魔都ガイウス  魔都 3

 俺はとっさの思いつきをマイネーに話して聞かせた。

「むう。それは行けるかも・・・・・・。いや、それっきゃねぇな!さすがは大将だ!!」

 マイネーが喜色を浮かべて笑う。

「本当か?バカみたいな方法だと俺でも思うぞ」

 自分で言っておいて、そんな事が可能か、全く自信は無い。

「そんな事はねぇ!それなら、間に合いそうだ!!それで行く!!」

 すっかりスッキリした表情のマイネーに、俺は酒のおかわりを注いでやる。それも一気に飲み干す。面倒くさいから瓶ごとマイネーに渡す。

「それで、エレナの事だが、男性恐怖症らしいけど、あれは大丈夫なのか?」

 俺は尋ねる。あの後、俺はほとんどエレナと話していない。

「まあ、そうらしい。性格は難有りだが、腕は立つはずだ」

「どうせならレックの方が良いんだけどなぁ」

 俺が呟く。ウサギ獣人の魔導師にして戦士だ。

「それはオレ様も思うところだが、今ここにいねぇからな」

 なるほど。それは残念だ。

「今この場にいたら、あいつをお前に預けるのが一番だと思っているんだがな」

 マイネーが笑う。

「どうする?お前がエレッサに直接迎えに行くってんなら、レックに同行許可を与えるぞ?」

 俺は少し考える。それは魅力的だが、回り道が過ぎるな。

「とりあえず保留だ。西の創世竜が終わったら、一度グラーダに戻る事になる。その後でエレッサにも向かう予定だ」

 前にマイネーにも話した通りの予定である。

「じゃあ、その時にはエレナの代わりにレックを連れて行ってやってくれ。あいつにも旅を経験させてやりてぇ。もちろん、その前に、オレ様が国をまとめちまってたら、オレ様が行く」

 俺たちは笑い合う。

「今、エレッサは誰が治めてるんだ?」

 そう言えば聞いていなかった。

「どうやら、ジャニスが上手い事やってくれているようだ・・・・・・」

 確か回復魔法が得意な女の人だったな。

 長い黒髪に、いかにもな魔法使いの帽子とマントを身に着けていて、あまり獣人族っぽくなかった。

 眠そうな目で、片言で面倒くさそうに話す、多分25歳くらいのお姉さんだ。

 背は低かったな。

 あの人獣人だったんだ。

「あの人って、なに獣人だったっけ?」

 俺が尋ねると、マイネーはニヤリと笑って言う。

「ペンギンだ」

 ペンギン!?かなり希少種じゃないか。

 トリ獣人ってのは、確か種族的に魔法が使えないはずだ。飛ぶ能力にマナを使っているとか何とかで、魔力値に関係なく、魔法特性が無い。

 しかし、ペンギン獣人は飛べないよな・・・・・・。だから魔法が使えるのか?

 俺の思考を読んだようで、マイネーがまたしてもニヤリと笑う。

「水中戦を想定して作られた獣人らしい。空は飛べないし、陸上じゃ満足に動く事も出来ないから、人前じゃ獣化しないんだ。ただ、誰も見た事は無いが、ペンギン獣人は、家では獣化していると言われている。すっげぇ落ち着くんだってよ」

 何だよ、その豆知識・・・・・・。


「ああ。それから、エレナは冒険者じゃ無いから、冒険者登録、どっかでしてやってくれ」

 そうだな。アールにも登録させないといけないから、アインザークにいるうちに登録するか。

「ヘルネ市に行くだろ?オレ様も、会議を抜けてでもそっちに行くから、今度はヘルネ市で待っててくれ。魔具師を紹介する」

 マイネーが言う。

「いや。自分たちで行くから無理するなよ」

 当然世界会議を抜けさせるわけには行かないので、俺はそう断るが、マイネーは強固に首を振る。

「いや。あいつの扱いは難しいからな。ちょっと面倒な奴なんだ。俺が行かないと、多分話にならないだろう」

 なんだそりゃ。店やってるんだろ?それで大丈夫なのか?不安になってきたぞ・・・・・・。

「トリどもに運んで貰うから、ヘルネまでなら1時間も掛からない。大丈夫だろう」

 なるほど。それなら、休憩時間とか、会議をやらない日とかでも来れるよな。

「ヘルネの『足の豆亭』に宿を求めてくれ。そうすりゃ、店まですぐ近くだ」

「了解した。じゃあ、明日にでもヘルネに向かうよ。俺もここでの予定外の公務にうんざりしているんだ」

 そう答えると、マイネーが豪快に笑う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る