ギルド戦争  クブン関 2

 頭を抱えている俺を見て、リメルさんが苦笑する。

「そんなに考えなくてもいい事よ。あたしたちが、ちょっと変わっているって言う事と、多分この時代に生まれ変わったのは、聖魔大戦を止める為だと思うの。それだけ覚えていてくれれば良いわ」

 つまり、目的は同じと言う事か。

 しかし、頭の整理は出来ないけど、どうしても興味が湧いて止まらない。

「一応秘密にしておいてね。みんな君以上に混乱すると思うから」

 それはそうだ。創世竜と話していなければ、絶対に信じ無かっただろう。

「わかった。打ち明けてくれてありがとう。あと、心強い味方が出来た事、嬉しく思うよ」

 俺は頷く。

「しかし、みんな、まだまだ弱い」

 ムンクさんが唐突に口を開く。

「あの頃と同じくらいに早くなってくれ」

 確かにムンクさんは別次元の強さだった。良くは分からないが、あれが「勇者」って事なのだろうか・・・・・・。

「あの・・・・・・。あれはどうやってたんですか?」

 俺が怖ず怖ず尋ねると、ムンクさんが針金を見せてくれる。

「こうした」

 針金が、スルスル伸びて、目の前で鳥の形になったり、魚の形になったりする。オリハルコンの針金か・・・・・・。

 でも、それだけであんな事が出来るとは信じがたい。

「それ以上やると、人死にが出る」

 つまり、相当に手加減した上で、1万人以上の兵士と戦っていた訳か。

 おい、マイネー!お前、間違いなく地上で3番目に強い男じゃ無くなったぞ!

 下手すればじいちゃん以上の化け物かも知れないな。


「ボクたちも、もっと強かったんだけど、いわゆるレベル1からのスタートになっちゃったんだよね」

 ピレアが笑って言う。

 しかし、確かにハイエルフにも「樹木化する眠り」がある事を考えると、それ程不思議でも無いのか。生まれ変わりの方が凄いな。

 そこで、俺は好奇心の方を満たす事にする。

「あの。それで、今よりも進んだ文明って、どんな世界だったんだ?」

「う~~ん。言っても分からないと思うけど、魔法と科学が融合した世界だよ。蒸気魔法機関が発達して、船で空を飛んだりしていたよ」

 「蒸気魔法機関」がそもそも分からないが、何だか面白そうな世界で、益々興味が湧くが、ムンクさんがピレアを止める。

「やめておけ。進んだ文明の事など知っても、ろくな事にならない」

「まあ、確かにそうよね」

 リメルさんが頷く。

「今のシンプルさがちょうど良いのよ。多少不便でもね」

 リンクさんもそれに同意する。

「なるほど・・・・・・。まあ俺の好奇心も、そもそも過去の世界を知りたいからなんだ。一応本当は考古学者志望なんだ」

 俺が言うと、リンクさんとリメルさんは驚く。

「騎士の名家のペンダートンなのに?」

 ピレアとムンクさんは3年前に目覚めたけど、リンクさんたちは生まれ変わりだから、この時代の事も良く分かっているようだ。何だか不思議だ。


「とにかく、わざわざ助けに来てくれてありがとう。ムンクさんもありがとうございました」

 話が終わり、俺は立ち上がって礼を言う。

「でさでさ。君はこの後どうする気かな?」

 ピレアが聞いてくる。

「もちろんクブン関を通って北バルタに行くよ。多分仲間たちも同じ考えだろうから」

 俺が答えると、ピレアが頷く。

「ボクらも行くよ。ムンクは帰る?」

「ああ」

 ええ?凄い戦力なのに。

「ムンクは今の時代の勇者じゃないからね」

 ピレアが当たり前の様に言うし、他のメンバーも当然の様な顔をしている。何か事情があるのだろうから、詮索はやめておこう。

 それに、下にメアリさんを待たせている。

 

 しかし、あの時欲望に負けて、チューをしなくて良かった。

 俺、冒険者だから、すぐ旅立たなきゃいけないし、危険がいっぱいだから、メアリさんの様な人とは恋人にはなれないもんな。

 ・・・・・・あれ?じゃあ、俺は誰となら恋人になれるんだ?

 今の考えだと、パーティーメンバーと言う事になるのか?

 いやいや。仲間内はマズいんじゃないか?

 今度、他の男女パーティーと知り合ったら聞いてみよう。



 その後、俺はメアリさんをギルドに預けつつ、ヨールドとミーン捕縛の顛末を報告する。

 ギルドは、賞金山分けを了承してくれた上に、メアリさんの保護と、その後当分の面倒を見てくれると約束してくれた。

 俺も一応何かあった時にはペンダートンを頼れるように、紹介状を書いて渡しておく。

 メアリさんは、俺と別れ難そうにしていたが、翌日にはクブン関に向かう事を知って、無事を祈りつつ、別れを了承してくれた。

 ペンダートン家に俺宛での手紙を送ると言ってくれた。


 そして、俺は宿に戻り、ピレアたちに挨拶して自分の部屋で眠った。


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