エピローグ
アーテル国は、相変わらずどんよりした天気の朝を迎えた。
アーテル村では赤い屋根の家に住み、友人宅と庭を共有しているココアウサギの女の子、史織は、家の中でキッチンのテーブルの上に転がってた消費期限切れのパンをゴミ箱へ捨てて、母親に「ふざけんなクソババア。パンがねーじゃん!」と怒鳴った。
「なによ、食パンくらい冷凍してれば食べられるわよ」
「食パンじゃないし」
「あんたが学校を、二日くらい行くようになって、めんどくさくなったのよ、もう、自分で何とかしてよ、お母さん忙しんだから!」
「あんなに学校行けだの言ってたじゃねーか」
「それはそれ、これはこれ。それに好きな給食出る時だけ行ってるだけじゃない、あんたは給食目当てに行くだけなの?ちょっとくらい賢くなれるようにしなさいよ!」
「うるせー」
「もぅ、史織の為に言ってるのよ?将来とか、お父さんみたいにならないでよね!」
「あんなクソジジイみたいになんて、誰がなるかよ。あーもう、せっかく早起き出来たのに、学校行く気無くした」
「もうどっちでも良いわよ。お母さん行くね」
「さっさと行けよババア」
「はいはい、じゃあ、戸締りよろしくね」
史織はすでにキッチンから出て、リビングにある窓側に向かって歩き、返事さえしなかった。
史織はその窓を開けて、サンダルを履いて庭へ出て隣の家の状態を見つめた。
水色の屋根の家から窓に引っ付いている友達を見つけると、そちらへ向かって歩いて行った。
友達の方もそれに気付き窓を開けてくれた。
「おはよう」
「おはよう、誰かいる?」
史織は外側から中を覗き込んだ。
「ママとあやめがいるけど、別に良いよ、入りなよ」
「ありがとう」
史織はサンダルを脱ぐと、中へ入ってダイニングへ向かった。
後から史織の友人、ペルシャネコの女の子、深雪も付いてくる。
「ご飯の途中だったんだ」
「まあね」
「朝ご飯にパン食べようと思ったら、しょうひきげん切れてた。」
「しょうみきげんじゃなくて?」
「わからん、ちがうの?」
「しょうひは、このきげんまで、しょうみはこれまでならおいしく食べれます、みたいな感じだった気がする。」
「ふーん」
そこへ、あやめの元へ行っていた深雪のお母さんが、ダイニングの方へ現れた。
「あら、史織ちゃん、おはよう、またお母さんとケンカでもしたの?」
「おばさん、おはようございます」
「まぁ、晶子ちゃんの事だから、またおにぎりでも買い忘れて…とかかしら?」
「パンが無くて」
「あぁ、買い忘れちゃったのね。うちにあるもの食べて行きなさい。おばさん今日はちょっと、用事あって、支度しなきゃならないから、スープとか、よそえないのよ。自分で出来る?」
「はい、大丈夫です」
「そう。じゃあ、なにかあれば、深雪、お願いね?」
「はい」
パタパタとスリッパ音を立てて去っていく。
それを二人は見送り、深雪が「座ってて」というと、史織は言われた通り席に座った。
史織の分の朝食を用意し、深雪も自分の席へ座ると、食べ残っていた分を食べて片付けた。
「ごちそうさまでした」
「早いね、ちょっと待ってて。いただきます」
「うん、ここにいるよ」
史織はやっとこ、暖かくて美味しい朝食が食べれて満足した。
「ママさ、まだ“晶子ちゃん”って呼んでるんだね」
「うちのババアの事?そうみたいだね」
「昔から知り合いだし、初めて出来たママ友だし、なんか色々考える所あるのかも」
「かもね」
「親同士のなんか、ずっと変わらないのかな?」
「変わるそぶりないよ」
「それもそうか」
二人は妙に納得してしまった。
一方、心穏やかな朝を迎える家庭もあった。
コアラの獣人が住む家では、お父さんが朝から上機嫌で家事をこなしていた。
子供は幼稚園に通っている子、エラが支度しているが、それをお母さんが手伝っていた。
「良い?エラ、聞いて?幼稚園で意地悪されたら、先生に言うのよ」
