おばはん、少しは、まともな人間になれ!!

加福 博

マジで激怒する5秒前!!

 桜が満開の春に叔父が亡くなった。忍耐強く優しい叔父だった。彼が叔母とタイに駐在中、日本米を持ってきてくれと言われて届に行った。叔母は、最初の夜タイの伝統的なレストランを予約してくれていた。


 そこで彼らと食べたトム・ヤン・クンは、最高においしかった。それ以来、私はタイ料理の大ファンなのだが、それはそうとして本題に戻る。


 私の叔父は、阪神タイガースの大ファンだった。そして、焼き場に向かうバスの中で乗り合わせたのが、初めて会った親類の女性歯科医師のおばはんだった。彼女は、まず私にこう言った。

 

 「こんなタイガースが最下位になった日に亡くなるとはねえ」


 「ん?いや、でも、また盛り上げていけたらいいですよね」と、笑顔でこたえると「そりゃ、ありまへんわ」と大きな声で嘲笑する。何なんだこのおばはんは。


 そして、彼女は車窓の外を指さして、「あれは、武庫川?」と問う。彼女は、関西に住みながら、武庫川であることを知らなかった。歯科医でありながら、そんなことも知らないのかと、私が腕組をして「うーん」と唸っていると「何を考えているの?」とまた問う。


 からかってやろうと思い「いや、さっきの川は、猪名川じゃないかと思って」と言うと、「いや、ちゃいますよ、私、池田ですもん」と言ってまたさらに大きな声で嘲笑する。嘲笑すること自体、自分の下劣な品性をあらわしていることが、このおばはんには分かっていないわけだが、猪名川ではないことは分かっているようだ。


 すると、おばはんは、「じゃあ、私、これで調べてみましょうか」とスマホを取り出した。様子を見ていたのだが、結局、このおばはんは、スマホで何の川か検索できなかったのだ。こんなんで、歯医者、やっていけんのか!!


 結局、焼き場から葬儀場に帰ってきて、食事をした際に、「こっちのスマホで調べたら、武庫川だった」と教えてやると、「ホラ、私が最初に言ったのが当たっていた!」と自慢げに言う。ええ加減にせえよ、歯医者かなんかしらんが、おばはん、少しは、まともな人間になれ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おばはん、少しは、まともな人間になれ!! 加福 博 @Donnieforeverlasvegas

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