　日本最大の同人誌即売会・コミックマーケットにはそれこそ日本中から同人サークルが集まる。当然同人誌も。そうなってくると質にもピンからキリまで色々出てくる。

　壁サーや有名どころの物が優れているのは当然として、まだ見ぬ良作を探しに私は会場をうろつき、そしてそれを見つけた。

　玉石混交という言葉があるが、それは玉ではなく、石というのすら生ぬるい。なんというか、多分この会場にある、いや、世界中の同人誌の中で一番ひどいのではないかという漫画だった。

　まず絵がひどい。下手とかいうのは既に些細な問題で、パースの狂い、線のゆがみ、その他諸々が見ているだけで吐き気を催す効果を発揮している。

　その絵を堪えてセリフを読むと、これもひどい。誰が発言しているのかがよくわからないのだが、それぞれの発言自体もいまいち意味が取れない。ただ、脈絡なく誰か（登場人物ではなく、現実世界のなんらかの属性の人たち）を罵倒し蔑むセリフが挟まっていて、これだけはちゃんと読める。

　この二つをクリアして、ようやくこの作品のストーリーが、某殺人事件の犯人を称え、被害者を貶める内容であるらしいことがわかる。これも悪魔崇拝の奨励やら、妙な脇道やらでひたすら理解しにくい（難解なのではないが、読者の理解を拒む）ので、私も何度も読んでようやく理解できた。

　そう、私はそれを買ったのだ。そして後悔はしていない。

　この作品自体はひどいとしか言いようがないが、単純に下手というだけでは説明のつかない部分が多く、将来の伸びが期待できる。例の殺人事件の犯人が逮捕された日から逆算するに、筆もかなり速い。

《お題：地獄の作品必須要素：コミケ制限時間：30分》

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