「あやめ、しゃらーぷ、っていったらだめなの?」
「あやめちゃんは、まだ外国語が分からないの。だから、お願いだから止めてねって言うのよ」
「ぱぱは、よく、しゃらーぷ、っていうのに?」
「あー、それは、しおりちゃんがうるさい時に言うから、お父さんはしおりちゃんを叱ってるの」
「しーちゃん、ぱぱにしかられてるの?」
「うーん、そうね、そんな時もあるわね」
「ふーん」
エラは父の居る方を見つめた。
そんな事を知らず、父はキッチンの方で上機嫌で歌を歌い背中にはエラの妹、エヴァがおんぶされ眠っている。
そんなコアラさん一家の隣の家、緑色の屋根で大きな家の中は、カンガルーの獣人一家が暮らしているが、玄関の前で来客が立っている。
玄関のドアが開き中から住人が出てきた。
「おはよう、かずみ」
「カーラ、おはよう」
かずみと呼ばれたのはハムスターの獣人の女の子で、この家の住人であるカンガルー一家の娘、カーラの友人である。
「カーラ、かずみちゃん、気を付けていくのよ」
玄関扉から顔を出しているのは、カーラのお母さんである。
いつも玄関から二人を見送ってくれているのだ。
今日も見送る為に中から出てきてくれたらしい。
カーラの妹で、まだ赤ちゃんのキャシーを抱っこしている。
二人は見送ってくれるカーラの母に「いってきます」と挨拶し手を振った。
カーラのお母さんも手を振り返してくれた。
ハムスターの獣人の女の子、和美の双子の弟は多少の障害があるものの、今は一人で通う練習を始めた。
和美がカーラとよく一緒なのを見て、和美の母が気を利かせてくれたのだ。
ちょうどあまり和美にばかり負担かけさせずに、障害があっても多少自立して欲しいと思っていた所だった。
学校へ行くくらいなら大丈夫と判断しての事で、本人も一人で学校へ行くようになったが、寂しさなどは感じていなかったようだ。むしろ「お兄ちゃんになったぞ」というような感覚が目覚めたらしい。
素直に学校へ行っている。
ハムスター一家の乳児院の二階で働くカワウソさん夫婦は、小さい子供の世話で大忙しだった。
この間、ハムスターさんの家も同じように、朝はとても大変だと意気投合した。
小さい子はまだ親の手が無いと上手に支度が出来ないからだ。
子供は急に熱を出したりしてしまい、朝にそうなるととても大変である。
今日も子供達の様子を窺いながら、一番小さな赤ちゃんの世話もしてから、ようやく自分達の支度に移れる。
とりあえず今日は何事もなく保育園へ預けられそうだ。
カワウソさん達は青空クラスの子達との演奏会も控えている。
体調管理はいつも以上に気になる部分だ。
お父さんもお母さんも子供達の為、気が抜けない生活を送っているが、なによりも子供の面倒を見るのが好きな二人には、多少忙しくても気が抜けず、疲れそうな日々でも何とかなると思い体が動いてしまう。
サポートが無くなった今、一番気合が入ってしまうが、成功の文字が頭の中をよぎれば、多少不安も出てきてしまう。
お母さんは少し顔色が暗くなる時があるが、なんとしてでも成功させなきゃと自分に言い聞かせ顔を手で叩いた。
そのくらいしないとダメな気がしているが、お父さんもお父さんで張り切っている。
新しい職場でサポート無しで、一人経営する事となった今、余計な事は考えられなくなってしまっていた。
しかし、子供の元気な声を聞き、少し気合が入りすぎたと気付くと、お母さんにも「少し手を抜けよ、倒れるまで頑張るな。休むことも必要だぞ」とアドバイスした。
そう言われると、それもそうだと思えるようになった。
そう考え始めると、なにを頑張りすぎてたんだろう、ほどほどにしようと思えるようになった。
今は、精神的に落ち着かないみたいだが、夫婦はお互いにアドバイスし合って手を取り合って、共倒れしないように頑張れる範囲で頑張ろうと、励まし合っている。
