1-8

 悠弥から電話がきて、2人で知り合いのボクシングジムに行った。

悠弥は、なんだかイラついていた。

久々に、リングに上がって、スパーリングした。

おもいっきり顔面にパンチをくらって、カチンときた。

俺も、顔面にお見舞いしてやった。

リングから降りると、ジムのスタッフの人が保冷剤を持ってきてくれた。

「すぐに、冷やしときなよ!」

「さーせん!」

2人で声を揃えた。

「おまえ、顔殴ってんじゃね~よ!」

と、俺が言うと、笑いながら

「確かに!でも、その後2発も顔面殴り返してんじゃね~よ!」

と、悠弥が言った。

「倍返しだよ!で?何荒れてんだよ?」

と聞いてみた。

「瞬!!あいつ、ムカつかね~!?」

「なんだ!瞬か!レッスンしろってか?」

「あっ?聞いてる?」

「ってか、俺も明日からバイオリンのレッスン開始」

「マジかよ?なんでバイオリン?ギターじゃなくて?ギターは、自分がやるから、おまえはいらね~ってことかよ!」

声を荒らげて言った。

「まぁ、そうかもしれねーけど、俺はいいきっかけもらったと思ってるよ!

まだ、先になるだろうけど、いつの日かの為に今からやっとくって、背中を押されなきゃできねーから」

「あいつ、何様だよ?上から語るなって感じ!」

「まぁな。自分にも人にも厳しいんだな、瞬はさ。

でも、悠弥のベースはいいよな~って、いつも言ってるよ。

だけど、自分流みたいなクセがあるから、それ直した方がいい音出そうな気がするんだけどなぁって」

「それが、上からだっつーの!ベースやったことねーのに、口出すなよ!」

悠弥は、だいぶ本気でキレていた。

「ってゆうか、悠弥誰かに教わったことある?」

「は?ねーけど!!兄ちゃんやってたのを真似してやったら、普通に出来たって感じ」

「だろ!今更だけど、基本教わった方がいいぜ!その方が音の幅が広がるんじゃね!」

俺がそう言うと、悠弥は露骨に嫌な顔をした。

「お前は、俺の味方だと思ってたんだけどな」

ガッカリした言い方だった。

「味方だよ!マジ友だからな!だから、言ってんだよ!瞬の言ってることも、スゲーわかる!

バンドのスキルアップの時期なんじゃね?今が。あいつ、プロを目指してるから」

「プロ?バンドに見切りつけて、就職したんじゃね~のかよ?」

「じゃなくて、プロになるための、練習場所と金の確保だよ!俺らの為の。

それで、俺らとこのバンドでプロデビューしたいんだってよ!」

「マジかよ?瞬、そんなこと俺には全然言わねーけど」

「おまえは、高校の時からずっとプロ!プロ言ってたじゃん!だから、目指すところは一緒って思ってんだろ」

「ふ~~~ん。くせか~~~。自分じゃわからねーからな!!レッスンしてみっか!」

笑って言った。

「あぁ。瞬にベースのレッスン予約頼んどくよ!」



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