3-5
瞬が、最大限のコネを使い、音響のプロにデモテープの音質をあげて作ってもらった。
必要書類の、バンドのプロフィールや、コンセプトなどを書いて、デモテープと一緒に送ってくれた。
「ギリギリ締め切りに間に合ったよ!」
「瞬、ありがとう!お疲れさん!」
みんな、口々にお礼を言った。
「締め切った後で、詳しい集計が出るんだろうけど、3000組くらいの応募があるんじゃないかって言われてる」
瞬が、説明してくれた。
1次選考のデモテープ審査で、200組程度に絞られる。
2次選考のスタジオ演奏で、10組に絞られる。
3次選考として、ホールでのライブ。
審査員が審査をするのは勿論のこと、観客を入れての、盛り上がり、ステージパフォーマンスが評価される。
優勝したバンドは、音楽制作会社ルピアーノと正式契約、プロとしてバンドデビュー。
CD発売が約束されていて、賞金50万円が貰える。
「賞金50万円は微妙だけど、CDデビューは超魅力的だよな!」
と、悠弥が言った。
「自画自賛かもしれね~けど、俺はイケると思ってる!
だから、2次のスタジオ演奏に向けての練習に入ろうと思うけど、どうだ?」
大輝が、1人1人を見ながら言った。
「いいと思うぜ!大輝!」
俺たちは、一心に練習に励んだ。
「そう言えばさ、桂吾が曲作ってくんの、あと3日遅かったら、もう間に合わなかったなぁ!
デモテープの期限とかも言ってなかったのに、なんであのタイミング?」
ペットボトルのミルクティーを飲みながら、大輝が聞いてきた。
「あぁ、突然曲が降りてきた!」
と、俺は笑って答えた。
「へぇ~!曲って降りてくんの?スゲーな~!
タイミングもばっちり!」
悠弥が、缶コーヒーを飲みながら言った。
「俺に内緒で、みんなで見に行ったってゆう、花屋のバイトのゆきちゃん覚えてるか?」
「おい!!悠弥!ばらすなよ!」
と、瞬が言って、笑った。
「なんで俺って決めつけんだよ!アハハ。
俺だけどさ!」
「彼女に会った」
「ゆきちゃん、何年ぶり?」
今まで黙って、ソファーで横になってた龍聖が聞いてきた。
「4年ちょいかな。男連れだったけどな。
で、彼女の曲を作ろうって思い立って、その日の夜に作ったよ」
ハハと笑った。
「えっ?ちょっと待って!
俺は、この曲って、あの例の海事件の子のことを言ってんだと思ってたんだけど」
と瞬が聞いた。
「アハハハハ!だから、その海事件の犯人が彼女だよ!」
「えーーっ!! マジか~?」
龍聖以外の3人が声を合わせた。
「龍聖だけは、もうあの頃気がついてたけどな。俺が忘れられないのは、彼女だけだから」
「マジかよ!」
「じゃ、あの子イメージしてやりゃ~いいんだな!」
「そっ!龍聖は、最初歌った時から、イメージ出来てたからな」
「あぁ!泣きそうだった!」
「アハハハハ!」
なんでだろ?
今まで、あれだけ彼女のことを思い続けてて、
なんで彼女へのラブソングを書こうとしなかったんだろ。
書くことが怖かった?
自分がこんなにも、彼女のことを忘れられないことを認めたくなかった。
そんな自分の本心をさらけ出したくなかった。
だけど、YO.I.Nを書いて、それから眠れなくて徹夜で4曲作ったけど、今までの自分じゃ考えられないくらい、素直な気持ちを書いた。
会いたい
忘れられない
戻りたい
愛してる
って、めちゃくちゃ恥ずかしい言葉並べて書いた。
だって、それが本当の気持ちだから。
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