それが青空クラスの子供達にも伝わるようで、演奏の練習に厳しさと優しさという感情が広まりつつある。
それが功をなしたのか、演奏がより良い音色を響かせるようになっていたのだった。
アズーロ町で島暮らし中のフリントキャットの二家族も、朝の通勤通学の時間で大忙しだった。
フリントキャットの獣人の男性、カルセドニーの所でキャンプ生活をしているキヌネコの獣人の女の子、周りから「しろねこちゃん」と呼ばれている子は、比較的早寝早起きなどの習慣がついてるからか、朝からちゃんと起きてきて朝ご飯を食べ待ってるのだが、他の子は朝の時間帯はのんびり体質の子が多かった。
カルセドニーの弟、セバスチャンの双子の娘はそれなりにのんびりタイプ、姉の子で養子になったコーデリアはだいぶのんびりタイプだった。
その為、朝は皆が起きて学校行くまでに誤差が生じるのである。
四人が同じ小学校へ通っている為、四人揃わないと船が動かせないのだ。
カルセドニーの子供はまだ幼稚園へ通う子供の為、大人と一緒に船に乗せる。
一日、朝二本、夕方は帰宅に合わせて数が変わる。
カルセドニーはそのたびに一人で船を動かしている。
今日の朝も、しろねこちゃんは身支度を整えてカルセドニーの家の中でコーデリアの支度が終わるのを待っていた。
しろねこちゃんは皆が忙しそうにしている中、合間をぬってカルセドニーの元へひっそりと尋ねてきて「お願いがある」と言い出した。
何事かと聞くと「コーデリアちゃんと相談して、授業参観に来てもらう人を決めたんです。コーデリアちゃんは、エレスチャルおばさんに頼むって言ってました、ので、カルセドニーおじさんは、私の為に来てくれませんか?」
「授業参観?」
「はい」
「分かった、エレスチャルと一緒に行くよ」
「ありがとうございます」
「で、どの授業なんだ?理科だと嬉しいなぁ、ワクワクするから」
「国語ですが、あまり期待しない方が良いかと」
「国語か、確かにな。あまり期待しない方が良さそうだ」
実は授業参観では、国語で作文を発表するのだが、作文の内容は尊敬する人の事を書く決まりである。
しろねこちゃんはカルセドニーとソフトクリームを食べに行った日に作文を書いたのだが、本当ならカルセドニーの事を書くつもりでいたが、なんとなくセバスチャンの事を書いたのだ。
それで「期待しない方が」と言ったのだが、カルセドニーが気付くはずもなく、カルセドニーとしては別の理由であまり期待できないらしい。
カルセドニーは実は理科が好きで国語は好きじゃなかったらしい。
それであまり期待しない方が良いと思ったようだ。
しろねこちゃんは授業参観が楽しみな反面、作文の内容についてはあまり触れたくなかった。
市街地とも呼ばれるルージュ市でも、朝のこの時間は通勤通学の時間帯で、一番人の往来が多いかも知れない。
デパートで働く人たちも忙しそうに通勤している。
その中、ライオンさんは昨日の夜は家に帰らなかった。
その為、今から家へ帰っていく途中だ。トラムに乗り込むとクリョーンキャットの男性が運転手だった。
まだ若そうに見えるが彼は十五歳の娘がいる。
その娘が小さい時に歌っていた歌を口ずさんでいた。
「ご機嫌だな」
「おや、ライオンさん、この時間にトラムに乗るという事は、アパートに帰るんですか?」
「そうだ、色々あってな」
「お疲れ様です」
「娘は元気か?」
「アリッサですか?元気ですよ。アパートにいたら、声かけてやってください」
「警戒されているようだ」
「すいません、言い聞かせます」
「いや、大丈夫だ、気にするな」
「ありがとうございます」
ライオンさんは、たてがみが生えている所に手を入れ、そこをかいた。
トラムのシートに腰掛け窓から朝の街を見つめた。
今現在、父がトラム内で自分の噂をしているとは知らないアリッサは、寝坊した事実に気付いたが、あきらめる事にした。
庭には居候がいるはずである。
