Episode 5 神と名乗る青年

 学校が終わり、丁度良い時間にあった電車に乗り込んだ。早く目的の駅に着かないかと悟は落ち着かない様子だった。

 家に一人の猫乃が心配なのである。本当に心配だ、また、床にマーキングしてたり、まだしてはいないが、猫だから壁で爪とぎをしている可能性がある。

 一駅止まる度に心音は速まって行く。

 アナウンスが目的の駅の名前を言うと同時に出口にスタンバイした。

 ドアが開いた瞬間、飛び出して、料金を駅員に渡し駐輪場に向かった。

 愛車のクロスバイクに跨り、愛車が出せる最高速度の30kmで家へと漕いでいった。

 ドリフトを決め、スピードを落としロックをして玄関のカギを開けた。すると、


「おかうぇり」


 という声が聞こえた。家には悟と猫乃以外住んでいない。なのに「おかえり」という声が聞こえる。

 リビングに向かうと、二足歩行になった猫乃とつけっぱなしのテレビがあった。

 悟は猫乃に、


「言葉、覚えたのか?」

「にゃん、すこしおかしくなるけど、はなせる」

「凄い!テレビを見て覚えたのか!?」

「にゃん!」

「ね、猫乃~」


 そう言って悟は猫乃を抱きしめた。そして、頭を撫でながら、


「よく頑張ったなぁ、偉いぞ猫乃!」

「猫乃、偉い?」

「そう偉い!」

「悟の変態!」


 「えっ」という声の前に、右頬にパンチを喰らった。体が壁にぶつかるほど吹っ飛んだが、それ以上に嬉しいことがもう一つあった。それは、猫乃が「悟」と名前を呼んでいたから。

 いや、それ以前に気になるのが、


「なぜ僕が変態なんだ!」

「だって悟、エロいって」

「え・ら・い、だ!」

「あ、えらい」

「そうそう」

「えへへ、猫乃嬉しい」


 そう言って猫乃は二又のしっぽを左右に激しく振っていた。

 二又のしっぽ……そういやぁ、あの猫親父、僕に「猫乃をお願いします」とか言って消えていったんだよな。と言われていたことを思い出して猫乃を見た。

 市役所に届けとか出した方がいいのかこういうのって。

 そんなことを考えながら、テレビを見出した猫乃を見つめた。

 数分後、悟の部屋にある本棚が爪とぎをされたせいでボロボロになっているのを発見し発狂するのだった。

・・・

「ねこ、ネコ、猫。不幸の象徴。神の名のもと皆殺し決定」


 辺り一面に猫の死骸が転がる。

 それを下校途中の高校生の集団が見つけてしまった。

 猫を殺した者は、高校生の前に瞬間移動して言う。


「私は神です。そして、あなた方は神の裁きを見てしまった迷える子羊」


 槍を高校生に向け、神と名乗る青年は言う。


「あなた方の行くべき場所へ導きましょう」


 そう言って、神と名乗る青年はガリのもさっとした高校生の心臓に向け、槍を刺した。血は飛び散り、高校生たちは逃げ惑う。

 高校生の集団はまた一人、また一人と導かれていく。最後、ガリとぽっちゃりな子の二人となった。

 ぽっちゃりな子は無理やりガリな子を前に出させ、自分の盾としていた。それを神と名乗る青年は、


「やはり、人間というのは迷える子羊であっても殺すべきですね」


 そう言って、ぽっちゃりな子の背中に周り、心臓に向け、槍を刺した。神と名乗る青年はガリな子を見つめて言う。


「ちょうど人でがなかったですよね。あなたには私の力を授けましょう」


 そう言うも、ガリな子は怖くなり、走って逃げようとしたが、神と名乗る青年は、


「なぜ、逃げようとするのですか?」


 と言って、ガリな子の足に槍を刺して、足止めをした。そして、神と名乗る青年は自ら腕を浅く切り、出てきた血を無理矢理ガリな子に飲ませた。

 するとガリな子は徐々に体が変形していき、神と悪魔の狭間のような、この世の者とは思えない何かとなっていた。

 神と名乗る青年は異形となったガリな子に、


「君はこれからジャッジメントと名乗ってください」


 と告げた。異形となったガリな子は、


「ジャッジメント、ひゃ、ひゃっはははははっはははっは」


 と不気味な笑みを浮かべながら笑い声を発した。

 神と名乗る青年は、ジャッジメントに、


「とりあえず、腹ごしらえをしなければいけません。これまで私が裁いた者どもを食べてください」


 そう言って、殺した高校生の遺体をジャッジメントの前に出した。ジャッジメントは涎を垂らし、バキッ、バキッと鈍い音を立てながら、食べ進めていった。

 そして、全ての遺体を食べ終えたジャッジメントは、神と名乗る青年の前に跪く。神と名乗る青年は、


「良い子だ。これからは、イジメっ子を導きなさい。でも、主に猫を導くのを忘れてはいけないよ」


 ジャッジメントは頷き、そのまま姿を消しって言った。神と名乗る青年は、ビルの屋上へと移動して、両手を掲げ言う。


「私はドゥクス。神にして全ての者を導く者である」


 ドゥクスはそう言って光とともに姿を消したのだった。

 

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