殺人における純粋性に関する探究

「推理小説ファンにはいろいろとこだわりが多い者も多くてね」

「本格派とか社会派とか?」

「私もその一人でね」

 目の前の男はそう語った。

「私はね、推理小説には事件の純粋性を求めるんだ」

「事件の純粋性?」

「犯人の意図しない偶然の要素によって不可能犯罪と化すとか、そういうのは純粋性が低い。その、事故のようなものだ」

「つまり、事件の隅から隅まで犯人の意図によるものでなければダメ、だと」

「犯人以外でも、別の容疑者がそれぞれの思惑で行動して、それで事件が複雑化するのは許容できるが、たまたま人がいたために密室になったとか、そういうのは好きになれなくてね」

「厳しくありません?」

「たしかに。そう思うよ」

 男はわたしに向けた拳銃の撃鉄を引き起こした。

「この稼業をしていて、そう言った偶然に助けられたことが恥ずかしながら何度かあるものでね」


《お題:純粋な事件 制限時間:15分》

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