7 ストレンジ・フェノミナン 怪奇現象
しばしの混乱は落ち着き、生徒達のスマホは自然と復旧された。
早速、謎の怪奇現象を考察する生徒が出てきたが、「昔、スマホを没収された生徒が飛び降りて化けて出た」とか「学校に住む妖精の仕業」とか「実は学校の地下に宇宙人の基地があって、怪電波を発してる」だの、茶化すだけ茶化して推理大会は終わった。
生徒の話題が過ぎ去っても、僕には懸念していることがある。
ゲームで夢中になり白熱した自分を押さえられなくなった時、頭が放電したのかと思えるくらいの痺れを覚えた。
魂が脳から放出したと表現すればいいのか、とにかく、強烈な虚脱感に見回れた。
アレは十年後の未来でも経験した。
雨の中、トラックにひかれ雷に打たれ水溜まりで溺死した際、肉体から心が飛び出した感覚――――。
十四歳に転生した僕は、人生をやり直せると展望が持てた。
今は木陰に隠れるように暗い影を落とすだけだった。
-・-・ --・-
厚い雲から不穏な雷鳴が聞こえると、雨を予告する。
案の定、雨が降り注ぎ勢いが増すと共にクラス内は陰鬱になっていった。
クラスメイトは傘を持ってきた子と、そうでない子で隔てられた。
なんにしても、突然の雨にクラスからはボヤきしか聞こえてこない。
次の授業は音楽で生徒は皆、教室と同じ三階の音楽室へ移動したが、僕だけは教室に筆箱を忘れたので、慌てて取りに戻った。
「あった、あった~」
ふと、誰かに見られている気がする。
そう思い辺りを見回したが、何も無かったので安心した。
気のせいか?
それよりも早く音楽室へいかないと、先生に怒られる。
走ればまだ間に合う。
走る途中、生徒指導の教員に注意されたが、早歩きでその場をやり過ごし再び音楽室へ走る。
ま、間に合った!
ゴールは目前、この角を曲がり切れば音楽室だ。
もはや、全ての時間も空間も自分が征した。
と、思いきや角を曲がった瞬間、視界を強烈なストロボに覆われる。
脳ミソを掴まれて激しく揺さぶられたような立ちくらみで、平衡感覚が失われて壁に激突。
メガネのレンズが割れる音と共に廊下に倒れこんだ。
痛たたた……何が起きたの?
メガネにヒビが入ってる。
これ新しい物に買い替えないと。
しばらく床を這ってた立ち上がろうと試みた。
なんだろう、急に身体の自由が利かなくなった。
しかも気持ち悪くて立てない。
ゴールの音楽室は目と鼻の先。
早く起き上がらないとならないけど、これは保健室が先か?
めまいが落ち着いて来ると、半身を起き上がらせた。
目の前に水溜まりが広がり、滑り転んだ原因なのではないかと推測したが、どうにも納得できなかった。
水滴が上から垂れてきたので見上げる。
違和感があった。
外は雨。窓は締め切っているので水が入ることはない。
雨漏りかと疑うが、ここは四階建て鉄筋コンクリートの学校で三階。
天井から染み込み滴が落ちるはずがない。
なら水漏れ?
でも不自然だ。
水滴は蛍光灯のガラス管から落ちてくる。
しかも、滴が落ちる度に異質な音色を出した。
例えるなら夜中、電灯に勢いよく飛び込む甲虫のようなバチンッと、弾ける音。
水溜まりじゃない。
まさか――――白い幽霊?
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