第39話 神々降臨?
「やあ。リュシアス。会うのは久しぶりじゃないか。」
「本当にお久しゅうございますね。」
突然、美人な方たちからお声がかかった。
サラサラと流れるような金髪に緑眼のイケメン様と、淡いピンク色の柔らかそうな髪にかわいらしい茶眼の美人様だ。
並び立つ姿はとても美しく、王子様とお姫様が絵本からそのまま飛び出てきたようだ。
これぞ美男美女カップル!
微笑んで寄り添いあう二人は、見ているだけで幸せになれる気がする。
「あぁ。ダレン、ベロニカ。挨拶に行くところだったんだよ。」
リュシアスが笑顔で返す。
気安い態度や名前呼びなところから、親しいご友人の様子。
年頃も同じくらいのようだし、学友の方たちだろうか。
三人並び立つと、さらに美しさが増し増しだ。
絵画の一部のようなこの光景。名づけるならば、天上の神々降臨か。
思わず両手を組んで、拝みたくなる勢いだ。
あぁ。尊い。
「ティアーナ紹介するよ。こちらが今回招待してくれた、フォーリム公爵夫妻だ。
小さい頃からの仲だから、もう3人とも腐れ縁ってやつかな。
ダレン、ベロニカ。こちらが私のパートナーのティアーナ・アコーリス男爵令嬢だよ。」
「ダレン・フォーリムだ。こちらは妻のベロニカ。以後お見知りおきを。」
夫妻がそろってにこやかに挨拶をしてくれる。
恐れ多いと思っていたが、とても優しそうな方々でほっとする。
リュシアスと交流のある人は、みんな親切で優しそうな方ばかりだ。
そういう方たちだからこそ、リュシアスが許して側にいられるのかもしれない。
「ティアーナ・アコーリスと申します。お初にお目にかかります。
今回は招待いただき、ありがとうございます。」
丁寧にお辞儀をして、公爵夫妻へ挨拶を返す。
「まぁ! 噂のお相手の方ね! もちろん、ばっちり聞いているわよ!!」
ベロニカが手を合わせて、にこにこと微笑みながら言う。
テンション高いです。
「とても気になっていたんだ。まさかリュシアスがパートナーをつくるなんて想像もしていなかったから、噂を聞いたときは何の冗談かと思ったほどだ。はは。実際に存在していたんだな。」
ダレンもにこやかに笑いながら言う。
「もちろんじゃないか。私は冗談でパートナーなんてつくらいないさ。
ティアーナには本気も本気だよ。どこにいても側にいて欲しい相手なんだ。」
リュシアスはティアーナを愛おしそうに見つめながら、そう話す。
今日も甘いお言葉いただいましたー。
リュシアスの態度や言葉をきいて、フォーリム夫妻は目を見開き、お互いに顔を見合わせている。
それほどまでに驚愕な発言だったのだろうか。
「お前がそこまで言うなんて……。惚気なんて初めて聞いた気がするぞ。」
「えぇ。驚きましたわね。そこまで骨抜きにされているなんて想像以上ですわ。
しかもあのリュシアスが! 天地がひっくり返ってしまったのかしら。」
「あぁ。もしかしたら、この世の終わりがくるのかもしれないぞ。」
「きゃぁ、大変ですわね。」
え。そこまで?
なんだか最近はリュシアスの甘々発言は通常営業だったので、この程度ではそんなダメージないのですが。
いや……やっぱり、慣らされてしまったのだろうか。
意外とイケメンって慣れるものなのね。
私結構図太い?
「二人ともそこらへんにしてくれるかな。ティアーナが困ってしまうよ。」
リュシアスがたしなめる。
二人はケロリとしているようだが、ティアーナに向かって謝った。
「あぁ。ごめんなさいね。悪気はなかったのよ。」
「い、いえ。そんな。大丈夫ですわ。」
「今までリュシアスがそんなことを言ったことが一度もなかったから、驚いてしまったんだ。すまないね。」
「仕方がないだろう。今まではティアーナに出会っていなかったのだから。」
「「!!!!!!!」」
衝撃再び。
セカンドインパクトの威力は壮絶なようだ。
言葉を失って、目を見開くフォーリム夫妻。
むしろ、こちらがごめんなさい……。
えー。もうやめてくださいー……。
「……まさか。こんな日が来るなんて。」
「……えぇ。想像もしていませんでしたわね。」
「結婚した時だって、子どもができた時だって、こんな甘々発言したことないぞ。」
「はい。一度も耳にしたことがございませんわ。」
「どういうことだろうか。」
「どういうことでしょうね。」
「つまりは、そういうことだよ。私の運命に出会った。それだけのことさ。」
「「!!!!!!!!」」
驚愕に驚愕を重ね、もう目も口もぽかーんですよ。
イケメン破壊力絶大すぎ。
みんなしてなにもいえねーって状態。
……だから、もうやめてくださいよー。
「リュ、リュシアス様。もうその辺にしてくださいませんと……。」
「ん? ティアーナ、大丈夫だよ。二人は噂話ばかり聞いて疑っていたんだから、事実を教えてあげないとね。」
リュシアスはにっこり笑って、さらっとかわす。
フォーリム夫妻は、驚愕からどこか興奮が冷めやらぬ様子。
「一度ならず、二度までもそんな言葉を発するとは。」
「わたしの耳が、妙な病にかかったわけではないのでしょうか?」
「あぁ。そんなはずはない。私の耳にも同じように聞こえたさ。
ということは、二人して耳に異常をきたしてしまったのだろうか。」
「まあ! 大変ですわ。それでは、今日の舞踏会はお開きにいたしませんと!」
「こらこら。二人とも大げさすぎるだろう。
ただティアーナに関する事実を述べただけなのに。
今までの私と、彼女に出会ってからの私とでは違うというだけさ。」
何をそんなに驚くことがあるのかと、さも当然だという態度のリュシアス。
確かに私が知っているのは、アプローチしまくっているリュシアスばかり。
他の方への対応をほとんど知らない。
ミオティス様には愛情深く接していたようだが、それも私のそれとは違うのだろうか。
「それが信じられないんだろう!!」
「そうですわ。今までの行いを振り返ってごらんなさいな。
それはそれは多くの令嬢に秋波を送られても涼しい顔をして。
あの美しいミオティス様と結婚しても、何事もないように振る舞っていらして。
それがティアーナ様を相手にすると、こんなに甘々になるなんて! 誰が信じられるっていうの!!」
「子どもたちのことも心配して、いい相手を紹介しようとしても、すげなく断り続けて。
どんなに綺麗な令嬢も、どんなにかわいい令嬢も、誰も近寄らせることはなかったのに!
それがこんなにベタベタになるなんて!
お前、リュシアスの仮面をかぶった、別の何かになってしまったんじゃないのか!!」
……言い方。
お二人とも、それはそれは混乱していらっしゃるのでしょうけども。
「ははは。息がぴったりなのは相変わらずだね。
でも、君たち少し落ち着いたらどうだ。」
「どうやったら、落ち着けるというんだ!!??」
「どうやったら、落ち着けるというの!!??」
双子みたいにハモりが美しいですね。
はは。もう私どこかへ行ってしまってもいいですか……?
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