届かぬ願い  聖竜 1

 結論から言うと、俺が行けた遺跡は、巨人が作ったとされる、巨石群遺跡だけだった。

 何がいけなかったのか、さっぱり分からないが、その巨石群も1日行けただけで、後は無理矢理出発させられたので、ちっとも満足出来ていない。

 にもかかわらず、その後の道程で近くにあるのに、遺跡に行く事をみんなから反対された。

 俺は確か、竜の団のリーダーだったよな?

 なのに、みんなが俺の決定に反対した訳だ・・・・・・。

 リラさんだけは少し申し訳なさそうにしていたから、まあ良いか。竜騎士探索行が終わったら、世界中の遺跡を探検しまくるぞ!



 そして、いよいよ、聖竜の領域に突入する事となった。

 聖竜の領域は、カント国、レダ国、ドルトベイク国の3国にまたがって広がっている。その領域の中には、いくつかの村があり、聖竜の加護を受け、豊かな大地の恵みを享受している。

 村はそれぞれの国に税は支払うが、減税されているそうだ。

 自然と、村に住む人たちは聖竜を崇拝し、信仰している。

 聖竜は、白竜よりも地上人を大切にしているそうで、度々村に姿を現すそうだ。

 ただし、冒険者等のよそ者には冷淡で、やはり遭遇すれば命は無いものと思わなければならない。

 

 聖竜が棲んでいるのは、ニザン山で、切り立った岩山が無数に生える危険地帯で、ここには村人は決して近寄らない。

 野獣、魔獣も多いが、何より竜種が多いのだ。

 だから、冒険者も竜殺しが目的じゃ無い限り、近付かないようにしているそうだ。

 ニザン山は、一際大きく、円柱形をした、天辺が真っ平らな岩山で、頂上付近は村からでもよく見える。

 まるで柱を切ったように平らである。


 出現する竜種には、コッツヴィネ山で、リラさんたちが戦ったアルゲイスや、俺が白竜山で戦ったトレボルドラゴンなどもいるそうだ。


 こうした情報は、当然、ギルドの司書様に教えて貰った。

 だが、期待外れも良い所だった。

 俺たちが行った時、ギルドには1人しか司書様がいなかった。その司書様は、シルバーブロンドの爺さんだった。

 かなり体格も良く、顔も整って、髭も綺麗に整えられた老紳士だったので、ファーンは喜んでいたが、少なくとも俺には需要が無かった。

 ここには更に、熟女司書様、ロリッ子司書様、ショタッ子司書様がいたが・・・・・・。極端すぎるだろうがっっ!!

 ちょうど良いのを何で用意していないんだよっっ!!

 まあ、おかげで俺も冷静に情報を頭に入れる事が出来たんだけどな・・・・・・。



「まだブツブツ言ってるのかよ?!」

 馬を並べているファーンが呆れた様子で俺を見る。

「お兄ちゃん、機嫌悪いよね~?」

 ミルの純粋な心配顔が胸に刺さる。

「ミルが慰めてあげるよ~!」

 俺の前に乗るミルが体をひねって俺に頬ずりする。が、胸当てに当たり、ゴツ、ガン、と痛そうな音がする。

「痛くないのか?」

「痛いよ~」

 そう言いながらも、ミルは嬉しそうだ。何か前にもこんな事があったような気がする。

「ミル。カシム君に迷惑掛けちゃダメよ」

 リラさんが、優しい声で窘めるので、俺は笑顔でリラさんに言う。

「いや、大丈夫ですよ。ミルもありがとうな」

「でへへ~~」

 

 そんなやり取りをしていると、行く手に少し大きな柵に囲われた小屋が見えた。

「あったぞ」

 マイネーが言う。

 村人によれば、この小屋が最後のセーフポイントで、馬を繋いだり、休んだり出来る冒険者の拠点となっているとの事だ。

 前日の内に、この拠点を使うと告げたから、小遣い稼ぎをしたい村人が、受け入れの準備と、利用期間の馬の世話をしてくれる事になっている。

 支払いは利用料と、世話係にチップだ。

 リラさんも、辺境での支払いに関してはケチらない。


 小屋には3人の若者がいた。馬を守りつつ、野獣からこのセーフポイントを守る為だ。

 柵の内側には、柵が破損した時の補修用木材もある。

 小屋自体はちょっとした宿ぐらいの大きさがあり、複数の冒険者パーティーも利用出来そうだ。

 回収した素材を運ぶ為の荷車も複数置かれていた。


「竜殺しに挑む冒険者様も、よく利用してまして」

 若者が笑顔で言う。

「皆さんも竜殺しですか?」

 若者の目は、マイネーとランダ、そして、リラさんに向く。

 マイネーとランダは、いかにも強そうだからだろう。

 竜を素材として持ち帰れば、村も潤うから歓迎されるわけだ。

「いや~。竜は殺し飽きた。オレ様たちは、まあ、物見遊山だ」

 マイネーが適当な事を言う。

「そうなんですか。それはちょっと残念です」

 若者はそう言うが、村自体はかなり豊かなので、そうした臨時収入が無くても困らないのだろう。

「それじゃあ、馬を頼む。10日で戻らなければ、村に帰って貰って構わない。その場合でも、馬は1ヶ月は預かっていて欲しい」

 1人につき銀貨10枚渡す。施設の使用料が10日で銀貨5枚なので、この若者たちは、かなりの儲けになる。

「お任せ下さい!馬たちは大切にお世話します!それと、どうかご無事のご帰還を!」

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