魔都ガイウス  邪眼の魔女 5

「じゃあ、代金だが、こいつの食費と、生活必需品の代金、3ヶ月分。あと、洋服代とお菓子代で、ざっと5000ペルナーだな」

 俺たちは驚く。

「ちょっと待ってくれ、マイネー。俺たち、こんなに作って貰ったんだぞ!」

 机の上に並べられている魔法道具を示して叫ぶ。

 5000ペルナーなんて安すぎる。アズマ通貨で50万エンだ。

「こいつの場合は、一瞬で作っちまうし、材料費はこっち持ちなんだ。仲間価格だし、十分だ」

 マイネーが笑う。

「ひえええ~~~」

 誰とも無く呟く。

「ところで、どんな物が出来たんだ?しっかり説明してやれ・・・・・・。っていっても、こいつ時々わかんない言葉使うからなぁ」



 さて、出来上がったアイテムについて説明して貰う事となった。

「まずはこれだ」

 パインさんは肩のアーマーを外して、ブローチを胸に付ける。

 何の変哲も無いブローチだが、次の瞬間、ブローチから布が飛び出して、フードの付いた紫色のマントとなる。

「オリハルコン同様、念じる事で飛び出す。色も形も変えられ、軽いまま堅くなる。矢も貫通しない。火にも強く、厚さ、寒さも調整できる。無論、雨も浸透しないし、湿気も籠もらない」

 すごい機能だ。だが、驚くのはこれからだった。

「このマントは分子の結合を変える事で、様々な性質を状況に合わせて変化させる事が出来る。また、分子の結合を解く事で、実体をぼやかす事が出来る」

 何を言っているのか分からないでいると、パインさんが俺にマントの端を差し出す。

「握って見ろ」

 言われるままに握ろうとするが、マントは俺の手からすり抜けてしまう。

「つまり、こういうことも出来る」

 そう言うと、どこから出したのか、パインさんがマントの下から短刀を振ると、短刀の切っ先はマントをすり抜けていき、マントには傷1つ付いていない。

「破れる事も、汚れる事も気にしなくて良い」

 分からないなりに、とんでもない事はわかる。

「また、マント、フードには、創世竜の領域と同様の状態を発生させる為、フードをしていれば、その中の空気の量分は、毒霧の中でも活動できるし、水中でも呼吸できる。展開する度に新鮮な空気が取り入れられる事になる。その機能のおかげで、寒さ、暑さも快適に過ごせるようになる訳だ」

 すげぇ!なんかよく分からないけど、とにかくすげぇ!

 俺たちが昨日考えた事全部入れて、更にもっとすごい物が出来上がったようだ。


「この下着も、同じ構造で出来ている。獣人の変身にも対応できる」

 そう言って、3枚の下着を指さす。

 そうなのだ。俺はエレナがお尻丸出しパンツをはいている事を気にして、何か良い物を魔法道具で作ってもらえないかと思っていたんだ。一瞬な。

「そう言う事だったんですか」

 リラさんが、ホッとした様子で俺を見る。

「あ、あの。これ、リラさんのアイディアって事にしてもらえませんか?」

 俺のアイディアと知ったら、何て言われるか恐ろしい。俺のメンタルは耐えられる自信が無い。

「せっかくのカシム君の好意なのですが・・・・・・。でも、そうですね」

 リラさんが了承してくれて、心底ホッとする。

「良いスケベだな。ヒヒヒ」

 ファーンが笑う。

「・・・・・・ねえ。じゃあ、あれって、快適パンツって事だよね。あれ欲しいな~~」

 ミルが言うと、女性陣が顔を見合わせる。

 ドラゴンドロップはまだ半分近く残っている。

「カ、カシム君は、後で出て行ってくださいね!!」

「おう。これは追加料金取らないでおくかな。何て言ってもリラさんのご所望だ!」

 マイネーが笑うが、俺は真っ赤になる。


「次はこれだ」

 パインさんはミルの物であろうクナイを持ち上げる。

「これは分子結合を解いて、投擲後にも粒子化して持ち主の元に返ってくる、つまりはなくならず、回収しなくても済む投擲武器だ」

「うわああ~~~~!!」

 しょっちゅう鍛冶屋でクナイを製作していたミルが、目を輝かせる。

「戻るのは、貴様のその袋の中に設定してある」

 ミルのウエストポーチを指さしてパインさんが言う。

「ありがとう!ありがとう!!」

 ミルが大喜びする。便利なクナイが5本ある。

「これは、付けていると、仲間以外には、顔が別人と認識されるイヤリングだ」

 これはアール用か。これさえ着けていれば、素顔でも「闇の蝙蝠」に正体を悟られずに済む。考えたな、アール。

「・・・・・・これはただの指輪だ」

「きゃあああああ~~~!!」

 リラさんが叫んで、指輪を取って隠す。

「え?何の能力も無いんですか?」

 俺はリラさんに尋ねる。

「よく分からんが、文字を入れた指輪が欲しかったらしい」

 パインさんが肩をすくめる。

「秘密です!これは精霊使いとしての道具ですから!!」

 リラさんが必死になって言う。


「これが、剣だ。あれこれ考えても仕方が無いと思っていたようだったので、今まで使っていた剣を直しておいた。ただし、今度の剣は絶対に壊れない」

 俺は剣を鞘から抜く。剣は刃まで赤い色になっている。細かくデザインが変わっていて、竜の様にも見える。

「特性は同じく、投擲したら返ってくる。使い勝手は同じはずだ。ただ、常に切れ味も貫通力も段違いだ。手入れをする必要が無い」

 そして、絶対に壊れない剣。

「銘は『竜牙剣りゅうがけん』だ」

 おお。名前もカッコいい!!完全に進化した感じだな!!

「以上だ」

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