しかしダイニングにその男の姿は現れた。
カスタードキャットの獣人男性のボブは「やあ、アリッサ、おはよう今日は早いお目覚めだね」
「これでも遅刻だよ。で、ボブは何してるの?」
「朝ご飯の準備だ、君も何か食べるか?」
「あー、昨日買ったパンで良いや」
「君の、その昨日買ったパンは、ダリアが食べてったぞ」
「えっ?なんでよ」
「君が、ダリアに、ってお土産に渡したんじゃなかったか?」
「そうだった、忘れてた…」
「オートミール食べるか?」
「えーっ、まぁ、何もないよりは」
「わかった、待っててくれ」
「うん」
ボブがオートミールを準備している間、アリッサは「ジョルジェ」というミケネコの獣人男性の事を思い出していた。
「アリッサ、さぁ、これを食べなさい」
ダイニングテーブルの上にアリッサの分のオートミールが入ったお皿が置かれた。
「ありがと」
席に座るとスプーンを掴んで、皿の中のオートミールを救って口に入れた。
「さて、オレも食べるか」
ボブはテーブルの上に自分のオートミールの皿を置き、アリッサと向かい合うように座った。
「ねえ、ジョルジェって人と、移動販売の店出したんでしょ?今日はどこにいるの?」
「今日もデパート前の公園だよ」
「あの、ソフトクリームのお店がある場所?」
「そうだよ、場所を借りて、店をやってるんだ」
「じゃあ、今日、お昼に行こうかな」
「アリッサが来てくれるなんて嬉しいよ、大歓迎だ!サービスもするよ」
「ありがとう、新しい職につけて良かったね」
「ジョルジェのおかげで、助かってるよ」
ボブはアリッサに向けて微笑んだ。
オートミールも意外と美味しいのかも知れないとアリッサは思った。
しかし、それはボブのおかげだろうとも考えていた。
もじゃもじゃのサンタさんみたいな風貌の男と出会ってから今まで、ボブを助けたのは自分だったが、知らぬ間に自分の方がボブの存在に救われていた気がする。
自分と同じ名前の女性がボブの元・恋人だったらしいが、その女性に導かれたのかも知れないとアリッサは思うようになっていた。
“きっと、アリッサさんも亡くなってもなお、ボブが心配だったんだろうな、だけど今は…”
アリッサは自分の分のオートミールを食べ終わった後、シンクに使った食器を片付けた。
「アリッサ、オレが後を片付けておくから、君は仕事に行く準備をしてくれ」
「…なにもかも、色々とありがとう、ボブ、助かってるよ」
「アリッサ…アリッサらしくないが、大丈夫か?」
「ちょっと!」
「アリッサ、君はいつも優しいな」
「なにそれ」
「何でもない、気を付けてな」
「…いってきます」
「いってらっしゃい」
ボブはスプーンを持つ手とは反対側の手を挙げた。
いってらっしゃいのポーズを取っている。
アリッサも手を振って答えた。
一方、ジョルジェの方は妻でボブの従姉にあたるパメラの作った朝食を食べて、リビングで二人の子供達の面倒をみていた。
二人の子供はパメラとジョルジェのお互いの連れ子だが、両方とも隔てなく可愛がっている。
パメラから「最近、ボブと上手くやれてる?」と聞かれ「たまに上手く行く時もある」と答えた。
「そう、仲良く出来てるのね。良かった」と言われ、ジョルジェは見透かされていると思った。
「客も来てくれるし、ありがたいよ」
「そう、良かった」
「エミリーばあさんのおかげだな」
「あの人は、人が大好きな“魔女”らしいわよ」
「そう言われても、なんにも疑問を抱かないな」
「不思議な人達よね」
「まぁ、あのじいさんも、女関連以外は、問題なさそうだしな」
「あの人は、口先だけだからね。お喋りが得意なのよ」
「女性の前だけだがな」
「そんなこと、たぶん、ないわよ」
ジョルジェはパメラを見たが、パメラは何か言いたそうだが、何も言わずキッチンへ向かった。
デパート前の公園にあるソフトクリーム屋さんでは、早くも開店準備が始められていた。
