神の村

「ここは神の村なんですよ」

 車が壊れた?そりゃお困りでしょう、うちに泊まりませんか。そう言って誘ってくれた爺さんがそう切り出したのはすでに集落の中心に入ったときのことだった。

 新しいものもあればバラックのようなものもある家々。そのすべてがどこか宗教じみたあやしげな装飾品をつけているので怪しいとは思った。元は放棄集落か。そこに家を新しく建てて作ったらしい「神の村」。人里離れた山奥でカルトの拠点としては申し分ない。

「おい、そいつは誰だ」

 だしぬけに話しかけてきたのはひときわ立派な家のベランダにいた恰幅のいい男。

「わしの親族ですじゃ」

「うそをこけ。人間だろう!」

「人間!」

 バラックから隻眼の男が出てくる。片目は義眼だが、もう片方の目が人の頭くらい大きい。

 ほかのバラックからも、下半身が蜘蛛や蛇の、異形の男女が這い出して来る。

「我を崇めよ!さすれば……」

「たわけ!こやつはわらわのものぢゃ」

 カルトの村ではなかった。ここは祭ろわぬ神々、自らの信徒を求める神たちが潜む、文字通り神の村だったのだ。

「わしを崇めよ!わが権能で車を直してやるぞ」

 最初に話しかけてきた爺さんが叫んだ。


《お題:神の村 必須要素:義眼 制限時間:15分》

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