魔都ガイウス  ランダの目的 2

 ファーンと2人で、アールたちが冒険者登録試験をしている間に、司書様に面会する。

 一応モンスターの出現率とかチェックしたかったのだが、ここの司書様は、すごく正統派の美女だったので、露出が少なく、残念なような、安心したような・・・・・・。

「はい。おっしゃる通り、モンスターの出現率は、ここ一年で、前年に比べて1・5倍になっています。ここ3ヶ月だけなら、2倍近くになっていて、今は冒険者様の活躍で抑えていますが、地方の村々では、警戒を強めています」

 司書様が心を痛めているようにうつむく。

 何とも可憐な司書様だ。

 露出が全てでは無いと思わざるを得ないな。

「国とかでは対応しているんですか?」

 俺は尋ねる。

「はい。各国共に、警戒を強化していますが、国によってはあまり重要視していないところもあります」

 だろうな・・・・・・。

「例えば、アインザークはモンスター対策に軍を地方まで派遣していますし、冒険者への支援も、特別に厚くしています。逆にその為、王城の守りが手薄になって、昨日の様な状況ではグラーダ軍の助けで事なきを得る形となりました」

 元々そういう背景があったのか。

「一方、隣国のドルトベイクや、西のトリスタン連邦なんかは、完全に冒険者ギルドに任せている状況です」

「ギルドの方で、今後の見通しとかありますか?」

 司書様が、やはり心を痛めた様子で、小さく首を振る。

「やはり出現頻度は上がると見ています。それに対して、今のところ対処療法的な対応しか出来ません」

「そうですよね・・・・・・」

 それしか言う言葉は無い。

「ただ、アカデミーが動いてくれているようです。リザリエ様なら、何か良い考えが見つかるかも知れません」

 おお!リザリエ様が!?

 これは少しは状況が好転するかも知れないな。


「海路についてですが、今はどんな状況ですか?」

 次にグレンネックに渡る船の海路について尋ねてみた。

「出来れば、グラーダの船でグラーダを経由する事をおすすめします。相変わらずアインザークとグレンネックの海賊を利用した海路妨害合戦が続いていますから」

 司書様が苦笑する。

 いい加減に海賊と手を組む事の無意味さを学習すれば良いのにと、誰もが思っているが、どちらか一方が手を引く事は出来ない泥沼状態になっている。

 グラーダを経由すると時間も金も倍かかる。それでも、商人たちはグラーダを行く安全性を取りたがるので、急ぎ以外は、グラーダ旗を掲げられるグラーダ商船を使いたがる。

 おかげでグラーダは儲かる。

「冒険者様が乗ると、商船の方も喜ばれますよ」

 まあ、確かにランダとリラさんがいれば、海賊は手を出すだけ無駄だと思う。しかも、リラさんなら、常に順風を吹かせる事とか出来るんじゃ無かろうか?

 勝手にそんな事を思ってしまう。




 そんな感じで話をしてから、ロビーに戻り、更に少し待っていると、俺が受付の男に呼び出される。

 何事だろうと、男の元に行くと、別室に通された。

「なあ、あんた。竜の団のカシムさんだよな・・・・・・」

 年配のベテランそうな男が難しい顔をしながら、声を潜める。

「はあ。そうですが・・・・・・」

 まさか、またランクアップとかされないよな・・・・・・。

「いや、あんたの連れの冒険者登録試験なんだが・・・・・・」

 いいっ?!ちょっと待てよ?!

「あ、あの・・・・・・。ダメでした?」

 男の様子に、俺は焦る。

「い、いや。まあ、大丈夫ではある。ただね。あのエレナって娘だが、あれは竜の団で平気かい?」

 アールの事じゃ無いのか。俺は安堵する。しかし、エレナか?

「どういうことですか?」

「いや、あれはちょっと面倒くさくないか?性格的にな・・・・・・。一応適性試験はクリアしたけど、竜の団となると、我々にとっての希望の星でもある。だからちょっと心配になってなぁ」

 男が額を抑える。きっと暴言を吐かれたに違いない。

「まあ、問題はあるようですが、ランネル・マイネーに託されたので・・・・・・」

 押しつけられた感もあるがな。

「あのランネル・マイネーにかい!?・・・・・・じゃあ、俺なんかが口出しする問題じゃ無いな」

 男が驚く。

「しかし、まあ、あんたも苦労しそうだな・・・・・・」

 それには俺も同意だ。頭が痛いやら、俺のメンタルが心配やらだ。

「それで、2人は?」

「まあ、一応合格だ。アールって娘も、ちょっと気になったが、一生懸命さは感じる。何とかしてやってくれ」

 さすがだな。アールから何かを感じたか。


 俺が戻ると、エレナとアールが、ファーンと座って待っていた。

 ついでにステイタス鑑定もして貰ったようだ。

 俺たちも、ここで数日過ごすのだから、またステイタス鑑定してもいいかな。

 他の冒険者は、すぐにステイタス鑑定したがるが、俺はそこまで積極的じゃないし、他のメンバーもそれほどステイタスに固執していないようだからな。後で相談してみるか。


 そんな事を考えている内に、冒険者証と、白ランクのプレートが支給される。


 

 宿に戻ると、アールはまた魔法使いの恰好に着替える。変装する必要があるから仕方が無い。

 そして、リラさんとミルも戻っていたので、揃って1階の食堂で夕食を食べる。



 その後、部屋に戻ってから、ランダが俺に言った。

「カシム。話があると言ったが、いいか?」

 おお。来たな。これは緊張する。

 俺が頷くと、更にランダが言う。

「そうだな。せっかくだから仲間たちにも聞いて貰おう」

「いいのか?」

 俺が尋ねると、ランダが頷く。

「じゃあ、みんな呼んでくるね」

 ミルがすぐに出て行く。


 俺はベッドに腰を下ろす。ランダは窓際に立つ。

 ミルがみんなを連れて、部屋に戻ってくると、すぐに俺の隣に座る。

 リラさんとファーンはイスに座り、エレナはアールとベッドに腰掛ける。やたらとアールにべったりくっついている。


「じゃあ、ランダ。話してくれ」

 みんなが揃ったので、俺がランダに話を促す。

 ランダは頷くと口を開いた。

「少し慣れないが、自分語りをさせて貰おう」

 そう断ってから、ランダが語り出した。

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