ギルド戦争  惨劇 6

 ファーンがパニックになって、自分の背中を見ようとしながらその場をグルグル回る。手もワチャワチャ振り回す。

「ちょっと、落ち着け!!」

 俺はファーンの肩を掴んで、取り敢えず動きを止める。

「誰か、ファーンからリュックを預かっているか?」

 確認するが、全員が首を振る。

 それはそうだ。リュックの管理は、ファーンにとっても大切な仕事だと、誰もが知っている。

「最後にリュックを確認したのはいつだ?」

 失くし物捜索の基本確認だ。

「え、え~と。さっきの岩の上で休憩した時に使った・・・・・・」

 どこに置き忘れたか分かったようだ。

「エレナ!場所は分かるか?」

「はい!!」

 俺が声かけた時には、すぐにエレナが飛び立つ。

 取り敢えず、落とし場所が分かったので、俺たちはホッと息をつく。

 こんな山には登る人もいないし、時間も2時間かそこらしか経っていない。

 場所さえ分かれば、エレナならすぐにたどり着けるはずだ。

「面目ねぇ・・・・・・」

 ファーンが落ち込んだ様子を見せる。

「まあ良いさ。でもあれは俺たちパーティーの生命線だから、一応管理は気を付けてくれよ」

 言うまでも無い事だが、リーダーだから言わないといけないな。

 

 すぐにエレナが戻って来たが、顔色が悪い。

「ありませ~~~ん!!」

 舞い降りて来るなり、エレナが叫ぶ。

「え?!」

 ファーンはもちろんだが、全員の表情が強ばる。

「ちゃんと岩まで降りて行ったし、周囲も歩いて探しました!人の気配もありませんでしたが、どこにもリュックは見当たりませんでした!!」

 獣人で狩人でもあるエレナが言うのなら、人の痕跡を見逃すはずが無い。

「ただ、多分ですけど、川に落ちたのかも知れません!」

 あ。そうか。ファーンが休んだ岩は、川の上に張り出していた。転がって落ちたにせよ、風や、エレナの羽ばたきで落ちたにせよ、川に落ちて流れていった可能性はある。

「エレナ!空からは探せなかったのか?」

「木が多すぎて、ちゃんと探す事は出来ません!どこかに引っかかっていても、見つけられません!」

 確かにそうだ。となると、歩いて川沿いに下りながら探さなくっちゃいけないな。

「オ、オレ、戻って探す!」

 ファーンが走り出そうとするが、俺は止める。

「いや。それだとはっきり言って足手まといだ。ここは俺とミルの2人で探す」

 俺は残酷なようだが、そう告げる。ファーンは泣きそうな顔になって俺を見る。

「ファーン。責めている訳じゃ無い。お前はお前にしか出来ない事がすでに沢山ある。借りもあるしな。だから、サブリーダーとして、俺とミルがいない間は任せた」

 肩を叩いてそう言うが、ファーンはすっかり落ち込んでいる。

 だが、今は時間が無い。

「エレナ、ミルを連れて飛んでくれ!リラさん!俺を連れて行ってください!アール!ファーンを護衛して待機だ!」

 矢継ぎ早に指示を与えると、俺たちはすぐに行動に移す。

 飛び上がった俺が振り向くと、肩を落としたファーンの姿が目に焼き付く。

『きつい事言って悪かったな。でも安心しろ。すぐに見つけて戻ってくるから』





 リラさんとエレナには、岩まで届けて貰って、ファーンの元に戻って貰う。

 川のような岩場での機動力と、物を探す能力、それと体力は、俺とミルが飛び抜けている。

 俺たち2人で走れば、川を下りながらリュックに追いつけるだろう。勿論、途中の岩場に引っかかったりしていても発見できる。

「行くぞ、ミル!」

「まっかせてお兄ちゃん!!遅れても置いて行っちゃうんだからね!!」

 鬼ごっこ気分で、ミルが気持ちをもり立ててくれる。

「おう!負けないぞ!」

 俺たちは河原に飛び降りて、可能な限り全力で走りつつ、失くしたリュックを探した。

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