ギルド戦争  モンスター指定 6

「ハ・・・・・・、ハッハッハッハッハッハッ!」

 こいつは笑える。こんなに愉快な事は無い。

「どうしたウルト!お前の言う正義は世界中から否定されたぞ!」

 ウルトの顔が、みるみる青くなる。

「バカな・・・・・・。何故分からぬ?!」

 実に愉快だ。さっきまで俺を支配していた殺意は、綺麗に消えていた。

「分かるもんか!!モンスターの考えなど!!」

「我々は・・・・・・我々はモンスターなどでは無い!!」

 ウルトは、ヨロヨロと後ずさりすると、ヨールドに背を向けて走って行った。それに兵士も続き、ミーンは兵士に突き飛ばされて壁に激突し、気絶する。

 


 外では、もう一度同じ言葉が繰り返されて街中に響く。

 俺は、ヨールドの猿ぐつわを外してやる。

「どうだ?何か感想はあるか?」

 意地悪く言ってやる。

「ば、馬鹿な。私がやった事と、あの狂王がやった事とで、何が違うというのだ?!」

 こ、こいつ。まさかグラーダ国王のマネをしていたつもりなのか?なんて幼稚で、なんて稚拙なんだ。

 思うより先にヨールドの鼻に拳を叩きつけていた。

「全然違う!!」

 鼻の骨が折れて、鼻血を溢れさせながら、ヨールドが泣き叫ぶ。

「ヒイイイイイ!痛い、痛い!!」

「調子に乗るなよ。貴様の生死は問わないそうだ!汚い口を閉じていろ!!」

 剣を向けると、ヨールドは必死に口を閉じるが、鼻血で鼻呼吸できないから、プッハプッハ言っている。

「どうです?メアリさんもいっちょやっときますか?」

 俺は手頃な花瓶を手にしてメアリさんに勧める。

 だが、メアリさんはその花瓶をそっと押しとどめた。

「私の体は、この男によって汚されてしまいました。でも、ここで私がこの男を触る事で、私から汚れに行く事は御免ですから」

 なるほど。出来た女性だ。


「ありがとう!」

 メアリさんが俺に抱きついてきた。うおおお!これはヤバい!これはヤバいって!

 メアリさん瞳を潤ませて俺を見つめている!!これは、このパターンはあれか?ブチュッてしていいやつか?

 メ、メアリさん、目を閉じた!!??

 やべぇ。鼻息荒くなる。

 いいのか?これ本当にいいのか?

 早とちりでした、って感じで怒られたりしないか?

 一度くらいなら・・・・・・。


「いたーーー!カシム君!!」

 背後から声を掛けられて、俺は飛び上がってしまう。

 ビックリした!ビックリしたよ!!

 振り返ると、ピレアと正義の翼メンバーがいた。

「探したけど、無事で良かったよ!・・・・・・ん?その女の人は?」

 おお。見られていなくて良かった!ってか、あと一秒後に来てくれても良かったのに・・・・・・。

「ああ。彼女は、この男に捕らえられて暴行を受けていたんだ」

 そう言って、俺は鼻血を出しているパンツいっちょの男を足で指し示す。

「ええ?それって、賞金首の自称ヨールド!!」

 いや、ヨールドは名前だから自称じゃ無い。

「で、こっちに倒れているのはミーン自称大統領補佐官?!」

 ピレアたちが驚き呆れる。

「ボクらが助けに来るまでもなかったね」

「いや。すごく助かったよ。本当に礼を言う」

「いいさ。借りは返したよ」

 俺、なんか貸したっけ?

 

 その時、外で凄まじい音と声が、次々轟く。

 俺たちは窓から、外を覗くと、町の冒険者たちが、一気にこの館を取り囲む兵士たちに攻撃を仕掛けている所だった。

「ははは。凄いな、冒険者たちは」

「うん」

 ピレアが言うが、その頭をリンクが叩く。

「まったく。緊急クエストが発令されなかったら、あたしらは犯罪者だったんだからね」

 ああ。そうだな。それを覚悟して来てくれたって事だ。感謝しか無いな。

「じゃあ、こいつらの賞金は、この町の冒険者で山分けにでもして貰うか」

 俺が笑うと、ピレアたちも笑った。

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