それぞれの戦い 白銀の騎士伝説(前編) 1
ランダがロブリー村で、リザリエやルシオールの話を聞いていた通り、かつて、賢聖になる前のリザリエは、ロブリー村を訪れていた。
そして、同じ時に、すでに剣聖と名を馳せていて、生ける伝説となっていたジーン・ペンダートンもロブリー村にいた。
目的は、ルシオールの監視と、その同行者の護衛だった。ただし、隠密状態でだ。
そして、ロブリー村でルシオールが怨敵キエルアの手の者によって誘拐されてしまう。
ジーンは、より優先度の高いルシオールの監視の為と、キエルア討伐のためにルシオールを攫った者を追跡した。
そして、行き着いたグレンネック国のある館で、グラーダ国を裏切り、逃亡していたキエルアを発見する。
そして、抹殺しようとしたところ、護衛に雇われていた殺し屋「ヴァン」に出会ったのだ。
ヴァンと館で戦い、打ち破ったものの、殺し屋の里の情報を聞き出し、ヴァン自身に助けを求められた。
殺し屋の里では、幼い子ども、赤子を攫い、殺し屋として育成する。
その過程で、酷い拷問や過酷すぎる訓練をさせられる。洗脳によって里に縛り付けられるようにする。
共に育った子ども同士での殺し合いをさせる。
更には表現に窮するほどの所行が為されていた。
ジーンは昔から、旅の途中で他の事件に巻き込まれると、前の事件を途中で放棄して次の事件に向かって行ってしまう癖があった。
この時も同じで、本来であれば、何を捨てででもルシオールの監視と保護が優先されるべき状況なのに、ヴァンと同行して、殺し屋の里を壊滅させる旅に出てしまう。
それが吉と出たのか、凶と出たのかは、今現在でも答えは出ていない。
だが、その判断が、リザリエを含めて多くの人を傷つけている事は知っている。
経過としては、ヴァンと共に殺し屋の里を壊滅させる事は出来た。
その際には、英雄とは言えない行為も行わざるを得なかった。
つまり、洗脳され終わった子どもは、殺害しなければならなかったのだ。
それはジーンにしても思い出したくない程、むごく後悔の残る事件だった。
その後、ルシオールをキエルアの手から取り戻すためにグレンネックにヴァンと共に向かった。
そして、ルシオールは取り戻せたが、ルシオールが慕っていた青年は姿を消して、心傷ついたリザリエと、嘆き悲しむルシオール、それと、廃人になったキエルアを連れてグラーダに帰国した。
それが、この後の歴史にどう影響を与えるのかは、未だに誰もわかっていない。
ただ、ジーンは己の失態だったと考えていて、その後すぐにヴァンと共にグラーダ国を後にする。そして、様々な国を旅して、2人で友情を育んでいた。
ヴァンは黒髪、長髪のコウモリ獣人の男だ。
無口で無愛想な上に、人付き合いが極端に苦手なジーンと違い、明るく、冗談ばかりを口にするお調子者だった。
だからか、互いに気が合ったようだ。
だが、グラーダ二世に世継ぎが誕生した知らせを受けて、1人祝福のためにグラーダ国に向かっていた数ヶ月の内に、ヴァンは獣人国の秘境に、殺し屋の里「闇の蝙蝠」を復活させていた。
密かに残されていた里出身の者を集めて、里として機能させるに至っていた。
子どもの育成も進んでいた事から、ジーンの知らぬ間に、ヴァンは里を作り上げていたようだ。
それを知ったジーンは、決着を付けるべく「闇の蝙蝠」の里に赴く。
そして、今度は完全に里の者全員を殺害する。その最中、ヴァンとの死闘を果たす事になった。
結局、ヴァンは洗脳から逃れる事が出来なかったのだ。
それに気づけなかった自分を責めて、白銀の騎士の放浪は終わり、グラーダ国に帰属する事となった。
それから時がたった今、愛すべき孫から無視できない情報がもたらされる。
「闇の蝙蝠」の復活である。
すでに世界で活動していると言う。実際、孫が殺し屋の1人を確保しているそうだ。孫はその殺し屋を洗脳の苦しみから解放したいと願っている。
ならば、これは自分の問題である。他の何を犠牲にしてでも解決しなければならない問題だ。
それこそ、命に代えてでも、である。
ジーンは、すぐに暇乞いをして王城から旅だった。
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