第4話:直談判

「国王陛下、どうなされるのですか。

 私を殺して全てを隠蔽されますか。

 ですがそのような事をすれば、後世の史書に最悪の腐れ外道と書かれますよ」


 私とイーシスは復讐について激烈な言い争いをしました。

 私も一度死んだ身です。

 何も恐れるモノなどありません。

 イーシスが稀代の魔女であろうと恐れることなどありません。

 八つ当たりかもしれませんが、堂々と自分の言いたい事を言いました。


 当然ですが魔女のイーシスに最初から遠慮などありません。

 自分が住み易いように王都を変えると言って譲りません。

 もし二人に身体があれば、みっともない掴み合いになっていたでしょう。

 それくらい激しく心の中で争いました。

 でもそのお陰で互いに妥協できる条件を見つけることができました。


「まさか、そんな、ルーパスがそのような下劣な真似をするなど信じられん」


 本当に盆暗な国王です。

 なんてことを言える立場ではありませんね。

 私も昨日まで全く気がついていませんでしたから。

 でも、それはそれ、これはこれです。

 気がついた以上、償いはしてもらいます。


 とはいえ、もう王太子と結婚などしたくありません。

 あんな不実な人間と結婚しても一生苦しむだけです。

 私には愛人を作って適当に楽しむような事はできませんから。

 できるだけ有利な条件で婚約を解消するだけです。

 ただ私に国王と対決して有利な条件を引き出す駆け引きなどできません。

 そういう事は性格の悪いイーシスに任せればいいのです。


(言いたい事言いやがって、後で覚えていなさいよ)


 思った事が筒抜けというのは不便ですね。

 イーシスが怒ってしまいました。


「だったら役人を使って調べればいいでしょう。

 それともそんな事もできないほど能力も威厳もないのですか。

 さっさと調べて賠償金と爵位と領地を支払ってもらいますよ。

 このまま放置したら、王家の威信は地に落ちますよ。

 それこそ婚約者を殺して浮気相手を王太子妃に迎えた王太子と、その為に王国が滅ぶ原因を作った愚王として歴史に名を残しますよ。

 さっさと役人に調べさせなさい」


 この後もイーシスの交渉術は硬軟使い分けた素晴らしいモノでした。

 同じ身体から見て聞いている私も正直感心しました。

 国王を怒らし過ぎず、でも冷静にさせる事もなく、次々と言葉の刃を放ちます。

 その刃を国王はろくに受ける事もできません。

 一方的に押されて、全てを調べる命令を口にさせられます。

 しかも事実であった場合にどのような賠償をするか約束させられました。

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