第14話 移ろう景色
あれから。
みんなでドハマりしました。紙飛行機。
「楽しいっ!」
「これはどう?」
「こっちの形のほうが飛んだよ!」
「この角度で飛ばすのがベストかも!」
しばらくはオーソドックスな形の紙飛行機を飛ばして遊んだ。
上へ向けて投げてみたり、少し角度を斜めに投げてみたり、あえて下に力いっぱい投げてみたり。
自分が回転しながら紙飛行機を投げ飛ばすという、果たして効果的なのか謎な行動まで。
一通り投げ方を工夫し終えたあとは、紙飛行機自体を改良することに。
先端部分を折り曲げたり、羽の部分を立てて折ったり、まったく違う形のものまで作ってみた。
それからはまたさまざまな投げ方で飛ばす。
競い合ってみたり、相談しながら飛びそうな紙飛行機を折ったりとエンドレスで続く遊びに、時がたつのをすっかり忘れてしまった。
ふと気が付くと、床に溢れかえる色とりどりな紙飛行機の山。
……やりすぎ?
楽しかったからなぁ。仕方ないよねぇ。
子どもたちも楽しんでくれているようだし。私も我を忘れて楽しんだ。
子どもの遊びとかっていうけど、大人も一緒に遊んでこそよね!
双子ちゃんとの最初の遊びとして、紙飛行機はいい選択だったなぁ。
でも溢れかえっている紙飛行機をみると、そろそろ止め時かしら。
「こんなにたくさん作りましたねぇ。よく飛ばせるようになって楽しかったですか?」
「うん!」
「とっても!」
「それはとてもよかったです。折り紙を準備した甲斐がありましたね!
ですが、床に溢れかえって踏み場もなくなりそうなので、本日はそろそろおしまいにいたしましょうか。」
「えー。まだやりたいなぁ。」
「このまま終わりは少し残念ですわねぇ。」
「あ。いいこと考えた! マルティ耳かして。」
ラファエルくんが何か考えついたようです。
マルティアリスちゃんにこそこそと耳打ちをして相談しています。
内緒話している様もかわいい……!!
「それはいいですわね! ラファやりましょう!」
二人とも顔を見合わせながら、満面の笑み。
ふふ。微笑ましい光景だわ。
何をするんでしょうか。わくわくどきどきしますね。
「ティアーナさま、よーく見ててくださいね!」
「まばたきしちゃいけませんよ!」
「「せーの」」
バタン!
突然大きな音とともに、窓が開いた。
外はどんよりとした曇り空だ。
もうすぐ雨が降るのか、湿っぽいにおいが漂ってきた。
すると今度はふわりと紙飛行機が次々と床から浮かんでいく。
紙飛行機が動きだして一斉に窓のほうに向かい、そして外へと飛び出した。
弧を描いたり、波うつように飛んでいたり。それでいて一矢乱れぬ連携をとっているような動きだ。
色とりどりな紙飛行機が飛んでいく様子は、まるで自由に空を舞う鳥のよう。
ふと七色の虹がかかったようにみえた。
「きれい」
一筋の涙が頬を伝った。
彼を失くしたあの時と同じような空。
一人で必死に子育てした10数年。
朝日が昇って沈んで、変わらず回る地球。
変わらず流れる時。
立ち止まることはできなった日々。
でももしかしたら私はあの時のまま、あの曇り空の下でうずくまったままだったのだろうか。
私ののぞむ彼の手はどこにもなくて。引っ張って連れ出してくれる人はいなくて。
でもやっぱり変わっていくのだ。
どんよりしている空にも、きれいな鳥が舞って。
雨が降っても、いつか晴れて虹がかかる。
景色は移ろう。
美しいと感じる心がある。
――――あぁ。私は生きているんだなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます