第7話:自問自答
イーシスは悪巧みの天才だと思います。
性格が悪いからこそできる事だと思います。
私にはとても思いつかないような酷い手段を考えだします。
しかもそれを平気で実行できるのです。
もう一度言いますが、イーシスは性格が悪いのです。
(なに純真無垢な子供のような事を考えているの。
まるでオムツの取れていない赤子のような事を平気で口にして。
あんたももう一人前の貴族令嬢と言える歳なのよ。
相手にいいようにされて恥ずかしくないの。
もっと強かになりなさい、未熟者が)
厳しく言い込められてしまいました。
確かにイーシスの言う通りです。
権謀術数渦巻く社交界では、言葉ひとつ間違えただけで殺される事もあります。
今回はイーシスのお陰で上手く逃げ出せましたが、普通なら地獄でした。
「水に落ちた犬は叩け」ではありませんが、落ち目になった私は、王太子とエイダに取り入ろうとする者から徹底的に叩かれた事でしょう。
それこそ自殺に追い込むまで叩き続けられたかもしれません。
最低でも精神的に再起不能になるまで叩かれたのは確かです。
だから確かにお気楽な事を言っていてはいけません。
(やっと心から理解できたようね。
精神支配して遅発性で仕込んでおいた悪評を流させるわよ)
イーシスはそれこそ出会う人間全員に王太子とエイダの悪口を仕込みました。
それどころか悪心まで埋め込んだというのです。
それを遠く離れたこの場所から発動させるというのですから、凄いのひと言です。
恐らく今日からのサロンや晩餐会、舞踏会でも二人の悪口が広まります。
表面的には礼後正しく振舞っていても、心では二人を心底嫌います。
本当にイーシス魔術は恐ろしいです。
(くっくっくっくっ、因果応報というのよ。
自分のやった事は必ず自分に返ってくるのよ)
そう言われると、今回利用された人達に少々申し訳なく思ってしまいます。
あの人たちにも悪口陰口を言った報いが返ってくるのでしょ。
自分達の意思で言ったのではなくイーシスに言わされたのです。
いえ、自分だけいい子でいるわけにはいきませんね。
私とイーシスが言わせたことで何か不利や害を受けるのですね。
(ふん、私を舐めないでよね、アグネス。
私が善人を巻き込むわけがないでしょ。
私が悪口を仕込んだのは悪人ばかりよ。
過去の行状でルーパスに報復されても当然の連中ばかりよ。
そういう事が因果応報と言うのよ)
よかった、本当によかった。
私とイーシスのために善人が巻き添えにならなくて本当によかった。
イーシスのも良心の欠片はあるのですね。
(失礼ね、私に良心がなければアグネスを助けないし、完全に身体を乗っ取ているわよ、直ぐに謝りなさいよね)
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