第8話:廃嫡・ルーパス王太子視点
「どういう事ですか、父王陛下。
何故私が廃嫡にさせられるのですか。
父王陛下の実子は私だけですぞ。
従弟共に王位を継がせるなど王位継承争いをさせるだけですぞ」
父王がこれほど愚かだとは思っていなかった。
私に黙ってアグネスに伯爵位を与えたことがそもそも悪い。
そん事をせずに強制的に修道院に入れればいいのだ。
いや、そんな事をしなくても、少し待てば虐め殺してやったのだ。
エイダを婚約者にしておけばグロブナ公爵家も文句は言わなかったはずだ。
「これほど愚かだったとは気付かなかったぞ、ルーパス。
お前のやった事は貴族社会の約束事を根底から破壊する愚行だ。
エイダを愛人にするのは別にかまわん。
認知さえしなければ子供を作るのも目を瞑ることはできる。
だが見届け人が見ていない所で作った子供を認めるなど、次期国王が絶対にやってはならない事だ」
父王陛下は何を言っているのだ。
そのような事はどうとでも誤魔化せる事ではないか。
急ぎエイダとの結婚式を挙げて、早産とすればいいだけではないか。
「また愚かな事を考えているようだな。
周辺国がこの国に密偵を送り込んでいないわけがないであろう。
既に国境を接する四カ国が連名で弾劾状が届いてきておる。
もしこのままお前に王位を継がせるのなら、連合軍を組んで攻め込むとな」
おのれ、内政干渉ではないか。
我が国の事はミンスタ王家が決める事だ。
父も何を弱気になっているのだ。
もし私が王なら毅然とした態度で拒否してやるのに。
こんな王は引きずりおろして私が王に成るべきではないのか。
こんな憶病者でも父は父だ、殺さずに幽閉に止めておいてやろう。
「お前の愚かな考えなど全て顔に出ておるわ。
四カ国にとっては理由などどうでもいいのだ。
我が国に攻め込む大義名分さえあればいい。
それでも国内貴族が一致団結してくれれば戦えない訳ではない。
だが今回は明らかに王家に非があり、ほとんどの貴族が協力しない。
それにお前には全く人望がない」
非だと、何が悪いというのだ。
私は王太子だぞ、誰を婚約者に選ぼうと勝手ではないか。
私に人望がないだと、私を慕う貴族がどれほどいるのか知らないのか。
「はぁあああ、愚かだな、ルーパス。
貴族なら家のため自分のため、唾棄する相手であろうと媚を売る。
愚劣な連中は不当な利を貪るために阿諛追従を繰り返す。
そんな事も分からずいい気になっていたのか。
だったら今直ぐお気に入り達を集めてみればよい。
目先の利く連中はもう誰ひとりお前の側には近寄らん。
全員生き残るために必死で次に媚を売る相手を探しておるわ」
そんな馬鹿な、全部愚王の嘘だ、きっとそうだ。
確かめなければいけないが、その前に国のために愚王を殺しておくべきか。
「言っておくが、今ここで剣を抜いたら即座に殺されると思え」
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