届かぬ願い  記事 5

「では、この竜の団の実力は本物なのか?

 これについては確たる事が言えない。何故なら、彼らは、ダンジョンの戦いでは、とにかくよく逃げていたし、たいした事が無い敵に対しても、悠長な戦い方をしていて、側で見ていて、身の危険を感じたほどだ。

 決して強いとは思えなかった。

 ただ、その後の魔物や魔王との連戦では、確かに存在感を表してきた。

 白金ランクのアカツキや、黒猫、そして、今回大活躍したアルフレアと言った、錚々そうそうたるメンバーをまとめて、見事に指揮を取って戦う姿が見られた。皆、何故か自然とカシムがレイドリーダーを取ることを良しとして受け入れており、それぞれが実力を発揮出来ていたように思える。

 この辺りが、竜の団の、カシム・ペンダートンという冒険者の謎で有り、魅力なのかも知れない」


「微妙だね~」

「微妙だな・・・・・・」

「妥当じゃね?」

「そうかもしれませんね」



「(中略)

 最後に魔王の止めを刺したのは、一体何者か?!

 ギルドは、これまでの蓄積ダメージでアカツキや黒猫のザン、歌う旅団の攻撃が有効だったと判断しているようだが、私を含めて、当事者たちは皆、それには納得していない。

 皆、自分たちの与えたダメージは表面的でしか無く、決定打には欠けると考えている。これは、後のインタビューで、皆が口を揃えて証言している。


 皆が言うには、魔王討伐の真の功労者こそが、竜の団であり、その団長カシム・ペンダートンだと言う事だ。

 彼が、自らを光の矢と化して、危険を顧みず、魔王の体内に突入し、魔王の核とも言うべき物を破壊したのだ。

 私もそれを間近で見ている。

 正に英雄と言うべき姿であった。


 ここにそれを目の当たりにした冒険者の証言を載せよう。


 『ボクは横から見ていたよ。彼が光を放ちながら、魔王の恐ろしい口の中に、突入し・・・・・・魔王の、尻から飛び出すところを。その際に、魔王の核を破壊したのだろう。彼が・・・・・・尻から飛び出したとたん。魔王は長い便秘が治ったかのように力が抜けて倒れ、動かなくなった。

 そう。カシムこそ、魔王のため込んでいた便に他ならない。故に、ボクは彼を・・・・・・ウ、ウンコの英雄と讃えよう』


 確かに、良い感じで魔王のおしりから飛び出したカシムに、私も『きたねぇな』とは思ったが、彼の成した事は、魔王殺しであり、決して「ウンコの英雄」では無く、真なる英雄、またはその片鱗が見られる雄姿であった事を、ここに添えて、記事を終わる」



「うがああああああっっ!!!あのクソペちゃパイ猫娘がぁぁぁ!!!」

 俺はまたしても立ち上がり、雑誌を引き裂く。

 ミルがまたしてもテーブルに顔からつっこむ。

「落ち着け、落ち着けカシム!!」

 ファーンがなだめる。

「これが落ち着いていられるか!?しっかり『ウンコの英雄』って書いてるじゃねーか!!あとこのインタビュー受けた奴、アイツに間違いないじゃねーか!!アルフレアのリーダー、リード!!」

「ふふ~ん。お兄ちゃん、それ破っても、また買ってくるから良いんだよ~」

 鼻をさすりながら、ミルが笑う。

 この子は、結構な目に遭わされたのに、俺に文句を言わない。しかし、感心してばかりはいられない。

「こんな物買ってはいけません!!」

「ええ?」

「ええ?」

 ミルだけじゃなく、リラさんまで衝撃を受ける。

「リラさん・・・・・・買うつもりだったの?」

「だって。せっかくですから・・・・・・」

 まあ、リラさんは、自分を賞賛する記事があったんだから買いたいよな~。

 俺はため息を付いて、力なく椅子に腰を降ろす。

「いいじゃねぇか。これだけ大きく取り扱われているんだから、悪い事じゃねぇーだろ?」

 マイネーは愉快そうに笑う。

「それにカシム、言ってたじゃん。誰にどう思われようが、どう書かれようが気にしないって」

 ファーンが「ヒヒヒ」と笑う。

 ああ。もうどうでも良いさ。俺は力なく手をヒラヒラ振る。

「あたしは、何があってもお兄ちゃんの味方だからね~!」

 そう言って、ミルとリラさんが、嬉しそうに購買部に走って行った。

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