第13話:元引きこもりの戦い

 さて、魔力も才能もほぼほぼ0であると言うことが分かった訳だが、諦めるのは終わってからでいいのだ。

 そもそも聞けば、魔法使いになるのは高等教育を受けた幾らかの人間だけと言う話ではないか。

 最初から期待なんてしていなかった。

 そもそも無理があったのは考える前から薄々気付いていたではないか。

 多分、悪意なく驚くドレリアさんには何の罪もない。

 ただ少しだけ見たことがないほど魔力がないと言う発言にイラッときているだけだ。

 分かってる。落ち着け。


 絶望に近い現状を目の当たりにして何とか心を落ち着ける俺に、グゼルがニヤついた笑みを貼り付けて俺の肩に手を回す。


 「魔力欠乏症、魔力維持障害、もしくは「エルフ」族の精霊魔法使い。いくつか心当たりがあるが、一番あり得そうなのが今の今までほとんど一切「魔力や精霊に触れない」環境で育って来たってこったな。欠乏症も維持障害も魔力が「ない」わけじゃねえ。一切魔力に触れないって言う「異常」な状態で生活していたなら……ありえるかも知れねえぜ」


 心当たりしかない。

 地球には魔力も精霊もないとは限らないが、あるいはその可能性も高いだろう。

 事実としてその状況と俺の状況を照らし合わせれば、地球というこの世界からしたら異常な環境で育った俺は、魔力に対して体も頭も何一つ知見がないと考えるのが自然なのか?


 「魔力がなくたって死ぬわけじゃねぇ。精々魔獣に襲われ辛くなるのと、根源魔法以外使えないくらいのこったろ。剣士なら関係ないな」

 「根源魔法?」

 「自分の命を削る魔法だ。基本的にはな」


 俺の疑問にドレリアが答える。

 自分の寿命を削る……例えばそれで自分の寿命を全部消費したとして、リスポーンの能力は働くのだろうか?

 それとも根本的な死って判定になって普通に死ぬ?

 だめだ、死ぬ可能性がある以上安易に試すこともできない。

 攻略サイトが欲しい。


 「とにかく、魔力も才能もゼロってのは相当異常な環境にいたってことだ。良かったな、記憶を取り戻す手がかりを得たぞ」


 グゼルは組んだ肩を離すと、俺の背中を叩いてまた寝に戻った。


 「まあ、グゼル先輩は基本的に興味のないことには徹底的に興味がない。反対に興味を惹かれた相手には徹底的に興味を満たそうとする。気に入られたと好意的に見ておけ」

 「は、はい」


 意外なイベントだったが、ひとまず魔力検査はこれで終了のはずだ。ならば次やるのは……。


 「よし、切り替えよう。次にやるのは武術試験だ。すでに大波乱だが、武術試験ではそれぞれの武器を使って武術を見せてもらう。とはいえ的や案山子が置いてあるわけじゃない」

