「UFOの街」の街娼
エミーの父親が誰かは子供達には隠されていたけれど、それが誰かというのはどの子にとっても明らかだった。つまり、エミーを見れば。
エミーの母親はこの田舎町にあっては娼婦という存在に一番近い副業を持っていた(もちろん、本業は農作業従事者だ)。ある日のお客は空飛ぶ円盤に乗ってやってきて、エミーの母親を連れだすと6時間のコースを選び、料金を踏み倒して消えた。そのお客は村人のように避妊を気にする必要を感じなかったので、しばらくしてエミーが生まれた。
エミーはその体格は幼いころの母親に似ているが、顔は(たぶん)父親に似ている。エミーがこの顔のせいでいじめを受けているかは定かではないが、かつての母親の副業ゆえに、子供たちの親が関わらないよう子供達に言い聞かせているのは確からしい。
「私は空飛ぶ円盤だなんて信じていないのよ」とエミーは「UFOの街!」と書かれた看板の下で語ってくれた。その口は地球上のあらゆる生き物の口に似ていないにもかかわらず、綺麗な英語を話す。
「きっと、私のパパはこの村の誰かよ」
この村の誰も、キミと似た顔をしていないよ。そう言うと、エミーは答えた。
「パパは人間そっくりに化けられるの。だから、誰もパパが宇宙人だなんて気づかないのよ。
パパは他の村の人たちみたいにママを買ったの。でもうっかりコンドウムを忘れて身籠らせちゃったの。ママはパパの正体を知っているけれど、外聞が悪いから黙っていて、代わりに空飛ぶ円盤の話をでっち上げたのよ」
その晩、泊まっていた民宿の主が招き入れた暴漢に追われ、這う這うの体で逃げ出したため、これ以上のことをつかむことはできなかった。
確かなことはその村は今も「UFOの街!」という看板を掲げ、この国の片隅に存在しているということだ。
《お題:空前絶後の血 制限時間:30分》
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