3-4

 次の日の夜、スタジオに行った。

「おつかれ~!」

「お~、お疲れ!桂吾、メガネって珍しいな~」笑いながら、大輝が言った。

「あぁ、徹夜しちまったから、コンタクト入らなかった」

「なんだ~?寝かしてくれね~女だったのかよ?」 

「アハハハハ!相変わらず、悠弥の発想はバカでいいな!

曲、作ってきたよ!だいぶ遅くなっちまったけど、宿題のラブソングできたから、とりあえず聴いてみてくれよ」


そう言いながら、楽譜を龍聖に渡した。

それを見て、これって……と、龍聖はつぶやいた。

仮歌をみんなで聴いて、聴き終わると大輝が、

「ギリ間に合うか?」

と、瞬に聞いた。

「あぁ、そうだな!今週中に仕上げれば、ギリだな!」

スマホの画面を見ながら、瞬が答えた。

「じゃ、急ぎでやるぞ!」

と、大輝がデカイ声を出した。


俺は、何も聞かされてなかったが、大手音楽制作会社のルピアーノ主催の、第1回アマチュアバンドコンテストと言うものがあって、1次選考がデモテープ審査で、それの締め切り期限が来週だそうだ。

ロックでも、ポップスでも、ジャンルは自由。

未発表曲で、“ラブソング”というお題だった。

これに、出してみようと、俺抜きの4人で2ヵ月前に話したそうだ。


「でも、ラブソングを桂吾が作れるのか?って、あんまりプレッシャーかけねーで、桂吾が作れたらやるし、期限内に作ってこなかったら、今回は見送ろって」

悠弥が説明してくれた。

「なんだよ!早く言ってくれよ!そんなの知らねーから、のんびりしちまったじゃん!」

「でも、待った甲斐があったわ!桂吾!これ、イケる予感しかしねー!」

大輝はそう言って、俺の肩を叩いた。

瞬は、早速ピアノで弾いて、楽譜に書き込んでる。

悠弥も、ベースのチューニングを始めた。

龍聖は、楽譜を手にすると、瞬のピアノの横に立った。

「桂吾!やるぞ!」


何小節かやっては、止めて、瞬が指示を出し、また、やっては止めてを繰り返した。


「粗いけどな、一旦通しでやってみようぜ」

と、大輝が言って、最初から通しでやってみた。

歌い終わると、龍聖はよろよろと俺の方へ来て、俺の肩にもたれかかった。

「桂吾、いい曲だよ」

と、ささやくように言った。

「龍聖、ありがとう」

俺も小さく答えた。

「だから!龍聖、ボーイズラブしてんなって!」悠弥がデカイ声で言った。

「2人の世界をジャマすんなよ!悠弥」

と、大輝が笑って言った。

「なんか、この光景見慣れたけど、キレイな男同士だと、見てても不思議と不快な気分にならないな!悠弥はやめとけよ」

と瞬が笑った。

「瞬!テメー、さりげなく、ディスってんじゃねーよ!」

「さてと!ふざけてね~で、続けるぞ!時間ね~からな!」

大輝がしめた。


それから、瞬とメロディーの手直しをしながら、それぞれのパート毎に、ソロの聴かせる部分を入れたり、各自練習をした。


 週末、みんな集まり、通しで何回かやってみた。

「よし、じゃ!頭からで!理彩子、録音よろしく!」

「おっけっけ!」


瞬のピアノソロから始まる、Realとして初めてのラブバラード曲、YO.I.Nが形になった。

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