それぞれの戦い  不死海の放浪者 2

 ランダは、遥かに生活水準が上がった環境に、母に申し訳ないと思いつつ、のびのびと過ごす事が出来た。

 下級生の内は、遊ぶ事が仕事で、多少の手伝いはするが、先生と一緒に、日々楽しく過ごしていた。

 そんな中、シンシアとも仲良くなる。


 シンシアは、両親を夜盗に襲われて、1人生き残った。しかし、その後シンシアを引き取る血縁者も無い状態でいるところ、クレセアに引き取られた。

 出身はエルカーサ国である。

 ランダよりも1年早くひまわり学園に来ていて、ランダの面倒をよく見ていた。

「あんた、本当にボンヤリしてるから!!」

 シンシアは、よく焦れったそうにランダにそう言っては絡んでくる。

 確かにランダは、思った事を口に出すのが苦手だし、誰かに助けを求めるのも苦手である。

 だが、だからと言って、器用に色んな事が出来る訳でも無かった。

 いわゆる、どんくさい子どもだったのだ。

「顔はカッコいいから、大人になったら結婚してあげるね」

 ランダと同じ年だが、子どもでも女は女だ。ランダには、まだ結婚がどうとかよくわからない。

 無口でボンヤリしているランダの手を引いて、いつも強引に色んな遊びに誘ってくるシンシアに、ランダは特に抵抗しなかった。

 シンシアの強引さが、ランダには心地よかったのだ。



 2人は、いつも一緒にいるのが当たり前になった。

 初等学校、中等学校にも一緒に通った。クラスは別になっても、シンシアは休み時間になるとランダの元をよく訪れていた。

「あんた、ボンヤリしてるから心配なんだよ。どうせ友達も出来てないんでしょ?」

 いつもシンシアが来るから、ランダは友達を必要としていなかった。一方で、シンシアは、いつもランダの所を訪れているのに、友達は多かった。

 

 初等部まではシンシアの方が背が大きかったのに、中等部に入ると、ランダの背は急に伸び始めて、あっという間に学校の誰よりも背が高くなる。

 そうなると、元々顔が良いランダは女子生徒にモテ始める。

 無口でボンヤリしているのが「クール」と捕らえられるようになる。

 そこからのシンシアのガードはかなり厳しくなる。

 ランダにしてみれば、すでに幼い頃からシンシア以外に親しくしたい女性などいなかったので、シンシアがムキになるのが可笑しかった。

 苦笑すると、思春期に入って、女性らしさを増したシンシアが、真っ赤になって照れる。

「もう!ランダのくせに!!」

 これが新しい口癖になった。



 そして、中等部を卒業する前に、魔力判定がされて、ランダもシンシアも、高い魔法適性が認められた。

「ランダはどうする?」

 魔法学校に入る事も出来る。

 クレセアの方針として、魔法適性が高い子どもは、未来の可能性が開けるから、希望するなら必ず魔法学校の試験を受けさせてくれる。

「俺は、母の借金を返すのに、魔法使いになるのが一番速いと思う」

 ランダが言うと、シンシアは迷わずに頷く。

「じゃあ、一緒に試験を受けましょう!」

 



 そして、中等部途中の12歳で、ランダとシンシアは魔法学校に入学する。

 ランダも、シンシアも魔法学校での成績も良く、青春時代を魔法学校で過ごし、15歳で卒業する。

 魔法学校は学年制では無い。大体2~3年で魔法基礎、応用を学んで卒業資格を得る。

 速ければ、半年か1年で卒業する者もいれば、卒業資格を得ても、魔法研究を重ねるために5年以上在籍している者もいたり、王立高等学校、通称アカデミーに編入する者もいる。

 

 ランダとシンシアは、普通に教育課程を修了させて卒業した。

 


 卒業したのが15歳であるから、ひまわり学園には戻れないので、就職活動に入る。

 実は、ひまわり学園卒業後、就職が決まるまで生活できる寮まである。それはさすがに、ペンダートン家の敷地内には無いが、家賃や食費はわずかで、就職してからの返金という形になっている。


 2人は1週間ほど、その寮で過ごすが、魔法使いならば職はすぐに見つかる。

 ランダは公務員だ。メルスィンの都堤府に務める。

 王城は国全体を治める。メルスィンにはメルスィンだけを治める都堤府がある。そこで働き、高額の報酬を得る事が出来た。

 

 一方、シンシアは、同じ公務員的な職業だが、働いたのは冒険者ギルドだった。

 派遣されたのは産業都市ザメルの冒険者ギルド支部だったので、ここで2人は出会ってから初めて離ればなれとなってしまう。

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