 「……?それじゃあ何を」

 「かかってこい、という事だ。安心しろ、矢は掴み取るし武器も壊さないようにしよう。そのくらいの手加減は出来る」


 その発言を聞いてブックが一歩前に出る。

 その顔には挑発的な笑みが浮かべられており、見るからに「一泡吹かせてやる」と考えていそうだった。それにを見て弟のセクは楽しそうに笑っている。


 戦いは唐突に始まった。

 ドレリアの目の前で唐突に破裂音が響き、同時に高速で水が飛び出す。

 ドレリアはそれを余裕ある動作と面持ちで避け切ると、ブックの方を向いて煽るように手招きをした。

 なるほど、変態なだけで他は普通の人だと思ったが、彼もやはり魔狩という化け物集団の一員なのだと理解した。


 一歩誤っていれば大怪我は免れなかった攻撃を受けて笑っている。

 俺はそれを見て価値観の違い以上の底知れない恐怖を感じずにはいられなかった。

 それと同時に身震いが起こる。

 何度思ったかわからない。

 しつこいぐらいに押し付けられてきた高揚感。

 ゲームでしか知らない魔法が目の前で惜しげもなく繰り広げられ、神がかった速度の動きをする剣士の美しい姿がこの目に焼き付く。

 ラードの戦いでも思った事。

 何度見たって心臓はバクバク高鳴ってしまうモノで……


 数十回目の破裂音の瞬間、数分の戦いののち、水の爆発がドレリアの頬に小さく切り傷をつけた。

 ドレリアの剣が一瞬乱れ、それを仕留めんとブックが手を前に差し出して、ドレリアの方に向けた。

 その瞬間、今までで最大の破裂音が今までで最多の回数鳴り響いた。

 おそらく6回ほど連続で破裂したのだろうか。

 しかし体勢を崩したドレリアは、その脅威的な体感で寝っ転がるようにしてそれを完璧に避け切った。


 ブックは視界が若干水で遮られていた事とドレリアが倒れ込んだので、勘違いして一瞬目と攻撃の手を緩めた。


 その瞬間、戦いが動いた。

 避けに徹していたドレリアが剣を空中に放ると左手で添えて鞘に放り込む。

 一瞬の隙をついて瞬間。ドンと低い音を立てて踏み込んだ。

 それにセクは小爆発を起こすことで防ごうとするが、急ごしらえした破裂は今までほどの威力はなく、俺が気づいた時既にドレリアはブックの目の前に立っていた。

 涼しい顔でブックの首に首に剣の腹をあてがっていたドレリアは、その顔に降参の意を感じたのか剣を収めて言った。


 「まぁ、ストレート勝ちは難しくなかったがそれでは試験にならないのでな。こういう戦術もあると覚えておくといい」


 見ると、先ほど怪我していた頬からはもう血が一滴も出ておらず傷も塞がりかけていた。

 なるほど、回復まで織り込み済みのフェイクの怪我。

 研鑽を積んだ先にある咄嗟の判断に俺は感嘆した。


 「ねーちゃん完敗じゃん!大敗じゃん!完全敗北じゃん!」

 「うるさいぞ!ちょっとばかし調子に乗ってたのは認めるけど何回も言う必要ないだろ!」


 嬉しそうに飛び跳ねる二人を見て、ドレリアが剣を鞘に仕舞って鞘にしまってセトの方を向いた。


 「さて、お前が次か?」

 「そうだ!そうなのだー!」

 「アタイが負けたからって負けは許さんぞー!」


 ニシシと楽しげに笑う二人を若干呆れながら見つめると、ドレリアはセクに言った。


 「いつでもかかってこい。さっきと同じだ」

 「ほう、俺はねーちゃんと違って感覚派じゃないからな。なめちゃ痛い目見るぞ!」

 「なめてなどいないとも」


 ドレリアがニヤリと笑う。

 それとほぼ同時か一瞬早くか、セクはゆっくりとした動作で、しかし芯の通った動作で剣を上段に構えると、そのまま降りる力に任せて思い切り振り下ろした。

 ドレリアはそれは最小限の動作で受け流すと、無造作に右側から首に向かって剣を振り下ろそうとして……。


