ギルド戦争 アール・ジェイ・ジェイン 5
ひゃほーーーーう!最高だぜ!!
俺は心の中で、とある大先生の名台詞を叫ぶ。
遺跡ですよ、遺跡!!
城跡です。
ここはウィネスの町の郊外にある、町で保存している史跡公園だ。
公園とは言え、民家は近くには無く、木々がうっそうとしているので、人はまばらだ。それでも、若い男女や母子が遊ぶ姿も見られている。
一応、何カ所かに石碑が有り、遺跡の説明がされてある。
きちんと説明すると、誰も付いて来てくれそうも無いので、かなりざっくりと説明すると、この城跡は、今から1800年ほど前の王朝の城跡だ。
残っているのは、土台の一部と、城の形や機能が読み解ける堀や土の盛り上がりで示される「曲(くる)輪(わ)」の跡。
建物が残っている訳では無いが、その城がどんな姿をしていたのかが思い浮かべられる。
その姿をあれこれ想像したり、考察するのが楽しい。
そこに住んでいた人や、ここを治めていた人が、どんな背活をしていたのか、どんな歴史があったのかを考えるのもまた楽しい。
考古学は、そうした想像をして、考察をしていく学問なのだと俺は思う。
正直、何時間でも楽しめそうだ。
だが、アールには気の毒な時間だ。
俺のすぐ側を離れずに、ずっと俺に付き合っているが、興味の無い人間には退屈極まりないだろう。
実際、この史跡公園に来ている人で、この遺跡や、石碑を見ている人はいない。
「アール。付き合ってくれてありがとう。そろそろ宿に戻ろうか」
俺が言うと、アールが首を傾げる。
「兄様、楽しそうです。もう良いのですか?」
くっ!!アール。お前は健気で良い子だ。だが、確かに後ろ髪は引かれるが、すでにここで2時間以上楽しませて貰った。
「いいさ。それより、アールは行きたい所、お店とか無いか?」
俺の問いに、アールは首を振る。
「兄様の側が一番うれしいので・・・・・・」
またしても可愛い事を言う。これが洗脳じゃ無ければ、単純に喜べるのだが。
そんな事を話していた、次の瞬間、目の前の石碑が歪んで消える。その地面に黒い穴が開いていた。
そして、その穴の中から、ヌッと現れたのは、巨大な体に豚の頭を持つ魔物、「オーク」である。鎧兜に身を固めて、武器を手にしている。
「な!?」
俺は驚く。
アールはすぐさま武器を取り出し、薙刀を構える。
続いて俺も竜牙剣を抜き放つ。
一方で、出現した目の前に、武器を構えた俺たちがいた事に、オークの方も驚いたようだ。
慌てて、穴の出口から飛び退いて武器を構えると、威嚇のために吠える。
その吠え声に、周囲にいた人たちも異変に気付いて、叫びを上げながら逃げて行く。
穴からは、その後も次々オークが出てくる。
「アール!こいつらはモンスターだ!人間全体の敵だ!しかも強い!手加減せずに殺せ!一体も町の方に行かせるな!!」
俺がアールに指示を出す。
アールが眉間にしわを寄せつつ、頷いて、最初に出現したオークに攻撃を開始する。
オークの武器は、幅広の片刃の刀、蛮刀だ。
ゴブリンほど愚かでは無く、力も強く、体力もある。群れでもある程度統制を取れた行動が出来る。
ゴブリンやオゥガの様な、残虐性は無いが、地上人を見れば襲いかかってくるし、殺して喰ったりする凶暴なモンスターなのには変わりは無い。
以前の俺では、火炎刀を手にしてさえ、一体を相手にするのが精一杯だった。
今はどうだろうか?
俺は武器を構えるオークに、全力で斬りかかる。
オークの動きはゆっくりに感じる。
巨大な蛮刀を切り裂き、そのままオークののどを切り裂く。 ただそれだけでは、生命力の強いオークは動きを止めない為、返す剣でオークを鎧ごと袈裟斬りにする。
背後から蛮刀を叩き付けてくるオークの攻撃を躱し、切り上げて両腕を切断する。
そのまま、腕を切断したオークの後ろに隠れる。
シュドドド!!
重い手応えがする。オークの放った強弓からの矢が、分厚い肉を貫通して、背後に隠れる俺にも届く寸前だった。
さすがにオークは侮れない。
しかも、矢が何本も刺さったと言うのに、そのオークは失った腕を振って攻撃してきた。
相変わらずの生命力だ。
すぐに俺は首を切断する。
直後に、四方から槍が突き出される。中段と上段に高さを分けての攻撃。それなりに集団戦闘の訓練を地獄でしてきているようだ。
俺は地上すれすれを這うような戦闘法である「地蜘蛛」で回避しつつ、数体のオークの足を凪払う。
それから、一先ず距離を取る。
見ると、オークが出現した穴はすでに無く、出現したオークは24体。
すでに俺が、2体倒し、アールも1体倒している。
残り21体。
幸いな事に、ゴブリンと違って、統制が取れているので、欲望のまま、周囲に散会して町を襲いに行かず、脅威と見なした俺たちの排除を優先して、皆この場にとどまっている。
逃げた人たちが救援を呼んでくれれば助かる。
それを待っていてくれるオークたちでは無いが・・・・・・。
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