりげなく聞いた。
パミュは
一般にロリータは何故か京都が大好きだ。パミュもその一人だった。
「あんね、今朝痴漢にあった!」
「えっ、どこで?」
「博多駅で列車から降りようとした時、誰かから尻を
「鷲掴み?」
パミュは片手で
「そおっ」
「片手やった? それとも両手?」
パミュは両手を
「両手で、
「出る
「その手口、
「その点、ロリータはお尻を
私たちスカートの下はパニエでパンパンやけん、手もお尻に届かんもんね。
でも狙われるとは、このオッパイ」
パミュは大きなバストを突き出した。
「お尻には自信なかけど、オッパイなら琴音に負けんよ!」
「ばってん狙われるのは、ほとんど中年のおっさんやけどね」
「やっぱり、サラリーマンのおっさんかなあ?」
「その
ばってん逆に考えたら、
そう思わん?」
「そういう
「うちが見ても、琴音のお尻は
ねえ、ちょっと触らせてー」
わたしのお尻に手を伸ばす。
「やめて、パミュ、やめて……」
パミュの手から逃れようとして、ベンチから落ちた。
「ドスン」
「痛〜っ!」
「もうちょっとで、お弁当落とすとこやったやん」
わたしは弁当を片手に立ち上がる。
「そげんかこつ気にせんで食〜べよっ!」
パミュは一口ピザを口に入れた後、何度か噛んで
「パミュ、今、何度噛んだ?」
「えっ、なん?」
「あんた、飲み込む前に、何度ピザを噛んだ?」
「そげんかと数えたことなか」
「もう一度、
パミュはもう一口ピザを
「一、二、三、四、五、六、七、八」
パミュはピザを飲み込んだ。
「パミュ、あんた八回しか噛んどらんよ!」
「それ、なんか問題あると?」
「
ニキビや
「わたし、ニキビ多いの三十回噛んどらんけん?」
「琴音、わたし、もう一度数えてみる」
パミュはピザをもう一度口に
「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二、十三、十四、十五、ゴックン」
「わたし十五回しか噛めんかった。どげんしよう?」
「一口に五十回から七十回噛むと、ダイエットにも良いっちよ。
七十パーセントの顔の筋肉は口まわりにあるけん、
顔を引き締めるけ、
「誰が言っとったと?」
「うちのかあちゃん」
「琴音のかあちゃん、
「そう、あの年にしては若々しいし」
「うち、太っとるし、顔も大きかもんね!
小さい頃から
うち、七十回も噛めん〜!」
パミュは今にも泣きそうな気配だ。
これが毎日交わされる、ティーンエイジャーの重大な話題の一つだった。
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