第24話 悪役令嬢登場?!
リュシアス様にエスコートされながら馬車に乗った。
伯爵家へ初めて来たときもそうだったが、イケメンとの密室は息が詰まりそうです。
ただでさえ、ドキドキが止まらないままなのに。
追い打ちをかけてくるこの空気に、気を失ってしまうのではないかと心配になってくる。
……お願いです。そんなに見つめないでください。
穴が開きそうです。いや、もうどこか開いているかもしれません。
どこかから、私が漏れ出ているのではないか。
幽体離脱~!
違うからっ!!
こちらをずっと凝視しているのはわかっているが、目線を合わせる勇気がない。
窓の外の移ろう景色を眺めてやり過ごす。
……やり過ごせてないから、こんなに荒れているのだけど。
ちらりと目線をやれば、すぐにリュシアスの笑みが深まる。
そんなことを繰り返していれば、固まってしまうのは仕方がないのだ。
え。リュシアス様ってメドゥーサの目だったの?
……そんなわけない。
いや。まさしく素晴らしい魔法使い様ではあるので、もしかしたらそういう術をかけるのは容易いのかもしれないが。
魔法が使える者でなければ、魔法についての知識を得ることはできない。
どんなことができるのかは、一般ピーポーな私には未知数すぎる。
そう。前世同様に、魔法については
はぁ。現実逃避もここまでか。
どうしても、目がリュシアス様に吸い寄せられてしまうもの。
また、ちらりと目線を向けてしまう。
本当にかっこいい。
正装した姿は一段と男前な仕上がりだ。
ロング丈の上衣は
白のシャツに、
彼と私の色を合わせてまとったよう。
……ドレスに合わせてくれただけよ。そうよ。
もうイケメンなのは、鉄板なのでいいです。
のーさんきゅーです。
早く着いて~! 早く終わって~!!
間もなく到着したが、永遠に着かないかと心配するくらい長く感じられた。
一気に老け込んだような心持ちだ。
いや、私まだ15なんだけど……。
リュシアスが先に馬車を降り、手を伸ばしてくる。
「さぁ、お手をどうぞ。お姫様。」
王子様きたーーー!!
いや。我が国は王政で、王も姫も存在しますから、不敬極まりないですよ。
お願いだから、控えてください。
「ふふ。姫なんて畏れ多いですわ。エスコートありがとうございます。」
「ティアーナは私の姫だから、間違いではないよ。では、いきましょうか。」
白い手袋をしたリュシアスの手をとり、ゆっくりと馬車を降りる。
伯爵様ではありますが、あなたは紛れもなく王子様です。
エスコートを受けながら、会場へと進む。
中からガヤガヤと話声が聞こえ、もう大勢の人が会場に訪れているようだ。
はぁ。やっぱり緊張するな。
こっそりうつむきながら、一度ゆっくりと深呼吸をする。
「緊張していますか?」
ささいな動きだったが、リュシアスにはその緊張が伝わってしまったようだ。
「わかりましたか?
そうですね。社交界に出て間もないですし、慣れていないものですから。
それにあなたが隣にいるので、余計に緊張してしまいますわ。」
「そうか。だが心配することはないよ。そんなに大規模な会ではないし。
隣に私がいるから、いつでも頼ってくれればいい。今夜はティアーナから離れないと誓ったからね。」
いや。聞いていますか、人の話。
あなたがいるから不安なんですよ。
確実に他の女性に睨まれるんだから。
「……そうですか。では頼りにしていますわ。リュシアス様の側を離れませんから。」
「ふふ。そうしてくれ。では、中へ行こう。」
嬉しそうに微笑まないで。
今から戦闘態勢に突入しなければならないのですから。
気を引き締めていきますよっ!
会場に足を踏み入れた瞬間、周りの音が一瞬静まった。
大衆の目が一様にこちらを見つめている。
うぅ……っ! 予想はしていたけど、思ってた以上よっ!!
胃が痛くなってきた……。
来たばかりなのに、もう回れ右して帰りたい衝動に駆られる。
皆からの注目を浴びながら、リュシアスにエスコートされてなんとか歩を進める。
「まずは、招待を受けた伯爵に挨拶に伺おうと思う。」
「……はい。」
頑張れ私。
自分を鼓舞して、何とか視線をやり過ごす。
「リュシアス様っ!!」
突然声がして、そちらを向くと一人の女性が近づいてきた。
真っ赤なドレスを身に纏った、妖艶な美女だ。
大きな緑色の目はやや吊り上がりぎみで、目力に迫力がある。
胸元が大きく広がったデザインのため、たわわな胸が協調されて視線が釘付け。
それを支える腰はきゅっと引き締まって、ほっそりとしている。
だが綺麗な赤髪は、まさかの縦ロール!
この出で立ちは、まさしく悪役令嬢ではないかっ!!
わぁ~。まさか生で見られる日が来るなんてっ!
ドリルすごいっ!
攻撃性高そうな髪だわぁ。
ん? まって。もしかして攻撃されるの……私?
いやだーーーーっ!!
逃げてもいいですかー?!!
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