ギルド戦争 アール・ジェイ・ジェイン 4
話を終えて礼を言い、俺たちは面談室から出る。
ところが、トリリアさんが退室しようとする俺の手を引いて止める。
「はい?」
俺は驚いて振り向くと、頬を染めて笑顔を浮かべるトリリアさんがいた。
「あの。良かったら一緒に念写をしていただけませんか?」
「はあああああっっ!!!???」
叫んだのはファーンだ。俺はどんな状況なのか理解できずに固まってしまっていた。
「こ、こいつと?!」
ファーンが俺を指さす。
「はい!私、カシムさんのファンです!」
何だって?!!俺に・・・・・・ファン?!
「げえええっっ!マジかよ!!?」
ファーンが顔をしかめる。
俺も全く不可思議だ。理解が追いつかなくって頭がクラクラしてくる。こんな展開、想像した事も無い。
今、俺はまっすぐ立てているのか?
「良いですよね!?」
真面目な雰囲気のトリリアさんが、美しい司書様が俺のファンだって?!逆はあってもそれは無いだろう?!
俺は言葉が出ずに、人形のようにコクコクと頷く事しか出来ない。
「たあっっ!!そんな話は聞いた事があったけど、カシム様もいよいよ有名冒険者の仲間入りですねぇ!!」
ファーンの言葉に、かなりトゲがあったが、俺はそれに対しても何の反応も出来ない。
「は~いはい!アホらしくて付き合いきれねぇから、オレはもう行くぜ!!後は好きにしな!!」
ファーンが手を振って歩み去る。
「アールもいちいち付き合わなくって良いんだぜ!!」
背を向けたまま、アールにも声を掛ける。
「いえ。兄様を待っています」
アールはとことん従順だ。
「さあさあ、行きましょう!!」
トリリアさんは、ファーンの様子を全く気に掛ける事も無く、グイグイ俺の手を引いて、念写師のいる、念写室に向かった。
俺も、ファーンの事など気にならない程、舞い上がっているし、緊張している。こんな展開、素晴らしすぎる。
その後、2人並んで念写して貰う。
かなり緊張してしまった為、ちゃんと顔が作れていただろうかと心配していたが、出来上がった念写を見て安心する。引きつって無く、真面目な顔が出来ていた。
「カシムさん!ここにサインしてください!『トリリアへ』って書いてください!!」
ひえええええ!!サインだって?!そんなの無いよ!!
内心は動揺しまくりだったが、体は勝手に動いて、念写の余白に名前を書いて、リクエスト通りに『トリリアへ』と書く。
すると、トリリアさんは飛び上がって喜ぶ。
「やったーーーーー!!!すごく嬉しいです!!友達にも自慢しまくっちゃいます!!ありがとうございます!!」
そう言って俺の手を取り、ブンブン振る。
「冒険頑張ってください!応援しています!!!」
真面目そうなトリリアさんの変貌振りにも驚きつつ、ついニヤニヤしてしまう。
これは気分が良い。かなり良い。俺も貰ったツーショットの念写を見てニヤニヤしてしまう。
ああ。アールを待たせていた。
アールは俺とトリリアさんの様子を見ながら、受付のベンチに座って待っていた。
俺が戻るとにっこり笑う。
「兄様。良かったですね」
これがミルやアクシスだったら、フォローが大変だが、アールにはそんな必要が無さそうで助かる。
「待たせて悪かったな」
俺が言うと、アールは俺の手にある念写をジッと見つめる。
「大丈夫ですが・・・・・・その、兄様?私も兄様との念写が欲しいです」
アールが何かを欲しがるのは珍しい。考えてみれば、今まで仲間と念写を撮る事なんてしてこなかった。
良い機会だし、みんなでの念写も撮って貰おう。だが、今はアールが優先だな。
「じゃあ、町の念写館に行こう」
俺がそう言うと、アールは嬉しそうに頷く。
「はい!」
それから、俺とアールで念写館に行って、2人だけで念写を撮る。アールと俺とで、それをロケットにして貰った。
アールはとても大切そうに、ロケットを首に掛けて、何度も開いては念写を見て微笑んでいた。
俺もこれは嬉しいな。ロケットの反対側にはみんなで撮った念写を入れて貰おう。かなり小さくなるが、大切な宝物になりそうだ。
そして、2人で食事をしてから、遺跡に向かう事となった。
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