第32話 遊び疲れて
また時間を忘れるぐらい、遊びまわってしまいました。
これは、タイマーセットして休憩時間確保しなければいけませんね。
1クール50分、休憩15分とか決めておかないと。
こんなに体を動かすのだから、水分補給や糖分補給は必須だ。
一緒に遊んでみて、お子様方の体力の底知れなさを感じた。
肉体年齢15歳だが、令嬢として育った私にはお子様を相手する体力が少し足りないようだ。
すぐにバテてしまうのが惜しい。
見守りも大事なので、遊ぶだけではなくしっかり安全に遊べているかも確認はしているが。
まぁ、あのお二人なのであまり危険なことはしないだろうが、何しろ初めて見る巨大遊具だ。
使い方を間違えると大けが必至なので、楽しさに身を任せてばかりいると危険だ。
冷静に周りを見回すことも大切であることを伝えつつ、一緒に遊びます。
お二人は魔法が使えるので、落っこちてケガをするというのもないのかもしれないが。
いざというときに魔法が使えないかもしれないので、念には念を入れて安全に遊んでもらう。
だだっ広い部屋には遊具だけではなく、喫茶スペースも準備した。
皆でお茶をするのにも使えるし、子どもたちだけで遊んでもらい見守りながら休憩することができるようにしたかったからだ。
託児カフェ的なものをイメージして製作。
遊びまわる子供を眺めつつ、優雅にお茶する親たち。
うん。主婦のあこがれだわ~。
お茶会しながら、子どもたちは遊ばせられるなんて、一石二鳥。
短い時間でも、育児からの解放感が半端ない! おしゃべり楽しい! ストレス発散!
いいこと尽くしではないか。
今世はママではないし、友達なんぞもいないけれども……。
ん? 無駄スペース作っちゃった……?
い、いや。そんなはずはない……はず。
急に自信なくなってきた。
いろんなものを製作するのが楽しくて、そのテンションのままこの喫茶スペースも作ってしまった。
衝動買いな勢いで、やってしまったかしら……。
うぅ。でもいいんだっ!!
ここで子どもたちやリュシアス様とお茶すればいいんだ!
遊ぶ途中の休憩所にすればいいんだ!
なんの問題もない!!
……友達呼んでみる?
うーん。私には子連れの友達なんていないし。
リュシアス様の交流のある方や、ラファエルさまやマルティアリスさまのお友達いらっしゃるのかしら。
そういう方がいらっしゃれば、今度招待して一緒に遊んでいただくといいかもしれない。
後でリュシアス様に話してみようかな。
まだ遊びまわっている子どもたち。
一人ゆったりソファに座りこんでまったりとお茶をしていると、なんだかうつらうつらしてきた。
わくわくしすぎて、寝つきが悪かったのかな。
遠足前のこどもか。
ふぅ。楽しいな。
この屋敷に来てから、なんだかバタバタしていたけど、充実してる日々だと感じる。
お茶も美味しいし、お菓子もごはんもとってもとーーっても美味しい。
楽しく遊んで、おいしいものをたくさん食べて。幸せがいっぱいで。
――――でも、私だけ。いいのかな。
幸せな日々は、逆に少し後ろめたいような、そんな気分にさせる。
別世界に転生して、そこには私の最愛の人たちはいなくて。
別の人となっても、前世の自分の記憶はあって。
彼らを置いてきてしまったような、自分だけ取り残されてしまったような……。
どちらにしても、私一人きりなのだ。私だけがぽつんと存在している。
なぜ? どうして?
結局、記憶が戻る前と変わらないのだ。
何か満たされない、どうしようもない歯がゆい気持ち。
その原因が前世にあったということが、なとなく分かったことだけ。
原因が分かっても、対策が分からない。
どうすればいいのか、考えられない。
もう一度命を落とせば、前に戻れる?
命を落として、異世界に転生したのに。
この世界には存在する魔法を使えば、転移可能?
転移したところで私は「わたし」ではなくなったのに、家族になれるのか。
あちらの世界から、家族を転移させる?
彼らの今ある生活をすべて奪ってまで、私といることが幸せなのか。
私の勝手な思いと、最愛の人たちの思いが重なるとは限らない。
一度なくなったものは、戻らない。
そのまま同じなものは何もない。
私は「わたし」ではない。
私は……。
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