 手首を返して振り上げられた剣を弾いた。

 その光景に俺は一瞬目を疑った。自分の身の丈ほどもある大剣を腕力だけで振り上げてのけたのだ。

 しかもすごい速度で剣を振り下ろしておいて……だ。

 地面にぶつかるすれすれで上に高速で振り上げられた大剣を咄嗟に弾くドレリアも、勢いのついた大剣を重力に逆らって振り上げるセクも両方化け物じみている。


 しかしセトの猛攻はそれでは終わらない。

 ドレリアはセトの剣の軌道を若干読みあぐねている……いや、読めていたとしてその力に若干押され気味に見える。


 十数秒か、数十秒か。

 いくらか時間がたったが、防戦一方なはずのドレリアに疲労は一切感じられず、対してセトは若干息が上がり始めている。

 一回大剣を振るう毎に、セトは掛け声を上げて自分を鼓舞してはいるものの、ドレリアから感じられる圧は相当なものだろう。


 ふと、大剣の軌道がブレる。

 セトの疲労によるものでも、不調でも、ましてや偶然でもない。

 いや、それらの要素が含まれていたことは否めないのだが、しかしそれはあまりにも華麗な受け流しだった。

 勢いよく放たれた必殺の威力を持つ横薙ぎだったが、ドレリアはそれを剣先で叩いて上にそらして、そのまま大剣の鞘と剣先を回す。

 勢いに振られてセトが大剣を手放し、数秒宙を舞った後音を立てて地面に落ちた。


 「試験は終わりだ、なかなか筋が良かったがまだまだだな。剣の扱いが雑すぎる。今はそれで通用するかもしれんが型を学んだら化けるぞ」

 「はっはっは!やはり姉を超える弟はいないと言うこったよ!」

 「ねーちゃんうるさい」


 今でこそ楽しげに騒いではいるが、彼らの実力は相当なものだった。

 て言うかあれで子供でアマなのだから驚きだ。

 彼等のパーティがどんなものになるかが非常に興味がそそられる。

 魔法と力の合わせ技。昔からの王道コンビネーション。

 うまく役割分担ができているものだ。


 「よし、次だ。誰がやりたい」

 「じゃ、じゃあ私がやりたいなー、なんて」


 次の挑戦者に名乗り出たのはロックウェルだった。


 「いいだろう、かかってこい」


 返事を聞くと、ロックウェルはそれに巻かれた布を外す。

 布の中から姿を現した長い柄と長い刃。俺はその形状を何度か目にしたことがある。

 漫画などでよく見る武器……


 「薙刀か」

 「なんだ?その武器は。変わった形をしているな」


 ドレリアが武器の形状を見て不思議そうに首を傾げる。

 薙刀はこの世界で、少なくともこの国では広く浸透しているわけではないらしい。


 「北方の武器で……戦闘職従事者にとってはとても有名な武器です……」

 「そういえば北方からの傭兵団という奴に、同じような武器を持っている奴がいた気がするな。お前は北方出身なのか?」

 「生まれは……北方で、こっちに来てからだいたい14年くらい、です」

 「どうりで北方訛りがないわけだ」


 ドレリアは納得したように頷くと、すぐに顔を切り替えてロックウェルに向かい合う。

 ロックウェルもその立ち姿を見て、たじろぎながらも武器を正面に構えた。

 薙刀を腰に当てるように体と垂直して構えると、その状態でドレリアと睨み合う。


 じりじりと間合いをとり、ドレリアの間合いから引いていく。

 ドレリアは剣を抜いてはいないが、それは油断ではない。

 先ほどから見せていた剣を抜く瞬間の不意打ち。

 一番目に入ってない箇所からの急襲は、セクへの決め手になった攻撃だ。


 「さて、そちらが行かないならこちらから行くぞ」


 ドレリアは律儀に宣言すると、ロックウェルの間合いの中へと飛び込んでいった。その手には腰の剣とは違う短剣が握られていた。

 胸にしまっていたのか!

