甘栗の季節

 冬になると甘栗を売る行商人が街を闊歩する。今年も甘栗屋はエリーゼの勤める屋敷の角にやってきた。エリーゼは手持ちのわずかなお金を握りしめる。そのお金は甘栗屋……ではなく彼女の貯金箱に消えた。

 去年までの何年か、エリーゼは恋人のキーツと分け合って甘栗を食べていた。キーツとエリーゼは幼馴染で、ともにこの屋敷に奉公に来た。キーツは今年の冬を迎えることができなかった。

 だから今年はエリーゼは甘栗を食べずに過ごす。多分来年も、その次の年も。


《お題:せつない貯金 必須要素:甘栗 制限時間:1時間》

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