Episode 3 悟の実力
スマホが地面に到着した瞬間、猫の女の爪が悟の喉を貫いたと…思われたのだが、悟はその攻撃をかわしており、猫の女も驚いた顔をする。
多分、猫の女は喉を着いた攻撃でしか人を殺したことがなかったのだろう。野生動物というのは同じことを繰り返す生き物だから、悟は、喉に攻撃がくることは分かっていた。だから、かわすことができたのだ。
次は悟が攻撃をしようとするも、猫の女は素早く、すぐに間合いを取られてしまい攻撃ができない。
これは軽く本気を出さないといけないのだろうか、首を横に振り、ポキッポキッと鳴らした。
ふぅっと息を吐き、武器のイメージをする。悟の複数ある個性の一つである『武器創造』である。悟が創造し生み出した武器は猫を誘惑する魔の武器……。
悟は魔の武器を猫の女に向けた。そして、ゆっくりと上下に動かす。猫の女の動きが段々と鈍くなっていく。注意が悟から魔の武器へと注がれているのだ。
悟は内心むちゃくちゃ驚いていた。まさか本当に効果があるとは思っていなかったのだ。
猫の女は必死に捕まえようとしている。りんりんと鳴る鈴もついているため効果は絶大である。
ここまでくれば魔の武器が何か分かった人は多いだろう。そう、魔の武器とは『猫じゃらし』である。
しばし猫じゃらしで遊んでいた。上下から左右へ動かしてみたりした。さすがに投げると効果が切れたみたいで、猫の女は悟に殺しにかかる。そして、その攻撃を悟は避ける。
十数分くらい攻撃を避けたところで、猫の女は息が上がっていた。悟は余裕の笑みを浮かべ、
「じゃぁ、そろそろお開きとしますか」
と言った。猫の女は意味が分かったようで、一瞬にして息を整えた。悟は抜刀の構えをとる。抜刀の構えをとった左側の腰には木刀を生み出す。
息する音はしない。剣道の打ち合い、また仕掛けるとき高段者の先生方息を止めている。なぜなら息を吸う瞬間は身体が動かないからである。
すぅと息を吐く音だけが聞こえた。
刹那、勝負は一瞬で終わった。倒れているのは猫の女だった。
ふぅと安堵の息を吐く。カウンターを苦手とする悟にとって一か八かの賭けだった。
喉元を毎回狙ってくるのを読んで、それは剣道で応じ技を打つように猫の女の喉を狙った腕を上へ払い、大きくスキができた胴に向けて木刀を振った。
……やってから罪悪感が半端ない。例えそれが妖怪であろうと女には変わりない。
手で顔を覆い、下にうずくまる。はぁ、俺はなんてことをしてしまったんだ。
1人懺悔をしていると猫の女はむくりと起き上がり、悟の方を見ていた。襲う気配はない。
野生の世界も現実も上下関係とは変わらないらしい。悟は猫の女に向け、
「おい、猫の女!名前はあるのか?」
「にゃーい」
「ないってことか。それは不便だな……安直に猫乃(ねこの)でどうだ?」
「にゃい!」
「気に入ったってことでいいのか、姓名もいるなら……亜麻猫(あまねこ)でどうだ?亜麻猫 猫乃にしよう!」
「にゃぁーい!!」
どうやら気に入ったようだ。猫のは嬉しそうにしっぽを振っていた。そしてそのしっぽは二つに分かれていた。
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