 完全に意表を突かれたロックウェルはしかし、すぐに短剣への対応を見せた。

 薙刀の先で短剣を弾く。

 しかしドレリアはその程度で短剣を手放すほど甘くなく、たじろぐこともせずに短剣を手首で返して薙刀の柄に短剣の腹を「カンッ」と当ててそのまま月技を繰り出した。

 ロックウェルは慌てて薙刀を戻し、大きく後ろに飛び下がる。

 その勢いのままに短剣を下に振り下ろして短剣を正確に叩き落とした。

 しかしドレリアは既に腰の剣を抜いていた。

 短剣が地面に音を立てて落ちる。

 そのすぐ後に薙刀も落ちる。

 今までの戦い二つともが5分以上の戦いだったからか、あっけない終わりに思わず声を漏らす。


 「型通りで綺麗ではあったが、咄嗟の判断力も筋力も足りていない。心体共にもっと鍛えろ」

 「は、はい」


 ロックウェルは明らかに肩を落としてとぼとぼとこっちに戻ってきた。

 俺もこうなる……いや、これより酷い事になる事だろうと予想できる。

 そう考えると浮き立った気持ちが若干沈んだ。

 というかこの後に体力試験と学力試験があるってことか……なんか学生時代の中間試験期末試験を思い出すな……。


  「さて、じゃあ次は誰がやる?グゼルさんか、フィールか、ノワールか」


 俺とフィールが顔を見合わせる。

 正直、自信がない俺は一番最後にやりたい。

 しかし、どうあがいたってグゼルが最後だろうし、それならばいち早く自分の実力を試してみたい気はする。


 俺は意を決してドレリアに自分の名を申し出る。


 「俺がやります」


 フィールが楽しげにこちらを見ているのが見えた。

 順番が次に回ってくることへの不安だろうか。

 少し緊張しているようにも見える。


 「そうか、しかし武器を持っていないな。徒手か?」

 「いえ、剣なんですけど……なくしてしまって」


 申し訳なさそうに答えると、ドレリアは訓練場の端っこにある剣立てに入っていた剣をこちらに手渡してきた。


 「これをつかえ、市販品だが武術試験なら問題はない」

 「ありがとうございます」


 俺は剣を受け取ると、ドレリアと距離をとって正眼に構えた。

 さらさらとした石造りの地面のおかげですり足がしやすい。

 皮で編んでいる靴なことも大きな要因だろう。

 しかし、剣が重い。鉄でできていることもあり、俺が使っていた竹刀や木刀などとは比べ物にならないほどに。

 扱い切れる筋力がまだ残っているかが心配だ。

 俺は小さく息を吐くと、ドレリアに突進した。

 狙うは首への突き技。牽制にしかならないだろうがそれでいい。


 一歩踏み込んで突き技を繰り出そうと剣を持つ手を伸ばそうとした刹那、ドレリアの剣が視界の横にかすめる。

 俺は咄嗟に身を捻って左から来るであろう方向へ思い切り剣を振り下ろし、同時に右斜め後ろに身を引いた。

 基本九の型胴打ち落とし面の打ち落としの部分だ。

 咄嗟の判断だったので正直うまくいくと思っていなかったが、思惑は見事に的中した。

 俺の上段からの振り下ろしは、下から袈裟気味に振り上げられる剣撃の威力を少しだけ削いでいた。


 「ほう、珍しい型だな。なんと言う流派だ」

 「さあ、覚えてないです!」


 俺は大振りに振り上げ、頭上から振り下ろす。

 剣が重い。

 一回振り下ろすだけでも腕に負担がかかる。

 1、2合打ち合うだけの事だが、どうあがいても勝てそうにない。

 勝てるどころか、さっきのロックウェルと同じことだろう。

 それ以下だろうか?


