1-2

 「海を見に行きませんか?」


えっ!?

初めての会話がこれって?

つまり、俺を誘ってんだよな?

「あぁ。いいよ」

と答えた。


この子が、向かいの花屋のバイトに入って2か月経つけど、“おはようございます”と、“お疲れ様です” しか言われたことなかった。

俺からも話しかけることはなかった。

なんてゆうか、別世界の人って感じがしていた。

無意識かもしれないけど、これ以上近づくな!ってシールドをはってるような感じだった。

見た感じ、大人しそうなお嬢さんタイプ。

でも、接客は上手くて明るくニコニコしてテキパキ仕事をこなしてる。

かと思えば、俯いて物憂げな表情で花を見つめていたりする。

なんだか、とても気になっていた。

でも、シールドのパワーが強くて、すれ違う時や休憩室で会った時に、お疲れ様ですって挨拶を交わすくらいだった。


別に美人ってこともない。

特別、可愛いってこともない。

ものすごく胸やケツがデカイわけでもない。


『普通』


そう、本当に普通なんだ。

俺の周りは、結構いっちゃってる系が多いから、こうゆう普通な人との接点が全くなかった。

だから、どう接したらいいのか、わからなかった。

この2か月の間、バイト先で毎日顔を合わせるこの子のことが何故か気になっていた。

そんな時に、

「海を見に行きませんか?」

って、突然の誘いに、俺は柄にもなくだいぶ狼狽えた。

「あぁ。いいよ」

クールに言おうと思ったが、うわずって赤面した。


バンドのミーティングを初めてすっぽかした。

とゆうか、10時からのミーティングだったから、ちょっと遅れて行けるだろうって思ってた。だから、大輝に遅れるって電話しといた。


バイトが終わり、待ち合わせの場所に車で行った。

「すみません。お願いします」

彼女はそう言って俺の車に乗り込むと、窓の外をじっと見て、あとは全く喋らなかった。

この状況に、俺は動揺した。

普通、こういう場合、女の方がいろいろしゃべりまくる。

自分を可愛く見せたかったり、アピールしたかったりで。

それか、俺に質問しまくるか。

どっちにしろ、女ってゆうものは大抵おしゃべりだ。

それなのに、この子は窓の外を見ている。

俺から、いろいろ話しかければいいのか?

話しかけてくるのを待ってるのか?

いや、逆に話しかけないで!って感じだけど。

誘っておいて、なんだよ!?

そんな静寂に堪えきれず、車の中をハードロックの爆音でごまかした。


一時間ちょっとのドライブ。

ようやく海に着いた。

辺りは、人影もなく、真っ暗だった。


“”わぁー!海~!“” なんて、よく女がやる喜んだ感じは全くなくて、車から降りると、天を仰ぎ、目を閉じた。

風が強くて、ザブーンザブーンって荒い波が岩に打ちつける音だけが響いていた。

長い髪をなびかせながら、彼女は一歩二歩と崖っぷちへと歩いて行く。

そんな後ろ姿を見ていたら、自殺する人って、こうゆう感じなのかな?って発想が頭を過った。

まさか!!

まさかだけど!

止めなくちゃ!

慌てて走った!

そしたら、落ちた!!

なんで、俺が落ちたのか、よくわからなかった。

ブーツが滑って、転ぶ!って思ったら、海にダイブしてた。

俺は、水泳は得意だ。

だけど、それは今全く関係ない。

服を着たまま、真冬の海。

真っ暗闇で何も見えない。

荒れる波間を必死にもがいて、どうにか崖を這い上がった。


「ごめんなさい……本当にごめんなさい……わたしのせいで……」


泣きながら彼女は俺に抱きついた。


「濡れちゃうよ……ってゆうか、マジ寒すぎ!とにかくこれ脱ぐわ!」


ガタガタと震えながら、濡れた服を脱いだ。

車のトランクをあけると、スエットのズボンとシワシワな状態のいつか着たであろうTシャツとビーチサンダルがあった。

ノーパンでスエットをはき、Tシャツを着ると、彼女は自分の着ていたコートを脱いで、俺の肩にかけてくれた。

サイズ的に着れそうにはなかったけど、ウールのロングコートがかけてるだけでも暖かかった。


「本当にごめんなさい……」

彼女は泣いていた。

「いいよ。大丈夫だから」


車に乗って暖気した。

さっきまでのガタガタもなくなって、やっと落ち着いてきた。

びしょびしょの髪からポタポタと水滴が落ちている。

彼女はタオル地のハンカチを出して、俺の髪を拭いてくれてる。


無性にキスしたくなった。


このまま真っ直ぐ帰れば、ちょっと遅れたくらいで、ミーティングに行けるはずだ。

だけど、俺は

「すげー寒いし、風呂入りたいんだけど、ラブホ入っていい?」

と聞いた。

「えっ?」

彼女は髪を拭く手を止めて、

「うん。いいよ」

小さな声でそう言った。

責任を感じてる彼女の弱みにつけこんだ。


一番近くにあったラブホに入った。

ありきたりな感じの部屋。

風呂にお湯を入れて、

「風呂一緒に入る?」

って聞いてみた。

彼女は、まさか!って顔をして

「いい!」

と首を振った。


風呂に入ったら、やっと生き返った感じだった。

真冬の海 心臓麻痺で死んでてもおかしくないし、どう落ちたのかもわからないけど、打ち所が悪きゃお陀仏だろ。

必死だったから、わからなかったけど、すげーあちこち擦り傷だらけじゃん!

あと、アザだらけ。

マジでひで~目にあったな~!

そんなことを考えながら風呂からあがると、彼女がポツンと立っていた。

まるで、反省して立ってろ!と怒られた子供の様に。


俺は彼女に歩み寄って、

「さっき海で抱きしめてくれたの、すげー暖かかったよ!もう一度、抱きしめてくれる?」

と聞いた。

彼女は何も言わず、言われるがまま、俺に抱きついた。

そんな彼女にキスをした。

キスをしたまま、ベッドに横にして、ボタンを外してブラウスを脱がせた。

俺はいつになく、興奮した。

彼女は、怯えているような、怖がっているような感じで、ギュッと目をつむっている。

まさか、初めてじゃないよな?って思ったけど、聞かなかった。

透けるように白い肌。

胸の下くらいまである長い黒髪。

すげーエロいな。

とにかく、締まりがよくて、超気持ちいい。

相性最高じゃね!って思った。

どのくらいやり続けていたのか、果てると、そのまま眠りに落ちてしまった。


 朝、目が覚めると彼女は、俺の腕枕で眠っていた。

無防備かよ!

しばらく、寝顔を見ていたら、またムクムクとやりたくなってきた。

あそこを触ってみると、まだ濡れている。

俺は慌ててゴムをつけて挿入した。


彼女は、ぼんやりと目を覚ますと

「おはよう。昨日は、本当にごめんなさい……」と言った。

「全然大丈夫!お陰でこうしてお前とセックスできた!」

そう言って腰を激しく動かすと、彼女は昨夜より色っぽい声をあげて喘いだ。





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