たった一つの広告
「先生には是非我が社に来ていただきたい」
そう言って大手広告社の男が提示した額はなかなかのものだった。
私は広告絵師だ。昔の雑誌とかに載っていたリアルな絵柄で描かれた商品。アレを描く専門のイラストレーターだ。
写真で良いじゃないか?たしかに。そう言う意見に押され、広告イラストはすっかり廃れてしまった。私も自分の師匠以外に同業者を知らない。
だが、よくできた広告イラストには消費者の購買欲をそそる魔力がある。私の師匠はそれを自在に操ることが出来た。そして私も、多少の心得がある。この力を使えば、絵を見た人全員に「買いたい!」と思わせることが出来る。この力のおかげで私は引く手あまた。ヘッドハンティングにしょっちゅう遭い、そのたびに給料は上がっていく。
だが、この不思議な力、簡単に修得できるものではない。対象となる商品一つごとにとんでもない量の訓練を積まなくてはならない。
「どの商品を選ぶかは慎重に検討しなくてはならぬぞ」
師匠はそう言った。そして私は考え抜いた結果、私は一つの商品を描くときだけ、この力を使えるようになった。
私の名刺には自画像が描いてある。これを見れば誰でも私が欲しくなるのだ。私の腕がそれほどでなくとも。
誇大広告?自分の所のがそうではないと言える雇い主にはお目にかかったことがない。
《制限時間15分・お題:絵描きの高給取り》
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