魔都ガイウス  蠢動 5

 そして、ここにも蠢動する者たちがいた。


「おい!ごそごそするんじゃねぇ!」

「いや・・・・・・。でもまずいだろ」

「ああん?!川だぞ?水浴びだぞ?これで覗かなきゃ、却って失礼にあたるってもんだ!」

「お前、女を尊敬する立場じゃ無かったか?」

「尊敬しているからこそ、崇高な物を拝みてぇんだ!!」

「バレたらどうするんだよ?!」

「バレたらバレたで好都合だ!危険を冒してまでも、あんたの裸が見たかったんだって言えば、逆に感心して惚れてもらえる!!」

「そ、そんな方程式・・・・・・あるのか?」

「ある!」

「す、すげぇぜ、マイネーの兄貴!!」

「・・・・・・いや。無いだろう」

「何だと、ランダ!じゃあ、何でてめぇは付いて来てんだよ?!」

「結果が分かっているからに決まっている」

「結果だと?!失敗するってんなら、お前も同罪になるんだからな?!」

「問題ない」

「なんだかんだ言っても、お前もスケベなだけじゃねーのか?」

「お前たちは、もう少し女たちの言葉に耳を傾けてろ」


「あ~!やっぱりお兄ちゃんたちだ!!」

 男たちの頭上からミルの声がする。

「ハイエルフがいる時点で、のぞきなんて成功するはず無かろう・・・・・・」

 ランダが肩をすくめてため息をつく。

「ミ、ミル?!これは・・・・・・違うんだ!!」

「え~違くなんかないよ!!一緒に水浴びしようよ~!」

 木から飛び降りてきたミルは、紺色の精装衣シユー・クミーズのみを身につけている。

「みんなも水着着て楽しんでるよ!!」

 ミルは嬉しそうにカシムの手を引く。

「み、水着?」

「うん!グラーダに行った時に買ったんだよ!!」

 ミルの言葉に、ランダが小声で呟く。

「さっきも、『水着で遊ぼう』って話し合ってたぞ」

 それ、早く言ってくれよな・・・・・・。


 ミルに手を引かれて川に行くと、綺麗な澄んだ川辺で、女性陣が水着で遊んでいた。

「お!カシム!!ホレホレ!水着姿だぜ!!」

 一番需要の無いヤツが、真っ先に水着アピールしてくる。

「・・・・・・カ、カシム君。その、最近流行の水着をグラーダで買ったんです。獣人国の繊維で作られた物ですが、いかがですか?」

 おお!リラさんが恥ずかしそうに見せてくれる。

 良いのか?ほとんど下着姿と変わらないのに、水着と言うだけで、平気で見せてくれるだなんて。

「兄様!」

 アールも一緒だ。

「アールにはミルの水着を貸しています」

 なるほど、ファーンのだとブカブカだから、ミルのを貸しているのか。獣人国の特産の繊維は速乾性と柔軟性、伸縮性に富んでいる。だから、小さい物でも着れるわけだ。

 だけど、さすがに小さすぎるので、かなり危険な領域まで食い込んでいる。

 ミルが選んだだけあって、ピンクに白の水玉のビキニタイプ。アールの雰囲気には似合っていないが、布面積が小さいので・・・・・・エロい。

 

 一応ファーンは、黄色のワンピースに短パン付きの物なので、ちっともエロさを感じない。お前は落第だ。


 そして、リラさん。やっぱり白ですか!眩しいです!ワンピース型ながら、おなかと背中が大きく開いています。リラさんらしく、長いスカート付きの水着だが、素晴らしい事に、普段以上にお足が見えています。体のラインがばっちり見えて、もう俺はどうしたら良いのか!!


「素晴らしい水着です!とってもお似合いですよ、リラさん!!」

 マイネーが興奮して叫ぶ。

「あら、ありがとう」

 マイネーに答えるリラさんの声が冷たい。

「で、カシム君はどうなの?」

 くっ!先に言われた上に、それでリラさんが不機嫌になってしまったじゃないか!

「は、はい。すごく、素敵です」

「オレは?オレは?」

 ファーンが嬉しそうに水をバシャバシャ跳ね上げながらやってくる。だから、お前は落第だっての。

「ミルは?ミルも素敵でしょ?」

 お前はいつものだろ?しかもそれ水着じゃ無くて、下着だったはずだぞ!

「あ~素敵だ。可愛いよ」

 おざなりの返事をしてやった。

「あ、あの。兄様。私は?」

 意外にも、アールもこういう事を気にするのか。

「あ、ああ。うん。可愛いよ」

 あと、エロい。

 背は小さいが、胸はファーンよりもある。ミルの水着だと、かなりはみ出してしまっている訳で、努力しても目がそっちに行ってしまう。


「ねえ!」

 ミルが俺の首に飛び乗ってくる。

「お兄ちゃん!約束!!」

「や、約束?」

「ミルに泳ぎ教えてくれるって言ったよね?」

 ああ。そういや、エレッサ防衛戦の時に確かに約束したな。

「教えて、教えて!!」

 ミルがせがむので、俺は笑う。

「ああ。分かった、分かった」

 俺は水着は持っていないので、装備を外して、上着を脱いだら、ミルと一緒に川に入る。

「結構冷たいな」

 今日は暖かいが、水は冷たい。

 流れは緩やかだが、深いところもある。そこまで行って、ミルの手を取る。

「よし。ミル。遊ぼう!」

「うん!」


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