 剣と剣が触れ合い、軌道が逸れる。

 さっきまでと同じ、流麗な剣技だ。

だから俺は


 あえて踏み込んだ。


 「ほう?必死に見えて、意外と冷静だな」


 応じ返す余裕は無い。

 二つの剣先が上に逸れ、そのまま顔が接近する。

 このままいけば筋力の差で取られる。

 が、型通りだ。基本4の型面体当たり胴。

 体を後ろに引きながら、左側から同を打ち下ろそうと上げた手に力を込める。

 が、力が入らない。

 いや、入ってはいるが動かない。

 俺は慌てて横を見ると、ドレリアの体が俺の左側に入っており、片手で俺の剣を上から押さえつけ、もう一方の手で短剣を俺の首につけていた。


 「見たことのない型で面白かったが、使いこなせていない。速さも、筋力も一瞬の判断力も足りていない」

 「はい……」


 勿論手加減は相当されているだろうが、思った以上に善戦できたことに若干の高揚感を覚えた。

 課題は筋力と実戦経験。

 狼と戦ったのが良く働いているのかもしれない。

 二度とはしたくないが。

 しかし剣を買わなきゃいけないな、まず。

 武器も買わずにハンター組合に行くのは流石に無謀がすぎた。

 未来への希望が若干だが芽生え、心は少しだけ軽くなった。


 「さて、次はフィールだ。武器は背中に背負ってる弓でいいんだよな?」

 「はい、これで」


 フィールはその木製の弓を左手に持つと、矢筒から数本矢を取り出した。

 そして自分を落ち着けるように一度深呼吸をすると、ドレリアをじっと睨む。

 ドレリアは剣を抜くと、半身で構える。

 今までに見たことのない構え方だ。

 剣も両手ではなく片手だけで握っている。


 「来い」


 ドレリアがそう合図すると、フィールはあり得ない距離を後ろに飛び下がって弓をつがえた。

 素早く無駄のない動きで放たれた弓が、ドレリアに高速で飛来する。

 それをドレリアは空中で逸らそうとして……


 失敗した。


 放たれた弓はドレリアの剣に確かに当たったが、それを一切感じさせずに目的地に向かう風のようにドレリアに迫った。

 面食らったドレリアが慌てて上半身を後ろにそらしてなんとか避ける。

 矢はそのままドレリアの後ろの床に当たって落ちた。


 「ほう……」


 ドレリアの顔に深い笑みが浮かんだ。

 直後、ドレリアは剣を構え直してフィールに対して向かった。

 そして音が響く。足が地面を叩く音、フィールの首元には剣が沿えられている筈だった。

 が、その結果は訪れない。


 フィールが慌てて射った2、3本目の矢がドレリアの速度を確実に落とし、ましてやその進行を完全に止めた。

 止まったドレリアにフィールは右手に持った最後の弓をつがえ、放った。


 その矢はまさに風を体現していた。

 見た目は細い弓と矢そのもので、何か力を纏っているわけでも強い力で弓が引かれている訳でもないのに、辺りを圧倒する矢の力は風圧をさえ感じた。

 ドレリアはそれを弾き返すでもそらすでもなく、正面から受け止めた。

 止まってはいるが力を失わない矢は、ドレリアを一歩下がらせた。

 が、その矢を短剣で横から叩き折ると、その矢は嘘のように力を失って地面に落ちた。


 「恐ろしいな、これが新人か」


 ドレリアは笑い、言葉を発しながらもその目はフィールの首を仕留めんと強く睨んでいた。

 フィールはその視線に気圧されながらも、矢をつがえようとして右手にもう矢がないのに気づく。

 ドレリアはその隙を見逃さずに短剣を投げやり、フィールの頬すれすれを掠めさせた。


 「魔力の扱いと弓を打つまでの動作はなかなかに洗練されているが経験と使い方が勿体ないな。が、才能や可能性、実力を考えて言えば、中堅にも及ぶだろう」


 まさかのドレリア絶賛である。

 フィールはしかし勝てなかったことに落ち込んでいるのか肩を落とした。

 劣等感覚えるからやめろ。

 

 「弓は弁償しよう、少し熱くなり過ぎた」

 「はい……」


 フィールがこっちに戻ってきたら絶対仲良くして媚売っとこうと俺は決心した。

 そしてあわよくばパーティを組ませてもらおう。そうしよう。


 「さて、最後は……グゼル先輩ですね」


 覚悟したような顔でドレリアがグゼルを見据える。

 グゼルはそれを聞いてニタニタとした笑みを浮かべながら、盾と剣を乱暴に取り上げて立ち上がった。


 「さーて、お前らをボコボコにした感じの悪い先輩が、もっと感じの悪い先輩にやられるとこ。見せてやるよ」


 グゼルは俺たちにそう宣言すると、ドレリアに向かい合うと盾を左手に剣を右手に持って構えた。

 盾は正面に剣は上に上げ地面に平行に。

 綺麗な構え。

 剣道で盾については習ってことはないが、おそらく正面にたてばわかる。

 隙が一切無い。


 「胸貸してやるよドレリア、感謝しろ」


 ドレリアは無言で先ほどの構えをとった。

 体を半身にし、真剣な面持ちでグゼルに相対した。


 そしてグゼルの踏み込みで、戦いは始まった。

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