夕飯探偵・大富豪殺害事件
レジナルド=フィルというのが昨日夕飯に食べた男の名前だと人食い鬼は服のタグから気づいた。
廃墟に放置されていたラジオによると、レジナルドは殺人事件の容疑者で、現在逃亡中だという。だが、人食い鬼はその情報に疑問を覚える。レジナルドはこの廃墟で椅子に縛られて放置されていた。誰かの手によって拉致されたらこんな感じだろうか。
ラジオによると、レジナルドは殺害された大富豪の一人息子だそうで、遺産目当ての犯行という見方が強いらしい。別段、殺人犯が拉致されて廃墟に監禁されてもおかしくはないだろうが、どうも違うんじゃないかと人食い鬼は思った。
金目当ての誘拐とも思えない。そうだとしたら、人質を見張るチンピラの一人もいるはずだ。もちろん、人食い鬼は自分がそれを食べていないので、いなかったとわかる。
どちらかと言えば自分に食べさせるためにレジナルドはここに監禁されたという可能性の方が高い。人食い鬼の住処だと探索に来る人間もいるし、そういう噂になっていることは明らかだ。
犯人はレジナルドとその父親が両方死んで得をする人間だろうか。いや、死体が残らなければ人間社会では死んだということが証明しがたくなる。人食い鬼はそのことを知っていた。
富豪が死んでその息子がいなくなると、財産はどうなるのだろうか、と人食い鬼は考えた。きっとややこしいことになるに違いない。そのことで得をする奴もいるんじゃないか?
ラジオが事件について知っている情報があればお寄せくださいと言っていたので、人食い鬼はその考えを書いて、廃墟の住人が残していった古い切手を張り付けてラジオ局に送った。
しばらく経って、富豪の秘書で財産を管理していた男が逮捕されたとラジオは告げた。財産を横領していたのがバレ、その痕跡を消して高飛びしようとしていたらしい。
警官隊が捜索する廃墟を遠めに見つつ、しばらく帰らない方がいいなと人食い鬼はラジオを抱えて思った。
《お題:昨日食べた御曹司 必須要素:ラジオ 制限時間:30分》
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