ギルド戦争 惨劇 2
そして、10月13日。
俺たちはウィネスの町を出発する。
ウィネスからは北西に道が続いていて、数日で最もバルタ国境に近い村、「オド」に到着する。
そこからは山道を登って尾根沿いに紫七連山を目指す事となっている。
今日はミルの誕生日なので、ミルが俺と一緒に馬に乗って上機嫌だ。
エレナも誕生日特権で、同乗者を選ぶと言っていたが、結局悩んで選ぶ事が出来なかったので、リラさんに任せた。
時間交代にすると、面倒な方式で決定したそうだ。
薄々感づいてはいるが、あいつ男嫌いじゃ無くて、女好きだろ?人の事変態呼ばわりしておいてふざけるなよ!!とか言うつもりは毛頭無い。
なんか、女の子同士がイチャイチャしているのを眺めるのも、なかなか楽しいもので、俺への罵倒も、かなり聞き流せるようになってきていた。女性陣は気付いて無さそうなので、黙っていよっと。うふふふふ。
道の途中には家や、宿も時々見られたが、次第に少なくなり、緩やかな登り道に入ると、木々が多くなり、家も無くなった。
そんな中で日が暮れ始めたので、俺たちは道から外れてキャンプを設置できる場所を探し、良い場所を見つけたので、早速キャンプの準備をする。
リラさんはアラーム魔法のセット。ミルとファーンでタープのセット。
アールはベッドの準備。
エレナは空から周囲の偵察。特に夜盗がいたら面倒くさい。
俺はかまどの準備だ。
今日は豪勢に料理をするから、大きめのかまどと小さいかまどを作ると、小枝を集めて、薪も準備する。
そして、準備が出来ると、早速火をつける。
ミルの火遁の術ではなくて、火打ち石で火付けを行う。
俺は色んな火の付け方にチャレンジするのが好きで、あれやこれやと、毎回工夫して着火を楽しんでいる。そうして、ちょっと苦労して点けた火で料理をしたり、揺らめく火を眺めるのが好きだ。
今日は俺とリラさんで料理を作る。一番上手い飯が出来上がる最強コンビだ!!
料理はリラさんが一番上手で、次が俺。その次がエレナで、マイネー、アールの順番だ。悲惨なのは、料理当番にミル、ファーン、ランダが当たった日だ。その日は宿に泊まりたい気分になる。
今日の料理は、「チーズたっぷりキノコのリゾット」と、「旬野菜のバーニャカウダー」。「ローストビーフ」に「燻製チキン」だ!!
盛り付けもばっちりして、お祝いムード!
お祝い用にフルーツジュースも用意している!!
「うわーーーー!!」
ミルが喜び、エレナも嬉しそうだ。
「リラさん最高です!!カシムさんも男のくせに生意気です!!」
喜んでもらえたようだ。俺とリラさんで顔を見合わせて笑い合う。
「では、カンパーイ!お誕生日おめでとう、ミル!お誕生日おめでとう、エレナ!!」
みんなで2人を祝福する。
◇ ◇
北バルタ国を占拠しているのは、バルタ共和国の軍、3軍団。将軍率いる一軍団が1万5千名なので、4万5千名の兵士が、北バルタで暴虐の限りを尽くしている。
更に、南北の境界「クブン関」には大将軍の2万の兵が詰めている。
バルタ共和国には第七軍団まであり、さらに総帥直属の軍1万を合わせて、その総数は約12万5千名。
総帥を頂点に、大将軍、将軍が軍団を率いている。
北バルタの軍事行動は、南バルタの議会を停止させている総帥ヨールド・グハーグが命令しているが、実行に当たる三軍団の頂点は、リドーラ・アンメル大将軍で、第三軍団を率いる。
リドラー大将軍は、先にも述べたように、南北を分断する要塞「クブン関」をさえて、両バルタ国領に睨みを利かせている。
第二軍団品ヒルメス・アンメル将軍は、リドラー大将軍の息子で、王都周辺を占拠している。
第四軍団をウタト・エイミール将軍、第五軍団をロドイエ・バランス将軍が率いていた。
第六、第七軍団は南バルタを占拠している。
第六軍団はイーラ・グハーグ、第七軍団はドワイト・グハーグ。この両将軍は、ヨールド・グハーグの息子と甥である。
そして、ここに含まれなかった第一軍団を率いるバイド・マインス大将軍は、クーデターに反対の立場を取っていて、今はその兵士たちの多くと、北バルタに封じ込められたまま散らばって潜伏していた。
北バルタでは、王都は焼き尽くされた。
国境沿いの村や町からは軍に襲われたり、騙されたりして、全住人が北バルタの中央に向けて移動させられていた。
不信感を抱いたり、反発した者は殺されている。
誰も、南バルタへはもちろんだが、他国へも逃がさないようにして、監視しやすいように、住人を中央に集める作業をしているのだ。
冒険者ギルドも襲われ、上手く隠れられた冒険者や職員はともかく、メッセンジャー魔導師含めて、多くの者が、捕らえられたり、処刑されている。
「手が足りませんな」
最初に王都を占拠した第四軍団の将軍ウタトの副官が報告する。
「国境線の警備に、住人の移送。住人の監視に管理、物資の運搬。処刑するのも、処刑された者を処分する作業にも人手がいります」
淡々と報告していく。
それを聞いて、ウタト将軍が笑う。
「それなら、処刑と、処分の作業は集めた民衆にやらせれば良い。監視も一部民衆にさせれば良い。運搬でも使えるな。古き良き、奴隷制度のあった時代の復活だ。違うのは、民衆が喜んで無償で我らのためにやってくれているという事だな」
ウタト将軍の言葉に副官が頷く。
「なるほど。では手配しましょう」
「つまり我々は、現在の状況をもう少しの間は他国に知られてはならないと言う事だ。新しい国が樹立して、ある程度の新しい秩序が出来上がれば良い。これまでの腐った政治から解放された、自由で平等な世界を、我々は作り上げなければいけない。その義務と正義は我らにあるのだ」
その言葉にも、副官が頷いた。
「しかり。腐った王権派を全て根絶やしにしてこそ、人々は真の自由と平等を手に入れる事が出来るのです」
彼らにとって、この一方的な虐殺も、正義の行いなのだ。それに関して、みじんも疑わず、最高責任者である総帥、ヨールド・グハーグに心酔していた。
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