1-22

 1発終わり、タバコに火を着けながら、

「なぁ、おまえって不思議だよな~」

「何が?」

「俺たち付き合って、って、付き合ってねぇか!こうゆう関係になって、もう1年以上経つけど、俺のこと好きだとか言ったこと1度もね~じゃん!」

フ~~と煙をはいた。

「だって、けーごのこと別に好きじゃないし」

「おい!おい!はっきり言うよな~!

そうゆうの傷つくぜー!!

俺のファンの子とかさ、だいたい好きですってコクってくんじゃん!で、1回メシ行ったりして、気に入った子は喰っちゃうじゃん!あなたに抱いてもらえるなんて!みたいな感じで悦ぶわけよ!でも、その後が結構面倒でよ~!

もっと私のこと大事にして!とか、もっと私を好きになって!とか、他の女と別れて!!とか言い出したりするわけ。

最初からキミは遊びだよ!ってゆうと、泣いたりわめいたりしてさー!ホント女って面倒くせーなー!って思うんだよな!」

缶ビールをあけて、ひと口飲んで彼女に渡した。

「すっごい性格わるっ!」

「なのにさ~、おまえは全然そうゆう風になんないじゃん!俺にあんまり興味もなさそうだし。

じゃ、なんで俺とこうやって続けてるんかな?って。なんで、俺なんだ?」

これは、ずっとずっと聞きたかったことだ。

「なんでって……」

ビールをひと口飲んで、俺に返した。

「ただ、たまたま、けーごがそこにいたって感じじゃない」

「たまたま、そこにいたって、野良猫みたいな言い方だな?アハハ」

「そんなこともないけど。たまたま……落ち込んでて、寂しくて、あぁ海が見たいなぁって思って、ふっと顔をあげたら桂吾と目があった。で、」

「海を見に行きませんか?だもんな!」

「うん、そう」

「海を見に行きませんか?って、新しい口説き方だな~って思ってさ、あぁ、いいよ!って俺の車で行くことになったじゃん!着くまでの間、どうゆう話をしてくるのかなって思ってたら、おまえ全然話してこね~んだもん!

何だ?って思ったよ」

ビールを飲み干した。

「私はさ、ただ海に行きたかっただけだからさ、けーごに好意を持ってた訳じゃないし、だからタクシーに乗ったみたいなもんだったんだよね~!今考えると失礼だね!ちょっと。アハハハハ!」

「ちょっとじゃねーよ!スゲー失礼なヤツだな!何がタクシーだよ!」

「ゴメン!ゴメン!」

彼女は缶ビールをあけて、俺に渡した。

「私は、車の中でもずっと違うことを考えてた。で、海に着いて、真っ暗な冬の海。

寒くて、風が強くて、波が荒くて、ザブーンザブーンって、波の音しか聞こえなくて、怖い感じだった。

のみ込まれそうだな……のみ込まれてしまいたい……そんな風に考えてたら、バッシャーン!!ってさ!

アハハハハ!けーごが海に落ちてんだもん!

すごいビックリしてさ~!アハハハハ!

ちょっと結構な崖のとこで!アハハハハ!

なんで落ちたの~?」

「アハハハ!!笑いすぎだよ!」

軽く頭をゴツンと叩いた。

「俺、目がわり~からさ、暗くてどこまでが岩なのか、よくわかんなかったんだ。しかも、革のブーツが滑ってなー!

ひで~目にあったよ!マジで!」

「私も、どうしよう!!って!

今は笑ってるけど、その時は笑えなかったよ!

けーごが自力でなんとか這い上がってきたじゃん!手とか擦り傷だらけで。

ごめんなさい!って、本当にごめんなさい!って思ったよ。

私が海に行きたいなんて誘ったからだって」

「冬の海!すっげー冷たかったぜ!冷たいってゆうか、すげー痛かった!もう、2度と海行きたくね~って思ったよ。

俺、ぜって~トラウマだわ!」

「ゴメン……」

「まっ!それで!びしょびしょだし、寒いしでホテル入ったんだよな。それがおまえとの初めてだったな」

「よく覚えてんじゃん!」

「他の女と初めてやった時のことなんて、ほっとんど覚えてね~けどよ~!おまえは、衝撃的だろうが!!」

「だね!ごめん。生きててくれて、ありがとう!」

「バーカ!そんな簡単に死んでたまるかよ!

とにかく、あれから1年こうやって何回もHしてるけど、俺にホレないわけ?いつになったら、俺にマジになるかなーって思ってんだけど」

本心を言ってみた。

「何それ?アハハ。マジになられるのは、面倒くさいんでしょ?

じゃ、いいじゃん別に、今のままの関係で。けーごに彼女がいたって、遊びの女がいっぱいいたって、どうでもいいって思ってるから私」

「ふ~ん……それもなんか、ビミョーに寂しいんだけど……」

そう言って前髪をいじった。

「じゃ、」

彼女は起き上がり、俺の方に体を向けると

「けーご、大好きよ!もう1度抱いて!!」

と、かわいい声で言った。

「バーカ!!そんなんウソくせーよ!」

そう言ってキスをして、俺たちはまた抱きあった。

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