1-29

 今日は、コンビニで酒と食い物買って、休憩だけの予定。


「悪いやつってさ~、目的は世界征服とか地球征服とかなんだけど、そのラスボス的なヤツは、不老不死とか、永遠の命を手に入れたいんだよね!」

「なんの話かと思えば、ヒーロー物の話な!」

真剣な顔で話はじめたから、笑ってしまった。

「桂吾は、永遠に生きられる力をあげますよって言われたら、もらう?」

「ありえね~質問だな~!考えたこともね~な!」

「私はね、自分が不死身な人になっちゃったら、切ないって思うんだよね。

例えば、結婚して、子供を生んで、自分は不老不死。

ダンナさんは死んで、いつか子供たちも死んで、それでも自分は生き続けてる。

親も妹も、同級生もみんな死んじゃって、それでも自分は生き続けてる。

それって、哀しくない?生きることに疲れちゃうような気がする」

「だな!俺もそう思うよ!やりたいことは、いっぱいあるよ!死ぬまでにやりたいことはな!

だけど、永遠に生き続けられんなら、モチベーションあがんね~な!

今じゃなくてもいいや!とか、そのうちでいいや!とかなりそうだわ。

だらけるってのかな。何かをがむしゃらに頑張るとかしないだろうな」

「花なんてさ、桜とかでも、咲いてるの1週間くらいだからね!1年かけて、芽を出して、蕾作って、たった1週間!

だけど、そうゆう儚さに人は惹かれるのかなって思うんだよね」

はかなさ……

「花火もそう!パッと開いてサッと消える。

その儚さが美しいんであって、あれが、何分もピカピカ、チカチカしてんなら、電光掲示板の灯りみたいなもんで、誰も見ないでしょ。

命には限りがある、だからこそ、美しいし、意味があると思うんだよね」

「アハハハハ!語るね~!おまえ、哲学的だな。ヒーロー物からの話の展開がスゲーな!

でも、今の話は、スゲーわかったよ。

ゴールがあるから頑張れるってことだろ?

永遠無限ループで、ゴールがないなら、まず走るのをやめるね!そうゆうことだな?」

「そうゆうこと」

「おまえ、こんなに喋るやつだとは思わなかったよ!海行った時なんて、一言も喋んなかったくせにな!」

「アハハ!私、人見知りなんだよ!馴れるまでに、相当時間かかるの。大体、第一印象、静かでおとなしい人って言われるよ」

「アハハハハ!まじで!そんな感じだったな!」

「少し仲良くなると、うるさい人って言われちゃう」

そう言って笑った。

「うるさい人とは、思わないけどな。

あっ、うちのバンドのメンバーにも、超がつくくらいの人見知りがいてさ、すげー無表情だから、第一印象怒ってるか、にらんでる人って言われるって。

でも、そいつ、俺とは話しやすいって言ってくれるよ」

「あぁ。話しやすい人なんだろうね、桂吾は。

海の次の日からガンガン話しかけてきたじゃんか!!

ちょっと最初どうしたらいいのか戸惑ったけど、ドンドン懐に入ってくんだよね!

バイト中だから、どこにも逃げられないしさ~!」

「逃げられないって!」

「1ヵ月くらいで、なんとなく馴れたのかな~」上を見て、思い出しているようだった。

「あぁ、そうだな!カクテル飲みに行きたいっておまえが言ってきたの1ヵ月後くらいだったな!」

「あ~そうかも!なんだか、だいぶ昔のことみたいに感じるけど」

「俺さ、初対面の人とでも、平気で話せるタイプなんだよね~!

だけど、おまえと初めて話したの、あの海の時だぜ。しかも、俺から話しかけてね~から!

おまえ、バイト入って2ヵ月間全く近づけなかったからな。シールドのパワー強すぎてさ!」

「シールドって何?」

きょとんとした顔をした。

「バリア張ってたよ!近づくな!って」

「え~~?」

「あっ、うちのバンドの人見知りも、近寄れない雰囲気を醸し出してるのかもなって言ってたけど、そうゆうことかもな。無意識に」

「へぇ~~そうなんだ!自分じゃわからないけど。どおりで、ナンパもされない訳だ~。

そもそも、自分からは話しかけないけど、話しかけられるのも、バリア張ってたら、なかなか人と知り合えないじゃんね!

桂吾みたいに強引な人とじゃないと、知り合いにもなれないじゃん!

バンドの人見知りの人と会ってみたいなぁ」

「あっ!ダメ!」

即答した。

「は?なんで~?」

「そいつ、いい男すぎるから!」

「アハハハハ!余計会いたくなるようなこと言わないでよ!まぁ、会いたいは、冗談だよ」

「冗談かよ!でも、マジでいい男!俺が女だったら、ぜって~抱かれたいもん!」

「アハハハハ!何?BLなの?そっちもいける系?」

「ちげ~よ!そいつと会って、おまえが抱かれたくなったら嫌だし」

「アハハハハ!何それ?アハハ。何の心配?

私 抱かれるのは、桂吾だけで十分だよ」


ハートを撃ち抜かれたなんて、陳腐な言い方だけど、本当にそう思った。


「おまえさ、天然すぎて怖いな!計算してるわけじゃね~のに、破壊力すげーわ!」

「何が?意味わかんないんだけど?」

ポカンとした。

彼女を抱きよせ、ギュッと抱きしめた。

離したくない。

心から、そう思った。


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