Episode 6 伝えたかったこと

 猫乃が言語を話せるようになって大分楽になった。11月2日の月曜日から2日経った5日の木曜日。猫乃は悟に、


「学校に行きたい」


 と伝えた。悟は悩むしぐさをする。悟が通っている高校は誰でも少し勉強すれば編入は出来るが、その勉強を教えるには多分、一か月は必要だ。それに最初から教えるとなると、……悟は自分のカバンから問題集を取り出した。二次関数の応用問題のページを開き、猫乃に見せながら、


「この問題が出来たら行かせてやらないこともない」


 そう伝えて猫乃に解かせてみた。悟は猫乃にシャーペンを渡し、どうやって解くのか見ていた。するとものの数分で問題を解いたのだ。答えを確認するとちゃんと合っていた。

 ほかの問題も解かせてみるがものの数分で解いてみせたのだ。どうして解けたのか悟は猫乃に訊くと、教育番組を見てたら解けたと言っていた。テレビを見ただけで言語を覚えるあたり学習能力は高いのだろう。

 高校に編入は大丈夫だと思うが、どうやって住民登録をするのか課題は未だ残っていた。

 とりあえず、悟が思いついた案は、


「学校見学で一度行ってみるか」


 と伝えた。「にゃったー!」としっぽを振りながら喜んでいた。

 明日、6日の金曜日。悟は高校に学校見学希望者がいるのですがと許可を取った。

 時刻は気づけば19時。晩御飯をつくり、一緒に食べ、風呂に入り寝ることにした。猫乃は明日が楽しみなのかそわそわしていた。

・・・

 11月6日金曜日、猫乃は言語喋れるようになったお祝いで貰った10着の中から最近流行のお洒落な服を着ていた。悟は制服を着ていた。猫乃は制服をじっと見ていた。「そんなに着たいか?」と訊くと、「にゃん!」と頷いた。

 準備を終え、通学路を歩いていく。今日は猫乃がいるので電車で向かうことにした。最寄りの駅に向かい、目的の電車に乗り込み、出発を待つ。

 猫乃は初めての電車に乗った子どもみたいに窓の外をじっと見ていた。

 最初あった時みたいに無作為に人をミイラ化させないために悟は持続的に猫乃へ妖力を与えていた。悟は大分特殊な存在なため妖力は果て無くあった。

 悟にはかなり複雑な血縁でまだ明かす必要はないだろう。必ず言える事は、人と妖怪のハーフではないということだ。

 しかし、なぜ猫乃はいきなり高校に行きたいと言ったのか。

 悟は心が読めるゆえに学校がそんなに良いものとは思っていなかった。どちらかと言うとドロドロして嫌いだった。

 とある女子は必ずと言っていいほどいじめの主犯格だし、無口で黙っている子は密かに周りの子をみんな馬鹿にしているし、ドヤ顔で道を歩いている奴は自分がイケメンで誰もが俺を見つめていると妄想しているし、好きと嫌いが入り混じり、80%チョコレートのように嫌いの率の方が高いのだ。

 心が読める能力は閉じることは出来るが、そうすると自分が何を考えているのかさえわからなくなってしまうのだ。

 仕方なく悟はこの能力に向き合って生きている。

 悟に個性は主に心が読める能力と武器を想像し生み出す能力だ。あとの姿を消したりとはそれらの副産物と思ってくれて構わない。

 猫乃の個性は確認したものでは猫化狂暴化バージョンくらいである。賢さは元々あったもので個性というまでのものでもないだろう。

 ガタン、ゴトンと電車は揺れていく。悟はウトウトして数分後静かに寝ていた。猫乃は窓の外をずっと見ていた。

・・・

 電車内の「○○の駅の到着いたしました」という目的の駅名のアナウンスで悟は、目を覚ます。

 料金を払い猫乃とともに電車を降り、青陵の坂を上がって行く。この坂道が毎度のこと辛い。猫乃は軽々と登って行く。

 やっとこさ高校の着き、高校の事務所に向かった。そこで学校の見学許可書を貰い、猫乃のは首に掛けた。

 悟の通う高校は広く、一時間くらいかけて学校を回っていた。

 楽しそうに笑う猫乃。本当に学校に通いたいのか、悟は重い腰を上げて資料でも請求するかと思った次の瞬間、途轍もない殺気を感じた。

 悟は猫乃と一緒にそれから回避した。途轍もない殺気を放ったものを見ると、口は血に染まっていた。そして、


「我が名はジャッジメント、天使なり!!!」


 ジャッジメントはそう名乗り、攻撃を仕掛けてきた。その攻撃を悟、猫乃は回避する。神と悪魔の狭間のような奴。猫乃は、猫化して攻撃して警戒していた。悟は、ジャッジメントに指さし、


「おい、半端もん!てめぇがどんな経緯でそんなキモイ奴になったかは知らないが、僕も殺されたくない。手加減無しでボコるから」


 悟は、刀を生み出し、居合の構えに入ったのだった。

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