一章 一節 二項
ギルド加入を目指せ
――随分な無茶、言ってくれやがる。
ジャッカル曰くの解決策とやらを聞いた翌日。
俺はそんな愚痴を小さく呟きながら、あてども無く町を歩いていた。
ギルド。ゲームやファンタジー系のアニメなんかじゃ耳馴染みのある名前だが、平たく述べてしまえば職業別の組合組織だ。
仕事を斡旋したり、新入りを先達に師事させて人材を育成したり。国という括りを越え、そんな感じの活動を広く手掛けてる集団。
昨晩、受けた説明を繰り返すなら、加入すればそのギルドが根を張る国家への出入りをスムーズに行える手形兼身分証が発行される、らしい。
なるほど。その身分証が欲しい俺達には打って付け、渡りに船。
……なんて喜ぶとでも思ったか、アホのジャッカルめ!
世の中、お前達みたいな埒外人間ばっかりじゃないんだよ!
西方連合には、大きく分けて四つのギルドが存在する。
まず傭兵ギルド。読んで字の如く、魔物退治や商隊の護衛なんかを請け負う腕っ節ありきの組織。殉職率がどれくらいか、聞きたくもない。
次に商人ギルド。
三番目は職人ギルド。多くの職人を雇い入れ、作らせた製品を買い取り、販売する組織。こっちも結構な闇を感じる。
最後に探索ギルド。大陸各地に残る旧時代の遺跡――要するにダンジョン――へと潜り、発掘した出土品の鑑定及び換金や売買を一手に執り行っている組織。もう闇しか感じない。
なんか闇深な印象ばっかだけど、そもギルドなんてのは俺がイメージする限り、封建制による悪しき産物。利権の独占を狙った制度に他ならない。
なにゆえ議会制、恐らく民主主義寄りである筈の西方連合にまで蔓延ってんだ。即刻解体しろ。
…………。
などと文句を垂れ流したところで始まらない。ぶっちゃけ民主主義とギルド制との噛み合わせなんて俺には分からんし。
第一、重要なのはギルドの実態よりも身分証だ。
入るまでが目的。入ってしまえば、こっちのもの。
が、俺の場合、その加入こそ最大の難関。
当然である。つい数日前まで日本で暮らす高校生だった俺に、どうしろと。
傭兵? 切った張ったが日常茶飯事の野蛮極まる血生臭い稼業なんて絶対ヤダ。
職人? 正式加入が認められる、イコール一人前になるまで何年かかると。桃栗三年柿八年って諺を知らねぇのか。
探索? 異世界モノの定番極まれりだが、登録の際そもそも身元照会が必要となる。旧時代の遺跡には遺産と呼ばれる、頭に超が乗るほどの貴重品が多々眠っており、誰彼構わずでは盗掘者を招くのと変わらんそうな。
あと侵入者避けのトラップが満載だったり、凶暴な魔物が棲み着いていたり、事と次第によっては傭兵以上の危険が伴うらしい。
トドメに登録申請を受け付けてくれる探索ギルドの支部自体、アルレシャには無い。
故、消去法で残る選択肢は商人ギルドのみ。
ここなら他みたく一定期間仕事を請けなかったりノルマを捌けなかったり成果を出せなかったら除名、なんて鬼の所業は非ず。ランク別の金さえ納めれば、よっぽど下手な真似しない限り、あとは基本的に自由。
この辺も金次第とは、まさしく商人。分かりやすくて最高。
……月に一度の登録更新料が、屋台や露店営業のみ許可される最低ランクですら一銀貨という足元見まくりの高額でなければな!
払いが滞れば相応のペナルティを受ける。場合によっちゃ罪人扱いで投獄も有り得るそうだ。
冗談じゃねぇ。国境フリーパスの範囲は最も広いとの話だが、そんなリスクを負いたくはない。
…………。
ああ、全く。本当に、どうしたものか。
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