アフタヌーンティー

「アフタヌーンティー、というには遅すぎませんか?」

 そう私は口にした。まあ、午後には違いはないのだが、間もなく午前となるような時間帯だ。

「これは申し訳ありません。しかし、私も起きるのは日が落ちてからですので。今の時期だとこれでも早めのつもりなのですよ」

 そう言って茶会の主、エリザ、美少女吸血鬼のエリザは微笑んだ。

「エリザさん、お会いできて光栄ですわ」

 雑誌社の岬社長がそう声をかけた。

 美貌と叡智、その両方を兼ね備えたエリザは、現在芸能人として活動している。単純な芸能人としてのスペックからして、俳優としての演技にせよ、歌手としてのダンスとパフォーマンスにせよ、あるいはバラエティー番組で発揮される様々な特技、そして人々を引き付けるカリスマと破格の高さを誇る上に、吸血鬼という怪物としての、見世物としての希少性まで持つエリザは一躍時の人となった。社長自らお茶会にはせ参じての独占インタビューオファーである。

 この席についている私以外の招待客全員が、吸血鬼エリザに取り入ろうとしている。テレビ局重役、広告代理店のエージェント、こっちは某政党の関係者だったか。

 サンプル提供を依頼する大手製薬企業の研究部門重役のあと、岬社長がお土産があると言ってエリザへと近づく。私は懐から拳銃を取り出し、岬社長に撃つ。岬社長はティーワゴンを巻き込んで倒れ、死ぬ。

 騒然となる招待客たちをなだめてくれたのもエリザだった。岬社長の死体の腕を取って、無造作に持ち上げる。袖口から除く暗殺用の刃物。

「教会の回し者なのでしょうね。この方はこういう事態に備えて雇った護衛なのです」

「申し訳ありません。彼女の背景調査が不十分でした」

 私は頭を下げる。

「気になさらないで。それより、お茶会を楽しみましょう?」

「エリザ様、替わりのお茶を持ってこさせましょう。先ほどの騒ぎでこぼれてしまいましたので」

「いいえ、お茶よりもよっぽど素敵な飲み物がここに」

 エリザはそう言って、岬社長の死体から血を啜った。


《お題:遅いお茶 必須要素:いま話題のあの人 制限時間:30分》

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