ウシの獣人のおじいさんんとおばあさんが、いそいそと準備している。
「今日も沢山、お菓子やらソフトクリームが売れると良いな、ばあさん」
「あなたは、女性が沢山来てくれたら良いな、でしょ?」
「おなごが来てくれたらわしゃ、天国へ召されちまう」
「大丈夫よ、死なないから」
「わからないぞー、そう、ぽっくりと…」
「魔法で生き返ったら?」
「ばあさん、そんな魔法があると思うのか?」
「あったら困るわよ」
「じゃあ、なんで」
「小説のネタが欲しくて…」
「…新作は進んでるか?」
「えぇ、おかげさまで」
「そうか、ならよかった」
おばあさんは無言で看板を表に出すと「そうね、元気かしら?あの子達」と呟いた。
そのおばあさんが呟いた子供達というのは、エウぺ町にいる五人組の女の子達の事だ。
結構頻繁に来てくれていたが、この間からあまり姿を見せなくなっていた。
しかし彼女達は元気に過ごしている。
あの時の事は、ほぼ忘れ去られているみたいだが、言葉使いなどはある程度変わっていた。
それでもまだきつい言い方をしてしまう時もあるが、あまり、他人に対して良い言葉使い出来ないと、損するかも知れないと少し学んだらしい。
ソフトクリーム屋さん以外にもトラブルがあったようで、先生や親にきっちり叱られた為に、少し改善されたらしい。
損しないようにするのが彼女らの新たな目標らしい。
今日も学校が始まる前に、寮の中にある談話室で遊びに行く作戦会議を練っている。
まだまだ成長段階である彼女らは、これからどんな大人になるかで人生が変わってくる。
良い方向に向かえばいいのだが、それは彼女ら次第である。
川の街と呼ばれるアスール クラロ町では、小学校に登校したブラウンウサギの獣人の兄妹がクラスの子と話をしていた。
マシューは天気の事を友達から聞かれ「今日の天気は…」と答えると、その答えを聞いた友達から「マシューの天気は、テレビの天気予報より当たる確率が高い」と言いマシューを誉めてくれた。
「やっぱり将来は、テレビで天気予報士の仕事をするのか?」と聞かれたがマシューは「いや、テレビの仕事はしないよ。テレビの仕事しそうなのは、ヘレナの方かな」と答え「ヘレナのお菓子をこの間食べたんだけど、とても美味しかったんだ」と言った。
それを聞いて、今度食べさせて欲しいと友達から言われ、「ヘレナに聞いて大丈夫だったら食べさせるよ」と返事した。
一方、ヘレナの方はクラスで一番仲が良い子と、休日は何をしていたかと話していた。
ヘレナは家族で公園へピクニックと答えた。
友達から「今度、私も行きたい」と言われると、近所の公園で良ければ一緒にピクニックしようと提案した。
友達の子は大喜びしてくれたが、ヘレナの方もまた楽しい休日の予定が出来たと、こちらも喜んでいた。
どんな服装にするか話したり、お菓子はどうするかと話したりして、話はどんどんと膨らんでった。
今回は手作りお菓子ではなく、お店で買う事になったが、お菓子を交換しようという話になり、前回のピクニックとは全く別の楽しみが増えた。
“お菓子は一緒に買いに行こう”という話になり、それもまた楽しそうな気がしてヘレナは今からワクワクしている。
友達も微笑んでいるのをみると、お互い楽しみで待ちきれないほどらしい。
話が膨らみ過ぎても気にせずに会話し続けていた。
アーテル国に住む者達は、皆それぞれの人生を生きている。
家庭を持ったり独り身で暮らしてみたり、実に様々な生活スタイルがある。
日々の日常の中、小さな変化や大きな変化がある中で、彼らは彼らなりに問題を解決したりして生きている。
空はどんよりした曇り空が多いのがこの国の特徴であるが、それでも住人はたまに晴れる天気を待ち望んでいる者が多いのだ。
エピローグ 終わり
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