Episode 4 人形

 猫の死体に関して調べて二日ほど経過したある日、赤い牡丹柄の和服に身を包む日本人形がやってきた。

 席に案内し、ペットボトルのお茶を二つ出す。すると日本人形は、悟に、


「あなた、今、猫を殺しまわる神?って奴を探しているんでしょ?」

「そうですね」

「私、その神?見たわよ」

「本当ですか!?」

「嘘何てつかないわよ」

「教えてもらうことってできますか?」

「……その変わり、一つ依頼を受けてもらいたいの」

「何ですか?」

「ある人を呪って欲しい」

「…それは、あなたを捨てた持ち主ですか?」

「そうよ」


 悟は、ペットボトルを開け、お茶を飲む。そして、


「すみませんが、依頼は受けることはできません」

「どうして!」

「人を呪わば穴二つという言葉を知りませんか?」

「何それ」

「人を呪うにはそれなりの代償を払う必要があるんです。多分、あなたが言う呪うは、呪い殺してほしいってことですよね」

「何も言う事はないわ」


 日本人形はそう言って席を立ち、依頼処を後にした。それを悟は黙って見つめる事しか出来なかった。猫乃が悟に近づき、


「どうして依頼受けなかったのかにゃ?」

「…人を呪うってことは、呪う人も呪われるんだよ」

「?」

「難しかったかな。簡単に言えば、人を殺した人がいます。その殺した人は、あとで絶対に死ぬみたいな。160kmの球速でデットボールをバッターが喰らったら、投げた側も160kmの球速のデットボールを喰らう感じだ。おけ?」

「なんとなくわかったにゃ」

「それは良かった。つまり、あれを受けて例え依頼を完了してもリスクがデカすぎる、まして日本人形に関して言えば、自分が関わらなくても…いやなんでもない」

「でも、悟は、妖力が実質無限じゃないかにゃ?」

「呪いは妖力とは全く関係ない。呪力っていう特殊な力に分類される」

「妖力も特殊じゃないかにゃ?」

「それだと、日本中の妖怪は特殊の力があるとややこしくなるから。一般的にどの妖怪も妖力はある。それで、一部の妖怪、例えば、恨みから生まれた妖怪などには呪力が生まれるんだ。簡単に言えば、人間が生み出した妖怪だ」

「なるほどにゃ」

「だから、例え妖力がある僕が呪ったところで僕は死ぬ事が確定するんだよ」

「それはいやにゃ」

「そう言ってもらえるだけでなんか嬉しい」

「ネコ缶が食べれなくなるにゃ」

「……しっかりしてやがる」


 悟と猫乃はもう少し、神について調べてみることにするのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る