ギルド戦争  正義の意味 4

「何でだ?!」

 そう思わざるを得ない。まさか、ピレアも人間至上主義の賛同者なのか?俺の敵なのか?

「なぜと言うなら答えよう!ボクの仲間のリメルは『占い師』だからね。君がこの辺にいるって、なんとなく言ってたけど、珍しく当たったね!!」

「ちょっと、ピレア!珍しくって何よ?!そんなに外していません!」

 ピレアの背後から、正義の翼メンバーが出てくる。

 占い師のリメルさん。その双子の姉、リンクさん。「ただ中」情報では職業は踊り子。僧侶のリイ。武闘家のアリシア。

「でもさ。ちょっと様子が変じゃない?」

 そう言ったのはリンクさんだ。すごく色っぽい衣装をしている割に、冷静な判断をする。

「変なものか?!国家反乱罪なんて重罪じゃないか!!」

 ピレアがそう叫ぶと、飛びかかってくる。

「クソ!何で俺が国家反乱罪なんだよ!?」

 そう叫びながら、とにかくピレアの攻撃を受け止める。


 シャアアアアアン!!


 聞いた事が無いような音がした。俺も驚いたが、攻撃を仕掛けてきたピレアも驚いて飛び退る。

「何だい、その剣は?!」

 それはこっちの台詞だ。俺は竜牙剣を見てみるが、異常は無い。

「まあ、良いや。それより、正義の名の下に、ボクが君を成敗する!!」

 そう言うと、再び問答無用でピレアが攻撃を仕掛けてくる。

 再び剣を受け止めると、やはり、シャアアアアアアン!!と、大量の鈴を鳴らしたような音が響く。

 驚いたのはそれだけでは無い。

 これまでは、相手の剣を切り裂き、魔神の剣ですら刃こぼれを起こさせた竜牙剣で受けても、ピレアの持つ剣には、全く刃こぼれが出来ない。

 つまり、ドラゴンドロップ製の剣に匹敵する硬さを持った剣だという事だ。

 

 驚いてばかりもいられない。

「待て、ピレア!俺は犯罪者じゃ無い!!誤解だ!!」

 俺は攻撃を受け止めながら叫ぶ。

「だけど、法を破った上に脱走したんだろ?!」

「そうじゃない!!」

 ピレアは、鋭い攻撃を仕掛けてくるが、俺から攻撃をする訳にはいかない。どうも話が食い違っている。

「うわ!!」

 頭上からの突然の攻撃に、俺は前方に転がって逃れる。ピレアの足の下をくぐる形になった。

「コラ!ちょっと、君、エロいよ!!」

 ズボンをはいているんだから平気だろうに。いや、そうじゃない。攻撃にアリシアも参加してきたのだ。

「ねえ、ピレア。一応参加するけど、本当にやっちゃって良いの?」

 アリシアも自信なさげだ。

「良いさ!実際に彼は兵士を何人も斬り殺しているんだ!それは殺人罪だ。許せないね!」

 クソ!そう来たか!

「じゃあ、やるけど、やっぱり気は乗らないなぁ」

 そう言いつつも距離を詰めてくる。

「カシムさん。出来れば降参してくれますか?捕まっても裁判有るし、無罪なら釈放されるんでしょ?」

 アリシアが提案してくるが、そうはいかない。

「無理だ。ヨールドたちは、俺を殺す事に決めている!」

 更に俺が説明しようとするが、その前に、ピレアが突進してくる。

「じゃあ、有罪決定だって事だよね!!ペータル・アロー!」

 剣から無数の光の矢を放ちつつ、それに劣らぬ速度で迷わずにこっちに突っ込んでくる。防御を一切考えていない戦い方だ。鎧のオートガード機能を完全に信頼しているのだろう。

 どのみち、俺に攻撃の選択肢は無い。ひたすらに防御と回避だ。


「お前はヨールドに騙されている!北バルタの惨状を知っているのか?!」

 光の矢を切り落としつつ、ピレアの剣を竜牙剣で受け止める。同時にアリシアの回し蹴りは左手のアームガードで受け止める。

「知っているさ!疫病で大変なんだろ?!」

 叫びつつ、ピレアは攻撃の手を止めない。アリシアも連続で攻撃を仕掛けてくる。

 ピレアの剣は、竜牙剣でしか受け止められないが、アリシアの攻撃なら、すね当てと、アームガードで受け止められる。回避できる物は回避する。

「違う!北バルタでは、ヨールドたちの軍隊によって、国民の大虐殺が行われている!!」

 俺が叫ぶと、2人の攻撃がピタリと止まった。

「え?」

 アクシスの攻撃が止まる。

「嘘だ!ボクの聞いている話と全然違う!!」

 ピレアがすぐに攻撃を仕掛けてくる。

「くう!」

 俺も剣を降ろしかけたところだったので、反応が一瞬遅れた。身を躱すが、腕を少し切られる。

「嘘じゃ無い!奴らは北バルタ人500万人を全て殺すつもりだ!!」

 その俺の叫びは、最後まで言わせてもらえなかった。

「ボクたちは、北バルタが大変な時に、国民の惨状憂えて、南バルタを劇的に変える施しをした人を知っている!その人がヨールド大統領だ!」

 その話は俺も知っている。だがその姿こそが嘘なんだ。

「ブースト・スラッシュ!!」 

 反論する暇も無く、ピレアが猛攻を仕掛けてくる。

 剣を振りながら、後方に光のエネルギーを発して、速さと威力を高める一閃の攻撃だ。

 竜牙剣の腹で受け止め、左手も添えて衝撃に耐えるが、それでも上体は流されてしまう。

 そこを上段から剣を振り下ろされる。竜牙剣で受けるが、地面に叩き付けられそうになる。

 とっさに手を付いて、そこから側転して距離を取る。


「その施した物はどこから出た?!南バルタにそれほどの物資はあるのか?」

「そんな事知るものか?!それは政治の話だ!」

 確かに物資がどこにどれだけあるかなんて、その国の要職にある人ぐらいしか把握していないだろう。

「君の言う話は荒唐無稽に過ぎる!北バルタの人を全員殺すなんて、子どもでも思いつかない事を、あのヨールド大統領が実行するはずが無い!!」

 ピレアが言い切る。

「大方君も誰かに、そう。反乱軍を率いている、元第一軍団のなんとか将軍とかに騙されているんだろ?手を組んで過激な反乱運動をしているそうじゃ無いか!」

「なんだ?それは!!」

 質問に答える前に、ピレアが突進してくる。

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